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11/23/00:33  Love at first sight 4

まさかのまさか、12月になってしまいました(大汗)。
更新、遅くてすみません!
そして長くなってしまったので、一旦途中で切りました。
次で最後になります。
では、興味のある方は↓へどうぞ!

  



苛立ちが滲み出ているような、机に肩肘をついた状態で、彼は低く誰にとも無く口走る。
「もう直ぐ入社してから9年目!今後はより多くの部下を率い、一層のキャリアアップを目指すべき、そんな奴がだ・・・!?」
それは会社内では見た事の無い姿だった。
沈着冷静な人の、驚くべき一面。

そして荒々しく吐息をつくと、彼はチラリと此方に目を向ける。
だが呆然となっている私に気付くと、一旦冷静さを取り戻すかのように軽く視線を逸らせた。
けれどまだその顔つきは穏やかとは言い難く、眉根が寄ったままだ。
「アスハも!」
「え?」
「いや問題の大元はアイツにあるんだろうが、こんな状態での業務に、どうして耐えていられるんだか!?」
本当にどういう事なのだろう、苛立ちは此方にまで飛び火してきた。
「いや、あの・・・?」
小首を傾げた自分の手前、彼はしばし沈黙した後、今度は一つ深く息をついた。
そして再びゆっくりと向いた碧色の瞳。
「そもそも、どう思っているんだ?」
「へ?」
そして唐突に投げかけられた言葉に、私は目を瞬いた。
どうって、何の事をだろうか!?
訳が分からず問い返そうとしたものの、一瞬早く彼の声が耳に届く。
「ユウナの事、だぞ?」
「はあ・・・。」
「このままだと色々と遣り辛いだろう?大体、ふられた腹いせに仕事でネチネチと突かれていては・・・。」
「ふられた腹いせ!?」
此処で私の思考は急停止する!
すると彼もまた動きを留め、不可解そうに首を捻った。

そして確かめるかの如く、ゆっくりとした口調で話しだす。
「いや、アスハはユウナからの申し出を断ったんだろう?」
「それは、はい。」
「ということはだ。」
話しかけたところで沈黙が落ち、私はキョトンとしつつ彼を見つめ返した。
どうやら自分の反応の悪さが原因らしい。
とはいえ、確かにユウナ・ロマの誘い・・・夏の遊びは断ったけれども、だからといってあれが・・・まさか?
「え?でもアレは、別にそんなんじゃ無かったと思うんですが。」
ポツリと口にした言葉に、目の前で部長は完全に静止する。
そしてあの碧色の瞳がスッと細まっていった。
「いや、だって、私は単純に遊びに誘われただけで。」
「あのな。男が女性独りきりを誘っている場合、これ即ち特別な感情有りと取って然るべきだろう?」
「それは・・・でも、あのユウナさんが?」
ちょっとナルシスト気味で、寧ろ女らしく可愛い人を好みそうな気がするのに・・・まさか!?
どうにも納得できない。
とはいえ、あの誘いを断った直後ぐらいから、ユウナ・ロマの態度は硬化していったのだが。
「でも特に、付き合いたいとか、そいういう言葉を言われたわけじゃないですし。」
ふられたという表現は可笑しいのではないだろうか?
私はそう思い口にした、途端に目の前の彼は呆れたような眼差しを自分へと向けてきた。
「こういう事を俺が口にするのはどうかとも思うが、アスハ、お前・・・結構疎いな。」
「なっ、何でですか!?」
「アイツがいつもどんな目でお前を見ているか、気付いてないのか?」
思わぬ言葉の連続に、私の頭は素早い対応が出来なくなっていた。
そもそも、ユウナ・ロマが私に特別な感情を抱いていた(いる?)という事すら呑み込めないでいるし、その人からの視線なんてこれっぽっちも感じた事がないのだ!
しかも目の前、それも男性から、(恐らく恋愛に)疎いだなどと言われてもだ!
「そ、そんなの、全然知りませんし!」
悔しさ混じりで早口にそう言うと、私はお冷をグイと喉に流し込んだ。
彼から指摘されたことに内心で動揺、妙な焦りとプライドが迫り出し自分の心を覆っていく。
「ハッキリ言っておきますが、私は部長の言うような事を一切感じた覚えがありません!彼とは単なる先輩後輩の中ですし、仕事は仕事、プライベートはプライベートです!」
まぁ、実際には連日、ユウナ・ロマからの嫌味に胸を痛めてはいるのだけれども。
しかし社会人としては雛っ子だろうが、たかが恋愛事(?)で上司に泣きつこうだなんて、そんな柔な人間にはなりたく無い!
生来の意地っ張りで、意を決して真っ直ぐに彼へと向き直れば、何故か其処には何処か優しい眼差しを讃えた人が居た。
本当に、何なんだろう?
「あの、もしかしてからかってます?」
心の底から呻くように述べた私の前で、部長はその整った顔をフッと崩し笑った。
そして『いや』と直ぐに否定、それからスッと自分を真っ直ぐに見つめてきた。
その何処か意味有り気な眼差しに、絡め取られる意識!
「変わっていないな。」
そう言った部長に、私は混乱しつつも平静さを保った。
この人はかなりの曲者だ。
初めて出会った時もそうだったが、間近でその瞳に見つめられると息をするのも忘れそうになる。
「何がですか!?」
「ん?いや、覚えていないか?」
その懐かしむような口調に、頭の中でクエスチョンマークだけが増えていく。
全てが彼のペースに嵌ったまま、抗えない私。
「忘れもしない、2年前の入社式直後の事だ。歩いていた自分へと、金髪の女子社員が激突してきたんだが。」
何処か楽しげにそんな事を話しだした彼。
「あの時の女子社員と、今のアスハと、全く変わらない目をしているなと思って。」
 覚えてくれていたんだという驚きはあれど、やはり羞恥に頬がカァと熱くなる。
これは自分を見つめ放さない碧色の瞳の所為もあるのだろうか?
 「あの、念の為に聞いておきますが・・・それは一体どんな目です?」
 「キラキラとしていて、何処までも真っ直ぐな目だよ。」
答えた彼に、私は溜まらず頬に手を当てた。
頭はショート状態。
いや、面と向かってあの時の失態を話されているという事もだし、キラキラとか、そういう表現を使われた事とかもだ!
恥ずかしさやら何やらで反論する言葉すら出てこない私の手前、彼はコホンと咳払いをした。
 「あれから、もう2年か。」
そして顔を逸らして呟いた
自分で言っておきながら、彼もまた気恥ずかしくなったらしい。
ようやく自分から逸れていった視線に
ホウと息をつきつつ、私はソッと両目を閉じ、何とか平静を取り戻そうとする。
店の壁に取り付けてある時計は、もう間もなく9時半を指そうとしていた。


