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10/28/01:56  Love at first sight 2

振り返った私の方を、ジッと見つめる碧色の瞳。
何でも見透かされそうなその目に、気持ちがやや慌てた。
驚きを顔にしつつも、
ちょっとだけ潤んでいた両目を隠しながら、私は『はい』と冷静に声を発した。
「どうかしたのか?」
「え?」
「目が・・・ほんのり赤いような?」
指摘された事柄に、焦りつつも頭を振る。
『いえ、これは単なるドライアイです』と誤魔化した。
部長との距離は約3メートル、大丈夫だ!と胸を宥めながら。
しかしまあ、奢ってやると言っていた肝心な部長が、未だこんな場所に居ようとは!?
「部長こそ、どうされたんですか?」
早く店に行かないと、皆が待っていますよ?
そう口にすれば、その人は『あぁ』と言って言葉を濁した。
そしてそのまま、妙に沈黙。
「あ、あの・・・?」
この可笑しな沈黙に私は思わず小首を傾げ、驚きに停滞していた思考回路を復活させた。
こうして二人きりとなった今、わざわざこの御方が声をかけてきた、その理由は・・・!?
「え、ええと、その、昼間は・・・ご迷惑をおかけして、本当、申し訳なかったです。」
結果、思い当たったのはあの事柄だけだった。
悔しいけれど、此処は一つ謝罪を述べるべきなのだろうと、私は腹を括り頭を下げる。
これに妙なモヤが胸の中に生じた。
でも実際にどうしようもないミスに嵌ったのは、自分自身の不甲斐なさ故なのだから・・・!
「只でさえ忙しい時に、本当に・・・すみませんでした。」
キュウと唇を噛み締め、私は俯く。
会社というのは時に教唆な場所で、自分は悪くないと幾ら訴えたところで、時と場合によって、それは単なる自己防衛としてしか捉えられないのだ。
一瞬だけ我慢をすれば、全てが上手く行く事だってある。
そう、これはあのユウナ・ロマが自分の指導役となったその時から、身に甚く凍みていた。
今だけ、この瞬間だけ取り成せば良いのだと!
でも、だけれど!
 『ったく。確認作業すらも取れないのかい、君は?』
頭の中で割り切ろうとしても、どうしても納得出来ない事はある。

昼間に言われた言葉をふと思い出せば、この胸はズンとした重みを伴い青く痺れていった。
2年目だっていうのに、呆れて物も言えないよ!
まるで仕事の出来ない馬鹿な奴とでも言わんばかりの口調と、あの時の嫌な感覚が胸に沸き起こってきて、鼻の奥がツンとなった。
何よりも、もしかしたら、彼も、アスラン部長も、自分の事をそんな風に見ているのかもしれない!?
『どうして君はそんなヘマをやらかしたのか?』と、彼にそう尋ねられたりしたら!?
考えた途端、心の奥底から青味が胸を満たし、私はギュッと両目を瞑った。
この人にそんな風に思われたく無い!
けれど実際にどう考えたって、今日のは私の失態としてしか捉えられない!
ならばそう、もうさっさと謝ってしまおう!
その方が良い!

そう、初めてこの人から言葉をかけてもらえたというのに、それがこんな日で、しかも叱責を受ける為だなんて!
本当に最悪。
帰りたい、今直ぐに!
とっとと謝って、この場から去りたい!
そう思いつつ、半ば投げやりな気持ちで俯いていればだった。
「いやアスハ、落ち着け?」
「・・・。」
「俺は別に、そういう事を聞こうと思ったわけじゃない。」
ゆっくりと顔を上げていった先、困惑顔の部長が自分をジッと見つめて居た。
その表情は私を責めているような所もなく、寧ろ何処か不思議な視線だった。
「そうじゃなく、単にその・・・今、手が空いてないだろうか?」
え?と瞠目しつつ、私は彼を見つめ返した。
途端にあの目が意識を絡め取り、自分は呆然となる。
そして戸惑いつつ『はい?』と首を傾げたのだ。

 

 

学生時代から猪突猛進。
スポーツや身体を動かす事が大好きで、スタミナは充分にあるのだけれど、ほんの少しばかり慎重さが足りない。
そんな思い切ったら吉日的な人間の私は、適当に伸ばしていた髪をバッサリとカット、ベリーショートにして入社式へと挑んだ。
勿論、これはやる気を顕した行為であり、自分的には快活で仕事もし易いと、上々な気分で居たのだが?
どうやら快活さが全面に出すぎたらしい。
ホールでの入社式終了後、あろう事か本社屋、社員その他多くの人々が行き来をする通路にて、緊張の緩みからか、私はバッタリとある人と正面衝突をやらかしてしまったのだ!
『す、すみませんッ!』
痛みと恥ずかしさに混乱しつつも、自分は大きく頭を下げ謝りの言葉を口にした。
目にした靴先とスーツの足元から、相手が男性であるという事は直ぐに分かった。
 『そ、その!慣れない場所で、つい!』
そして以後気をつけます!と言葉を繋げつつ、ゆっくりと顔を上げた。
其処で目にしたのは、何ていうのか、そう、本当に惹き込まれる様な碧色の眼で!
これに思わずボウッとなり、私はその場で固まっていた。
だが洗練された格好をしたその人は、自分をジッと見つめた後に不思議そうに首を傾げたのだ。
そして聞こえた一言。
『えっと・・・君はその・・・女子新入社員?』
まじまじと自分を見つめながらそう言ったその人の声には、明らかな戸惑いが含まれていた。
私は愕然となりつつ、そんな彼を見つめ返して・・・。
それが私と彼・・・アスラン部長との出会いの時。
数奇な遭遇から1年後、私は何と彼の下で働く事になったのだが。
あの時の屈辱が今もこの胸には残っており、部長と近場で接する度に記憶が脳裏を過ぎる。
本当に、自分は入社式早々に何をやっているんだか?
しかも『女子新入社員?』とわざわざ訊ねられてだ!
とはいえ、部長の方はそんな事はすっかり忘れているようではあるが・・・。

小さく吐息をつきながら、部長の指示通りに会議室のテーブルセッティングをしていく。
自分という人間ははどうしてこうなんだろうと、軽い嫌悪感で胸の中がモヤモヤとなりつつだ。
『手が空いているか?』と聞いてきたその人は、どうやら月曜日の朝に行われる会議の準備をうっかり忘れていただけの事だったらしい。
珍しい事もあるもので、あの有能な部長が、業務中の多忙さに思い出せずにいたようだ。
「アスハが居てくれて良かった!」
真面目な顔でそんな事を言われれば、何故か身体も軽くなるよう。
私は部長の存在を背後に、テーブルの上に人数分だけ資料と配布物をセッティングしていった。

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