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11/23/00:33  Love at first sight 4

まさかのまさか、12月になってしまいました(大汗)。
更新、遅くてすみません!
そして長くなってしまったので、一旦途中で切りました。
次で最後になります。
では、興味のある方は↓へどうぞ!

  



苛立ちが滲み出ているような、机に肩肘をついた状態で、彼は低く誰にとも無く口走る。
「もう直ぐ入社してから9年目!今後はより多くの部下を率い、一層のキャリアアップを目指すべき、そんな奴がだ・・・!?」
それは会社内では見た事の無い姿だった。
沈着冷静な人の、驚くべき一面。

そして荒々しく吐息をつくと、彼はチラリと此方に目を向ける。
だが呆然となっている私に気付くと、一旦冷静さを取り戻すかのように軽く視線を逸らせた。
けれどまだその顔つきは穏やかとは言い難く、眉根が寄ったままだ。
「アスハも!」
「え?」
「いや問題の大元はアイツにあるんだろうが、こんな状態での業務に、どうして耐えていられるんだか!?」
本当にどういう事なのだろう、苛立ちは此方にまで飛び火してきた。
「いや、あの・・・?」
小首を傾げた自分の手前、彼はしばし沈黙した後、今度は一つ深く息をついた。
そして再びゆっくりと向いた碧色の瞳。
「そもそも、どう思っているんだ?」
「へ?」
そして唐突に投げかけられた言葉に、私は目を瞬いた。
どうって、何の事をだろうか!?
訳が分からず問い返そうとしたものの、一瞬早く彼の声が耳に届く。
「ユウナの事、だぞ?」
「はあ・・・。」
「このままだと色々と遣り辛いだろう?大体、ふられた腹いせに仕事でネチネチと突かれていては・・・。」
「ふられた腹いせ!?」
此処で私の思考は急停止する!
すると彼もまた動きを留め、不可解そうに首を捻った。

そして確かめるかの如く、ゆっくりとした口調で話しだす。
「いや、アスハはユウナからの申し出を断ったんだろう?」
「それは、はい。」
「ということはだ。」
話しかけたところで沈黙が落ち、私はキョトンとしつつ彼を見つめ返した。
どうやら自分の反応の悪さが原因らしい。
とはいえ、確かにユウナ・ロマの誘い・・・夏の遊びは断ったけれども、だからといってあれが・・・まさか?
「え?でもアレは、別にそんなんじゃ無かったと思うんですが。」
ポツリと口にした言葉に、目の前で部長は完全に静止する。
そしてあの碧色の瞳がスッと細まっていった。
「いや、だって、私は単純に遊びに誘われただけで。」
「あのな。男が女性独りきりを誘っている場合、これ即ち特別な感情有りと取って然るべきだろう?」
「それは・・・でも、あのユウナさんが?」
ちょっとナルシスト気味で、寧ろ女らしく可愛い人を好みそうな気がするのに・・・まさか!?
どうにも納得できない。
とはいえ、あの誘いを断った直後ぐらいから、ユウナ・ロマの態度は硬化していったのだが。
「でも特に、付き合いたいとか、そいういう言葉を言われたわけじゃないですし。」
ふられたという表現は可笑しいのではないだろうか?
私はそう思い口にした、途端に目の前の彼は呆れたような眼差しを自分へと向けてきた。
「こういう事を俺が口にするのはどうかとも思うが、アスハ、お前・・・結構疎いな。」
「なっ、何でですか!?」
「アイツがいつもどんな目でお前を見ているか、気付いてないのか?」
思わぬ言葉の連続に、私の頭は素早い対応が出来なくなっていた。
そもそも、ユウナ・ロマが私に特別な感情を抱いていた(いる?)という事すら呑み込めないでいるし、その人からの視線なんてこれっぽっちも感じた事がないのだ!
しかも目の前、それも男性から、(恐らく恋愛に)疎いだなどと言われてもだ!
「そ、そんなの、全然知りませんし!」
悔しさ混じりで早口にそう言うと、私はお冷をグイと喉に流し込んだ。
彼から指摘されたことに内心で動揺、妙な焦りとプライドが迫り出し自分の心を覆っていく。
「ハッキリ言っておきますが、私は部長の言うような事を一切感じた覚えがありません!彼とは単なる先輩後輩の中ですし、仕事は仕事、プライベートはプライベートです!」
まぁ、実際には連日、ユウナ・ロマからの嫌味に胸を痛めてはいるのだけれども。
しかし社会人としては雛っ子だろうが、たかが恋愛事(?)で上司に泣きつこうだなんて、そんな柔な人間にはなりたく無い!
生来の意地っ張りで、意を決して真っ直ぐに彼へと向き直れば、何故か其処には何処か優しい眼差しを讃えた人が居た。
本当に、何なんだろう?
「あの、もしかしてからかってます?」
心の底から呻くように述べた私の前で、部長はその整った顔をフッと崩し笑った。
そして『いや』と直ぐに否定、それからスッと自分を真っ直ぐに見つめてきた。
その何処か意味有り気な眼差しに、絡め取られる意識!
「変わっていないな。」
そう言った部長に、私は混乱しつつも平静さを保った。
この人はかなりの曲者だ。
初めて出会った時もそうだったが、間近でその瞳に見つめられると息をするのも忘れそうになる。
「何がですか!?」
「ん?いや、覚えていないか?」
その懐かしむような口調に、頭の中でクエスチョンマークだけが増えていく。
全てが彼のペースに嵌ったまま、抗えない私。
「忘れもしない、2年前の入社式直後の事だ。歩いていた自分へと、金髪の女子社員が激突してきたんだが。」
何処か楽しげにそんな事を話しだした彼。
「あの時の女子社員と、今のアスハと、全く変わらない目をしているなと思って。」
 覚えてくれていたんだという驚きはあれど、やはり羞恥に頬がカァと熱くなる。
これは自分を見つめ放さない碧色の瞳の所為もあるのだろうか?
 「あの、念の為に聞いておきますが・・・それは一体どんな目です?」
 「キラキラとしていて、何処までも真っ直ぐな目だよ。」
答えた彼に、私は溜まらず頬に手を当てた。
頭はショート状態。
いや、面と向かってあの時の失態を話されているという事もだし、キラキラとか、そういう表現を使われた事とかもだ!
恥ずかしさやら何やらで反論する言葉すら出てこない私の手前、彼はコホンと咳払いをした。
 「あれから、もう2年か。」
そして顔を逸らして呟いた
自分で言っておきながら、彼もまた気恥ずかしくなったらしい。
ようやく自分から逸れていった視線に
ホウと息をつきつつ、私はソッと両目を閉じ、何とか平静を取り戻そうとする。
店の壁に取り付けてある時計は、もう間もなく9時半を指そうとしていた。