中華料理屋からの帰途は、地下鉄の駅まで互いに並び歩いた。
先程までの妙な会話もあってだろうか、部長はただただ無口。
ちらりと見やったその顔つきは固く、まるで何かを考えているかのようだった。
「部長はヴェサリウス線でしたっけ?」
何気に話題を振り、私は無言のこの場に一石を投じる。
そして此方を向いた碧色の瞳を、真っ直ぐに見上げた。
「あぁ。アスハはヘリオポリス線だったな。」
すると意外にも、私の使う地下鉄線を知ってみえたらしい。
多分、その優秀な記憶力故であろう。
「最近、ヴェサリウス線って色々あって遅滞する事多かったですし、大変でしたね。」
最近あった地下鉄での諸事・・・停電やら車との接触事故のニュースを基に話せば、彼は鈍く頷いた。
そして『実はな』と話し出す。
「ここ最近は実家から通っていたから、災難に遭わずに済んだんだ。」
「へえ、御実家から?」
「うん。アスハと同じヘリオポリス線でな。」
「え!?」
知らなかった事実に驚きつつ、何となく動揺するこの胸。
どうやらご実家がヘリオポリス線のガイア駅付近にあるらしい。
そしてガイア駅と言えば、自分の乗り降りする駅の一個次である。
つまり同じ電車に乗っていた事があったかもしれないという事で・・・。
「なんか、びっくりです。」
『知りませんでした』と素直に口にすれば、彼は苦笑した。
当然、通勤時は膨大な人が利用しているし、私自身、朝は大体が惰性で動いている。
同じ時刻、同じ車両に乗り込むとかでない限り気付かないだろう。
いや、そうと知っていれば、ホームの中を隈なく探したりもしたのだろうけれど。
独りそんな風に思いながらふと顔を向ければ、彼の瞳と目がかち合った。
これに思わず目を見開いた私の手前、ゆっくりと逸らされた視線と、途切れた会話。
私は胸に手を当て、目を瞬く。
果たして今の眼差しは何だったのか?
五月蝿い鼓動が耳を覆う。
そしてそのまま、しばし互いに沈黙。
間もなく駅の入り口が見え出す辺りになるまで、カツコツという靴音だけがこの場を覆っていた。
だが丁度駅前の信号が赤になり、共に歩みを止めた直後の事。
「今日も実家の方に帰るつもりで居るんだが。」
周りは金曜日の夜という事もあってか、かなり多くの人が行き交っている。
既に呑んできたのであろう、陽気に騒いでいる一団が遠目に居たりもして、夜だというのに雑音が凄い。
「どうせなんだ、もう一軒、何処かで呑んでから帰らないか?」
上手く聞き取れず、私は『え?』となり顔を傾けた。

すると何とも形容し難い顔つきで、彼は此方を見やる。
「ザラ部長?」
「この直ぐ傍に、良い店があるんだ。アスハもどうだ?」
自分を真っ直ぐに見つめた碧色の瞳。

その目にドクンと心臓が跳ねた。
誘われている!?
そう分かったのと同時に、波打つ意識。

今晩は空いているんだろう?

一応確認の如く尋ねてきた彼に、私の意識は更に上擦った。
「そ、そりゃ空いてますけれど。」
「うん。なら、どうだ?」
逸れる事無く自分を見つめるその瞳が、まるで魔法をかけているようだった。
いや、これは私の中に潜んでいる願望なのか!?
だって二人きりでお酒を呑むという事は、もしかしたらもしかして!?と、自分の中で酷く特別な想像を描き立てる!
思わず目を白黒させた自分の手前、彼は小首を傾げた。
「アスハ?」
これにハッとなり、私は赤面しつつ胸の内の疾しい妄想を振り払った。
無い無い無い!
彼みたいな人が私にそんな事を望むだなんて、有り得ないだろう!?
そうじゃない、単に彼は私を労ってくれようとしているんだ!
そうじゃなければ、他にどんな理由があるというのか!
「まあ、少しぐらいなら。」
そして光栄にも誘われたという気持ちを胸に、私は彼へと返事をした。
するとやや妙な間の後、フッと華やいだ彼の顔!
「じゃあ、行こう。」
踵を返し、少し前に通り過ぎた脇道へと向かいだす彼。
私は跳ねる鼓動を耳に、後に続いた。

 

拍手[25回]

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11/13/00:33  エリジウム

アスランの誕生日から、早2週間が経とうとしていますね。
もう本当に、時が経つのが早い!
お祝い用のSSですが、最終話、近い内にUPしますので!
ごめん、俺は馬鹿だから・・・(アスラン口調で)。
いやいや、本当に遅くなってしまってすみません!
続きを、どうかお楽しみに~♪

さて、今日は久々に洋画DVDを観ました。
『ELYSIUM(エリジウム)』
主演 マッド・デイモン
他  ジョディー・フォスター
未来の汚染された地球と、宇宙に造られた理想郷スペースコロニー。
裕福層と貧困層とに区分けされ、抗う事の出来ない理不尽かつ不平等な生活を強いられた、荒廃した地球に住む独りの男。
彼に生じた不運、そして生きる為に選んだ未来、そして迎える結末。

幼い頃に親を無くしたらしい彼は、育った孤児院にて出会った女の子と共に大きくなり、そして子供ながらに将来の事を語り合う。
『いつか俺が(エリジウムに)連れて行くよ。』
彼は理想郷への憧れを胸に、他愛ない誓いを彼女へと口にした。
そして数十年後、二人は再び出会い、そして互いの不運を機にエリジウムへと足を踏み入れる!

元々、宇宙ものの映画は大好きなんですが、この映画を見て、久々にSEED DESTINY以後のお話を書きたい気持ちに強くさせられました。
幼い頃に約束した二人→大人になった今、それぞれの事情で苦しんでいる、そんなところもSEEDにちょっと似ている気がして、最後の最後、クライマックスには涙×3!!!
涙腺緩みまくりでした^^
結構、戦闘シーンとかは過激で、特に未来の武器を使用しているので、ちょっとグロかったりしたのが難でしたが、その辺が大丈夫という方にはお勧めいたします。
そしてエリジウムというスペースコロニーが、形こそ違え、脳内でプラントに見えて仕方が無かった私。
色々な点で心持っていかれる映画でした!

拍手[3回]

11/05/11:46  Love at first sight 3

こんにちは。
続きの更新、遅くなりまして申し訳ないです!
11月に入り、寒さがどんどんと深まってきていますね。
朝夕がしんどくなってきたこの頃。
みなさまも風邪にはご注意を!!