中華料理屋からの帰途は、地下鉄の駅まで互いに並び歩いた。
先程までの妙な会話もあってだろうか、部長はただただ無口。
ちらりと見やったその顔つきは固く、まるで何かを考えているかのようだった。
「部長はヴェサリウス線でしたっけ?」
何気に話題を振り、私は無言のこの場に一石を投じる。
そして此方を向いた碧色の瞳を、真っ直ぐに見上げた。
「あぁ。アスハはヘリオポリス線だったな。」
すると意外にも、私の使う地下鉄線を知ってみえたらしい。
多分、その優秀な記憶力故であろう。
「最近、ヴェサリウス線って色々あって遅滞する事多かったですし、大変でしたね。」
最近あった地下鉄での諸事・・・停電やら車との接触事故のニュースを基に話せば、彼は鈍く頷いた。
そして『実はな』と話し出す。
「ここ最近は実家から通っていたから、災難に遭わずに済んだんだ。」
「へえ、御実家から?」
「うん。アスハと同じヘリオポリス線でな。」
「え!?」
知らなかった事実に驚きつつ、何となく動揺するこの胸。
どうやらご実家がヘリオポリス線のガイア駅付近にあるらしい。
そしてガイア駅と言えば、自分の乗り降りする駅の一個次である。
つまり同じ電車に乗っていた事があったかもしれないという事で・・・。
「なんか、びっくりです。」
『知りませんでした』と素直に口にすれば、彼は苦笑した。
当然、通勤時は膨大な人が利用しているし、私自身、朝は大体が惰性で動いている。
同じ時刻、同じ車両に乗り込むとかでない限り気付かないだろう。
いや、そうと知っていれば、ホームの中を隈なく探したりもしたのだろうけれど。
独りそんな風に思いながらふと顔を向ければ、彼の瞳と目がかち合った。
これに思わず目を見開いた私の手前、ゆっくりと逸らされた視線と、途切れた会話。
私は胸に手を当て、目を瞬く。
果たして今の眼差しは何だったのか?
五月蝿い鼓動が耳を覆う。
そしてそのまま、しばし互いに沈黙。
間もなく駅の入り口が見え出す辺りになるまで、カツコツという靴音だけがこの場を覆っていた。
だが丁度駅前の信号が赤になり、共に歩みを止めた直後の事。
「今日も実家の方に帰るつもりで居るんだが。」
周りは金曜日の夜という事もあってか、かなり多くの人が行き交っている。
既に呑んできたのであろう、陽気に騒いでいる一団が遠目に居たりもして、夜だというのに雑音が凄い。
「どうせなんだ、もう一軒、何処かで呑んでから帰らないか?」
上手く聞き取れず、私は『え?』となり顔を傾けた。

すると何とも形容し難い顔つきで、彼は此方を見やる。
「ザラ部長?」
「この直ぐ傍に、良い店があるんだ。アスハもどうだ?」
自分を真っ直ぐに見つめた碧色の瞳。

その目にドクンと心臓が跳ねた。
誘われている!?
そう分かったのと同時に、波打つ意識。

今晩は空いているんだろう?

一応確認の如く尋ねてきた彼に、私の意識は更に上擦った。
「そ、そりゃ空いてますけれど。」
「うん。なら、どうだ?」
逸れる事無く自分を見つめるその瞳が、まるで魔法をかけているようだった。
いや、これは私の中に潜んでいる願望なのか!?
だって二人きりでお酒を呑むという事は、もしかしたらもしかして!?と、自分の中で酷く特別な想像を描き立てる!
思わず目を白黒させた自分の手前、彼は小首を傾げた。
「アスハ?」
これにハッとなり、私は赤面しつつ胸の内の疾しい妄想を振り払った。
無い無い無い!
彼みたいな人が私にそんな事を望むだなんて、有り得ないだろう!?
そうじゃない、単に彼は私を労ってくれようとしているんだ!
そうじゃなければ、他にどんな理由があるというのか!
「まあ、少しぐらいなら。」
そして光栄にも誘われたという気持ちを胸に、私は彼へと返事をした。
するとやや妙な間の後、フッと華やいだ彼の顔!
「じゃあ、行こう。」
踵を返し、少し前に通り過ぎた脇道へと向かいだす彼。
私は跳ねる鼓動を耳に、後に続いた。

 

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