壁に取り付けてある時計を見れば、午後8時を指そうとしていた。

手にした品を運びつつ横切ったフロアー内、普段ならば誰かが残業していても可笑しくないこの場に、今日は人っ子一人見当たらない。
月末の金曜日という事もあってだろう、自分の課もそうだが、皆纏まって呑みに出かけたのかもしれない。
静まり返った辺りに靴音を響かせながら、私は会議室へと戻っていく。
「持ってきました。これは何処に置けば良いですか?」
ザラ部長、そう声に出して発したのは初めてだった。
いや、仕事中に何気なく口にした事はあったものの、こうして面と向かって発した事は皆無である。
彼は『ん?』という感じで顔を上げると、スッと此方を向いた。
そして自分の持っている段ボール箱に目をやりつつ、『とりあえず右端の壁際に置いてくれ』と述べた。
「少しややこしいとは思うが、その箱の中に入っている3色のファイルだけを取り出して、右端の机から赤、黄、青色の順に並べて置いて欲しい。」
「はい。赤、黄、青の順にですね。」
テキパキと身を動かせつつ、私は言われた通りに机の上にファイルを並べていった。

もしもこれがユウナ・ロマと準備をしていたら、曖昧な指示の上に、『もっと上手くセッティングしろよ』などとねちっこく言われていたに違いない。
そんな事を思い苦笑した。
幾分か気分が上昇してきているようだ。
「ファイル、全部配置終えました。」
「ありがとう。」
やがて終了した事を告げれば、会議室の正面脇に置かれたミニデスクの上で会議用の資料内容を確認していた部長は、フッと顔を上げた。
そうして彼はコの字型に配置された長机の上へとスッと目を走らせ、満足そうに頷く。
「うん、OKだな。」
その言葉にホッとして、私は大きく吐息をついた。
通常業務後の事だけに、思考回路がかなり漫然となり始めている。
「助かったよ。おけげで月曜の準備は万端だ。」
「いえ、これぐらいの事ならば。」
お役に立てたなら幸いですと言い、微笑んだ。
正直、あのまま飲み会に行かなくても良くなった事に安堵しているこの胸。
そう、此処で部長と二人きり、ひっそりとした作業をしていた方が何倍も気が晴れるというものだ!
「もう少し時間がかかるかと思っていたんだが。」
予想以上に早く終わったなと、そんな事を呟きつつ、此方へと歩み寄ってきた彼。
そして面前までやってきたその人に、私はやや息を呑んだ。
今頃になって思うが、辺りに誰も居ない部屋の中、彼と二人きりである。
「こうして直に仕事ぶりを観察してみれば、アスハは動きが機敏だし、作業効率が良いな。」
「え?あ、はい!」
「取引先との遣り取りも迅速だし、相手とのコミュニケーション能力も非常に高い。」
よもやなお褒めの言葉に、胸が熱くなる。
いつかこうして、この人に頼られ仕事がしたいと思っていた事もあってだろう、自分の能力を褒められて嬉しさが込み上げた!
「ありがとうございます!」
私は満面の笑みを浮かべ部長を見やった。
これに彼の碧色の瞳も一瞬柔らかくなり、場が和む。
「でも、それなのにだ?」
しかし眼前、柔和なその顔が突然引き締められ、私は『え?』とたじろいだ。
纏うその空気さえも固くなり、普段見かける仕事モードな表情に一変する。
「昼間、ユウナとの遣り取りを耳にしていたんだが、大分大袈裟に叱られていたな。」
「えっ・・・あ、はい。」
「あれは、一体どうしたんだ?」
此処でいきなり『昼間の件』について触れてきた彼に、急転直下、この胸はギュウと引き締められていった。
息がしにくい。
一日の疲労感がどっとこの身に押し寄せてくるよう。
「ユウナから受けた報告によれば、君の些細なミスが原因との事らしいが。」
やはり自分だけを引き留めたのにはそれなりの訳があったのだ。
そんな風に思い、私は俯きグッと掌を握り締めた。
元々事業部のエリートであり、部長という役職にある彼にとって、やはり昼間の件は放っておけない事柄だったのだろう。
少し褒められたぐらいで浮かれた自分が情けない!
私という人間は、何処まで単純なんだか!?
そう、今日は朝から実に多忙で、それというのも大きな契約が2件重なった上に、多くの商品の発送やら転送、更に諸々の手続きやらでフロアー内は殺伐としていたのだ。
そんな中、私と新人であるシン・アスカは、先輩達の指示を仰ぎつつ、何とか任された仕事をこなしていた。
そして3階に持って行って欲しいという品を手に、私が移動しようと思っていた、その時!
『あのさ、そのついでにこれと同じパッケージの物を、3階の倉庫から持ってきてよ!』
此処で指示を出してきたのが、ユウナ・ロマだった。
了解です。数は幾つですか?
私の問いかけに『30』と投げやりに答えた彼の声を頭に、フロアーから素早く移動していったのだが・・・。
 
「私・・・。」
仕事は遣り甲斐があって楽しい、けれどどうしてこうも上手くいかないのだろう!?
そもそも指導役のユウナにあそこまで言われた事もそうだが、今となっては事前に注意を払えなかった事に、遣り切れなさと不甲斐なさとを覚えて止まず。
悔しい!
だが今になって部長にその事を問われ、いつもに増して疲れている所為だろうか?

返す言葉無く、私はその場で項垂れた。
あの時、30個という数を聞いて、正直自分だけで持って来れるのだろうか?という疑問が浮かびもしたのだ。
だが殺伐とした辺りの空気と、苛立っているようなユウナ・ロマの姿がその質問を許さず、私は心配気なシンの眼差しを受けつつも身を動かしてしまったから・・・!
「しかし・・・俺が思うにはだ。実際、ユウナが言う程の事では無かったんじゃないか?」
「え・・・?」
「先程のアスハの動きを見ていてもそうだが、的確な指示さえ与えられていれば、今日の事は事前に防げていたのでは?」
上役であるアイツも、幾分か平静さを欠いていたのだろう。
 力なく俯いていた私は、彼の言葉を耳にゆっくりと顔を上げた!
「勿論、指示されたからといって、単純にそれに従うばかりでは能が無い。アスハも最初の段階で指示を確認して、あんな多数の壊れ易い商品を独りで運ぶ事に異議を強く唱えるべきだった。」
「っ・・・はい。」
「とはいえ、やたらとプライドの高いアイツへと異を唱えるのは、なかなか難しい事かもしれないがな。」
まるで諭すかのようなその声音を耳に、私は部長を見つめ立ち尽くす。
自分を擁護してくれたわけではない、でもこの人はちゃんと自分の動きも把握してくれていたのだ!
途端に瞼の奥がジワリと熱くなり、慌てて両目を瞑った。

潤みゆく瞳から滴が零れ出そうになり、気持ちが焦る。
今日一日の出来事が一気に脳裏を過ぎり、そしてふにゃりと張り詰めていた胸が緩んでいく。
「いや、アスハ・・・?」

そんな私を前に、部長もややうろたえたようだった。
でもしばらくの後、不意にポンポンと頭部に感じられた大きくて温かな感触!
「大丈夫だ。お前の頑張りは俺がちゃんと見て居る。だから、落ち着け。」
「っ・・・はい。」
「それに、そんな顔をされると、俺がどうしていいか分からなくなくなるだろう?」
そう言って、本当に至近距離、腰を折り目と目を合わせてきた彼に、込み上げてきていた涙もシュンッと一気に引いて行った!
有り得ないぐらい間近に映った、綺麗で透き通った碧色の瞳に鼓動も止まる!
「ッ・・・あ、あの!?」
「とりあえず腹が減った事だし、一緒に飯でも食べに行くとするか。」
「え!?」
「ほら、もう8時半近い。人間腹が空きすぎると、情緒不安定になるからな。」
彼は尚も2~3回ポンポンと私の頭部を叩くと、軽やかに背を向けて会議室の前方へと向かって行った。
いきなりに次ぐいきなりな展開に、もはや私の感情は付いて行かず。
飯って、二人きりでか?
「アスハ?突っ立っていないで資料室の施錠をしておいてくれよ。」
そんな自分へと向かい、確認している資料から目を上げる事無く指示をしてきた彼。
私はこれにハッとなり、『はい』とやや上擦ったような声を上げると身を動かした。
 耳にしたその言葉に、胸の中、妙なざわめきを覚えつつ・・・。

 


やがて私と彼は、会社から程好く離れた場所にある一軒の小奇麗な中華料理屋へと到着した。
此処は密かに部長が気に入っている店らしく、皆が向かっていった飲み屋『AA』とは逆方向、同じ会社の人とも出くわす事が無いだろう、大通りから少し奥まった場所にあった。
『何が食べたい?』という彼からの問いに、ラーメンが良いと口にした結果だ。
「アスハのお気に召す味だと良いんだが。」
そんな事を口にする彼と共に、店内の一角へと腰を下ろす。
すると奥から出てきた店員が、素早くオーダーを取りに来た。

『仕事後に引き留めて手伝わせてしまった訳だし、お礼がてらに飯ぐらい奢らせてくれ。』
当初、そう言ってくれた彼に、私は遠慮の言葉を口にした。
幾らお礼とはいえ、二人きりで食事というのは、今日の私には色々と宜しくない!
第一、飲み会の方はどうなっているのか!?
気になり、その事を問い質せばだった。
『大丈夫だ。あちらの方はサイにもう任せてある。』
残っていた仕事があったから、会社内に居た君の手を借りて処理するとな。
勿論、かかった飲食代は部長持ちで良いとも告げたらしい。
パチパチと目を瞬きながらも、私は彼の言った言葉を何とか理解する。
つまり既に私と部長とは、飲み会に参加しなくてもOKという事なのだ、と。
『あの、でも・・・!』
正直行きたく無いわけじゃなかった。
ザラ部長に誘われたという事に嬉しさはあれど、やはり戸惑いと動揺が胸を強く襲っていたのだ。
何せ先程の妙な発言もあって、今は心が誤解してしまいそうだった!
上司と部下という概念を越えて、独りよがりな想いに走ってしまいそうで!
「アスハは何にする?」
尋ねられハッと顔を上げれば、先程もこの目にしていた碧色の瞳が直ぐ其処にある。

『この後に何か予定でもあるのか?』
その問いかけと共にこの瞳に見つめられれば、反論する余地など無かった自分。
結局『分かりました』と素直に首を縦に振り此処へとやってきたのだが・・・。
メニュを選びつつ、私は上着の胸元をキュッと手で引き合わせた。
向かい合わせで座っている今、意識が妙に落ちつかない。
「じゃあ、私は塩ラーメンで。」
とりあえずこの店お奨めらしい塩ラーメンを頼んだ。
やってきたラーメンには、こんもりとした刻みネギと大きなチャーシューが3枚。
「この店はスープが旨いんだ!」
食べる前にそう言った彼へと頷き、とりあえずスープを飲んでみた。
成る程!あっさりとしているのに、酷があって思わずホウとなる味だった。
最初の遠慮も何処へやら、私はラーメンを素早く口にしていく。

今日は朝からバタバタで、しかも昼間にはあの嫌な一件もあったりで精根尽きていたのだ。
彼の前という事もあって微妙な心持だったが、空腹の前にそんな事は意味を成さない!

 ありがたい事に、彼も相当にお腹が減っていたのだろう、しばし麺を啜る音だけがこの場に続いた。

やがて丼の3分の1程を食べた辺りでだった。
ようやく私達は会話をしだす。
最初は仕事関係の事から、次第に日常的な事柄について。

「アスハは休みの日とか、普段は何をして過ごしてるんだ?」
幾分かお腹が満たされた所為だろうか。
この店にやってきた時よりも気持ちは落ち着きを見せていた。
「 別に、普通に過ごしていますよ。時々買い物に行ったり。」
「そうか。」
「部長こそ、どうされてるんです?」
尋ねられたついでとばかりに、私も彼のプライベートを軽く探ってみた。
するとどうやら、彼は電子工学に興味があり、其方方面の工作に勤しんだりしているらしい。
最近はペットロボなる物を作っているとか。
色香漂うイケメンで年上で上司だけれど、何処か少年みたいな所が残っているようだった。
職場とはまた違う、何処か揚々とした彼の姿に私は思わず微笑む。
だって時間さえあれば製作に勤しんでいるとか、まるでかぶと虫取りに夢中な男の子みたいだと思えたから。

「でも、デートとかは?部長、あんまり趣味ばかりに勤しんでると、彼女に怒られたりしませんか?」
此処で私は、謎の部分の多い彼へと思い切って踏み込んだ質問をしてみた。
すると予想外にあっさりと『居ないよ』という答えが返って来た!
「え!?居ないんですか!?」
「あぁ。」
「何で!?」
思わず素の突っ込みを入れてしまったが、彼は少し目を見開いただけ、笑みを浮かべつつ此方をジッと見つめてきた。
「居ないと可笑しいか?」
「え?あ、いえ。でも、ザラ部長ならば選り取り見取りじゃないかな~と。」
これに肩を竦め、彼は『そんなわけは無いよ』と言った。
「単に仕事が忙しいからかな。」
「あぁ、成る程。」
そして私は胸に手を当てた。
早い鼓動を刻むその場所に、目を瞑り考える。
確かに部長職は大変だろうし、今は仕事が充実していると見える。
だからだ。
そして再びチャーシューを口に含んだところでだった。
「そういうアスハはどうなんだ?」
よもやな質問返しに、私は顔を顰めていた。
相手に聞いておきながらも、出来れば聞かれたくない事柄だったからだ。
私は素早く程好い大きさで肉を引きちぎり、咀嚼した。
そして脇にあったお冷でスッキリさせた後に口を開く。
「部長に同じくですよ。」
「という事は・・・?」
「以前同じ様な事をユウナさんにも聞かれましたけれど・・・社会人になってからは居ません。」
何を言わせるのだかと捻くれた気持ちを胸に、答えを返した。
まあ残念ながら、社会人になってからは出会いも全く無く、仕事オンリーな生活を送っている。
『それが何か?』と問い返してやろうとした私は、だが何故か顔を顰め、此方を強く見つめてきた彼に意を呑まれる。
「ユウナが?」
「え?あ、はい。」
「それは、いつ頃?」
何でそんな事を?とは思いつつも、私は彼の問いかけに素直に答えた。
そう、あれは確か6月の頭頃、まだ昼食を一緒に食べたりもしていた、そんな中で唐突に聞かれたのだと。
「彼氏は居るのかって、いきなり聞かれて、居ないって答えたんですけれど。」
「うん。」
「そしたらいきなり、もう直ぐ夏だし、海とかには行かないのか?って聞かれて。」
マリンスポーツは好きですけれど、社会人になってからは行ってませんと答えれば、『ならどうせだし、良ければ僕の家族と一緒に行かないか?』と強く誘われたのだ。
「どうやら彼の御実家がかなりの資産家みたいで、毎年夏は南国のオーブ諸島までクルーザーに乗って遊びに行くとかなんとか。」
まだ夏の予定を何にも立てていないのだったら、是非においでよ!と。
朗らかな顔つきでそう誘ってくれた、あの時の事を振り返り口にしていく。
「でも余りに突然のお誘いだったし、それに正直、旅行にまわせる資金も余り無かったので。」
「だから、断った?」
「はい。」
部長の言葉に頷き、私はラーメンの鉢へと目を落とした。
あの時、ユウナ・ロマは『お金は全部こっちが持つよ!』とまで言ってくれたのだが、そこまでされる理由が見つからず、私は丁寧にお断りしたのだ。
でも今思えば、あの時を境にユウナ・ロマの態度は硬化していった気がする。
やはり自分の断り方が不味かったのだろうか?
ユウナ・ロマの気に障るような事を、何か言ってしまったのかもしれない。
そんな風に今更ながらに過去をふり返っていればだった。
「アイツめ・・・!」
何故か低い声でそう問う声が聞こえ、私は驚き顔を上げた。
すると彼の瞳、その中に赤黒い物が見えた気がして!
私はそんな部長の様子を唖然として見つめる。
どういうことだろう!?
目の前の彼の様子が解せなかった。
 

拍手[12回]

10/30/10:35  おめでとう!!

まずは昨日、アスラン誕生日当日に何も出来ずに終わってしまった事をお詫びいたします!
バタバタしていたら、結局UP出来ずに終わってしまったという。
本当にごめんなさい。
お祝い兼ねてのSSは、今晩、日付変わる事にでも更新いたしますので!
残りは2話となります。

さてさて。
脳内では、オーブのアスハ城内にて、アスランとカガリの二人がひっそりとお酒飲みつつ、彼のお誕生日を祝っている姿を妄想中。
アスラン、お誕生日おめでとう!
ありがとう、カガリ。
そしてギュッと抱きしめあい、見つめあい、るんるるるるん~。
 
ということで、夜をお楽しみに~☆

拍手[8回]

10/28/01:56  Love at first sight 2

振り返った私の方を、ジッと見つめる碧色の瞳。
何でも見透かされそうなその目に、気持ちがやや慌てた。
驚きを顔にしつつも、
ちょっとだけ潤んでいた両目を隠しながら、私は『はい』と冷静に声を発した。
「どうかしたのか?」
「え?」
「目が・・・ほんのり赤いような?」
指摘された事柄に、焦りつつも頭を振る。
『いえ、これは単なるドライアイです』と誤魔化した。
部長との距離は約3メートル、大丈夫だ!と胸を宥めながら。
しかしまあ、奢ってやると言っていた肝心な部長が、未だこんな場所に居ようとは!?
「部長こそ、どうされたんですか?」
早く店に行かないと、皆が待っていますよ?
そう口にすれば、その人は『あぁ』と言って言葉を濁した。
そしてそのまま、妙に沈黙。
「あ、あの・・・?」
この可笑しな沈黙に私は思わず小首を傾げ、驚きに停滞していた思考回路を復活させた。
こうして二人きりとなった今、わざわざこの御方が声をかけてきた、その理由は・・・!?
「え、ええと、その、昼間は・・・ご迷惑をおかけして、本当、申し訳なかったです。」
結果、思い当たったのはあの事柄だけだった。
悔しいけれど、此処は一つ謝罪を述べるべきなのだろうと、私は腹を括り頭を下げる。
これに妙なモヤが胸の中に生じた。
でも実際にどうしようもないミスに嵌ったのは、自分自身の不甲斐なさ故なのだから・・・!
「只でさえ忙しい時に、本当に・・・すみませんでした。」
キュウと唇を噛み締め、私は俯く。
会社というのは時に教唆な場所で、自分は悪くないと幾ら訴えたところで、時と場合によって、それは単なる自己防衛としてしか捉えられないのだ。
一瞬だけ我慢をすれば、全てが上手く行く事だってある。
そう、これはあのユウナ・ロマが自分の指導役となったその時から、身に甚く凍みていた。
今だけ、この瞬間だけ取り成せば良いのだと!
でも、だけれど!
 『ったく。確認作業すらも取れないのかい、君は?』
頭の中で割り切ろうとしても、どうしても納得出来ない事はある。

昼間に言われた言葉をふと思い出せば、この胸はズンとした重みを伴い青く痺れていった。
2年目だっていうのに、呆れて物も言えないよ!
まるで仕事の出来ない馬鹿な奴とでも言わんばかりの口調と、あの時の嫌な感覚が胸に沸き起こってきて、鼻の奥がツンとなった。
何よりも、もしかしたら、彼も、アスラン部長も、自分の事をそんな風に見ているのかもしれない!?
『どうして君はそんなヘマをやらかしたのか?』と、彼にそう尋ねられたりしたら!?
考えた途端、心の奥底から青味が胸を満たし、私はギュッと両目を瞑った。
この人にそんな風に思われたく無い!
けれど実際にどう考えたって、今日のは私の失態としてしか捉えられない!
ならばそう、もうさっさと謝ってしまおう!
その方が良い!

そう、初めてこの人から言葉をかけてもらえたというのに、それがこんな日で、しかも叱責を受ける為だなんて!
本当に最悪。
帰りたい、今直ぐに!
とっとと謝って、この場から去りたい!
そう思いつつ、半ば投げやりな気持ちで俯いていればだった。
「いやアスハ、落ち着け?」
「・・・。」
「俺は別に、そういう事を聞こうと思ったわけじゃない。」
ゆっくりと顔を上げていった先、困惑顔の部長が自分をジッと見つめて居た。
その表情は私を責めているような所もなく、寧ろ何処か不思議な視線だった。
「そうじゃなく、単にその・・・今、手が空いてないだろうか?」
え?と瞠目しつつ、私は彼を見つめ返した。
途端にあの目が意識を絡め取り、自分は呆然となる。
そして戸惑いつつ『はい?』と首を傾げたのだ。

 

 

学生時代から猪突猛進。
スポーツや身体を動かす事が大好きで、スタミナは充分にあるのだけれど、ほんの少しばかり慎重さが足りない。
そんな思い切ったら吉日的な人間の私は、適当に伸ばしていた髪をバッサリとカット、ベリーショートにして入社式へと挑んだ。
勿論、これはやる気を顕した行為であり、自分的には快活で仕事もし易いと、上々な気分で居たのだが?
どうやら快活さが全面に出すぎたらしい。
ホールでの入社式終了後、あろう事か本社屋、社員その他多くの人々が行き来をする通路にて、緊張の緩みからか、私はバッタリとある人と正面衝突をやらかしてしまったのだ!
『す、すみませんッ!』
痛みと恥ずかしさに混乱しつつも、自分は大きく頭を下げ謝りの言葉を口にした。
目にした靴先とスーツの足元から、相手が男性であるという事は直ぐに分かった。
 『そ、その!慣れない場所で、つい!』
そして以後気をつけます!と言葉を繋げつつ、ゆっくりと顔を上げた。
其処で目にしたのは、何ていうのか、そう、本当に惹き込まれる様な碧色の眼で!
これに思わずボウッとなり、私はその場で固まっていた。
だが洗練された格好をしたその人は、自分をジッと見つめた後に不思議そうに首を傾げたのだ。
そして聞こえた一言。
『えっと・・・君はその・・・女子新入社員?』
まじまじと自分を見つめながらそう言ったその人の声には、明らかな戸惑いが含まれていた。
私は愕然となりつつ、そんな彼を見つめ返して・・・。
それが私と彼・・・アスラン部長との出会いの時。
数奇な遭遇から1年後、私は何と彼の下で働く事になったのだが。
あの時の屈辱が今もこの胸には残っており、部長と近場で接する度に記憶が脳裏を過ぎる。
本当に、自分は入社式早々に何をやっているんだか?
しかも『女子新入社員?』とわざわざ訊ねられてだ!
とはいえ、部長の方はそんな事はすっかり忘れているようではあるが・・・。

小さく吐息をつきながら、部長の指示通りに会議室のテーブルセッティングをしていく。
自分という人間ははどうしてこうなんだろうと、軽い嫌悪感で胸の中がモヤモヤとなりつつだ。
『手が空いているか?』と聞いてきたその人は、どうやら月曜日の朝に行われる会議の準備をうっかり忘れていただけの事だったらしい。
珍しい事もあるもので、あの有能な部長が、業務中の多忙さに思い出せずにいたようだ。
「アスハが居てくれて良かった!」
真面目な顔でそんな事を言われれば、何故か身体も軽くなるよう。
私は部長の存在を背後に、テーブルの上に人数分だけ資料と配布物をセッティングしていった。

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