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11/05/11:46  Love at first sight 3

こんにちは。
続きの更新、遅くなりまして申し訳ないです!
11月に入り、寒さがどんどんと深まってきていますね。
朝夕がしんどくなってきたこの頃。
みなさまも風邪にはご注意を!!






壁に取り付けてある時計を見れば、午後8時を指そうとしていた。

手にした品を運びつつ横切ったフロアー内、普段ならば誰かが残業していても可笑しくないこの場に、今日は人っ子一人見当たらない。
月末の金曜日という事もあってだろう、自分の課もそうだが、皆纏まって呑みに出かけたのかもしれない。
静まり返った辺りに靴音を響かせながら、私は会議室へと戻っていく。
「持ってきました。これは何処に置けば良いですか?」
ザラ部長、そう声に出して発したのは初めてだった。
いや、仕事中に何気なく口にした事はあったものの、こうして面と向かって発した事は皆無である。
彼は『ん?』という感じで顔を上げると、スッと此方を向いた。
そして自分の持っている段ボール箱に目をやりつつ、『とりあえず右端の壁際に置いてくれ』と述べた。
「少しややこしいとは思うが、その箱の中に入っている3色のファイルだけを取り出して、右端の机から赤、黄、青色の順に並べて置いて欲しい。」
「はい。赤、黄、青の順にですね。」
テキパキと身を動かせつつ、私は言われた通りに机の上にファイルを並べていった。

もしもこれがユウナ・ロマと準備をしていたら、曖昧な指示の上に、『もっと上手くセッティングしろよ』などとねちっこく言われていたに違いない。
そんな事を思い苦笑した。
幾分か気分が上昇してきているようだ。
「ファイル、全部配置終えました。」
「ありがとう。」
やがて終了した事を告げれば、会議室の正面脇に置かれたミニデスクの上で会議用の資料内容を確認していた部長は、フッと顔を上げた。
そうして彼はコの字型に配置された長机の上へとスッと目を走らせ、満足そうに頷く。
「うん、OKだな。」
その言葉にホッとして、私は大きく吐息をついた。
通常業務後の事だけに、思考回路がかなり漫然となり始めている。
「助かったよ。おけげで月曜の準備は万端だ。」
「いえ、これぐらいの事ならば。」
お役に立てたなら幸いですと言い、微笑んだ。
正直、あのまま飲み会に行かなくても良くなった事に安堵しているこの胸。
そう、此処で部長と二人きり、ひっそりとした作業をしていた方が何倍も気が晴れるというものだ!
「もう少し時間がかかるかと思っていたんだが。」
予想以上に早く終わったなと、そんな事を呟きつつ、此方へと歩み寄ってきた彼。
そして面前までやってきたその人に、私はやや息を呑んだ。
今頃になって思うが、辺りに誰も居ない部屋の中、彼と二人きりである。
「こうして直に仕事ぶりを観察してみれば、アスハは動きが機敏だし、作業効率が良いな。」
「え?あ、はい!」
「取引先との遣り取りも迅速だし、相手とのコミュニケーション能力も非常に高い。」
よもやなお褒めの言葉に、胸が熱くなる。
いつかこうして、この人に頼られ仕事がしたいと思っていた事もあってだろう、自分の能力を褒められて嬉しさが込み上げた!
「ありがとうございます!」
私は満面の笑みを浮かべ部長を見やった。
これに彼の碧色の瞳も一瞬柔らかくなり、場が和む。
「でも、それなのにだ?」
しかし眼前、柔和なその顔が突然引き締められ、私は『え?』とたじろいだ。
纏うその空気さえも固くなり、普段見かける仕事モードな表情に一変する。
「昼間、ユウナとの遣り取りを耳にしていたんだが、大分大袈裟に叱られていたな。」
「えっ・・・あ、はい。」
「あれは、一体どうしたんだ?」
此処でいきなり『昼間の件』について触れてきた彼に、急転直下、この胸はギュウと引き締められていった。
息がしにくい。
一日の疲労感がどっとこの身に押し寄せてくるよう。
「ユウナから受けた報告によれば、君の些細なミスが原因との事らしいが。」
やはり自分だけを引き留めたのにはそれなりの訳があったのだ。
そんな風に思い、私は俯きグッと掌を握り締めた。
元々事業部のエリートであり、部長という役職にある彼にとって、やはり昼間の件は放っておけない事柄だったのだろう。
少し褒められたぐらいで浮かれた自分が情けない!
私という人間は、何処まで単純なんだか!?
そう、今日は朝から実に多忙で、それというのも大きな契約が2件重なった上に、多くの商品の発送やら転送、更に諸々の手続きやらでフロアー内は殺伐としていたのだ。
そんな中、私と新人であるシン・アスカは、先輩達の指示を仰ぎつつ、何とか任された仕事をこなしていた。
そして3階に持って行って欲しいという品を手に、私が移動しようと思っていた、その時!
『あのさ、そのついでにこれと同じパッケージの物を、3階の倉庫から持ってきてよ!』
此処で指示を出してきたのが、ユウナ・ロマだった。
了解です。数は幾つですか?
私の問いかけに『30』と投げやりに答えた彼の声を頭に、フロアーから素早く移動していったのだが・・・。
 
「私・・・。」
仕事は遣り甲斐があって楽しい、けれどどうしてこうも上手くいかないのだろう!?
そもそも指導役のユウナにあそこまで言われた事もそうだが、今となっては事前に注意を払えなかった事に、遣り切れなさと不甲斐なさとを覚えて止まず。
悔しい!
だが今になって部長にその事を問われ、いつもに増して疲れている所為だろうか?

返す言葉無く、私はその場で項垂れた。
あの時、30個という数を聞いて、正直自分だけで持って来れるのだろうか?という疑問が浮かびもしたのだ。
だが殺伐とした辺りの空気と、苛立っているようなユウナ・ロマの姿がその質問を許さず、私は心配気なシンの眼差しを受けつつも身を動かしてしまったから・・・!
「しかし・・・俺が思うにはだ。実際、ユウナが言う程の事では無かったんじゃないか?」
「え・・・?」
「先程のアスハの動きを見ていてもそうだが、的確な指示さえ与えられていれば、今日の事は事前に防げていたのでは?」
上役であるアイツも、幾分か平静さを欠いていたのだろう。
 力なく俯いていた私は、彼の言葉を耳にゆっくりと顔を上げた!
「勿論、指示されたからといって、単純にそれに従うばかりでは能が無い。アスハも最初の段階で指示を確認して、あんな多数の壊れ易い商品を独りで運ぶ事に異議を強く唱えるべきだった。」
「っ・・・はい。」
「とはいえ、やたらとプライドの高いアイツへと異を唱えるのは、なかなか難しい事かもしれないがな。」
まるで諭すかのようなその声音を耳に、私は部長を見つめ立ち尽くす。
自分を擁護してくれたわけではない、でもこの人はちゃんと自分の動きも把握してくれていたのだ!
途端に瞼の奥がジワリと熱くなり、慌てて両目を瞑った。

潤みゆく瞳から滴が零れ出そうになり、気持ちが焦る。
今日一日の出来事が一気に脳裏を過ぎり、そしてふにゃりと張り詰めていた胸が緩んでいく。
「いや、アスハ・・・?」

そんな私を前に、部長もややうろたえたようだった。
でもしばらくの後、不意にポンポンと頭部に感じられた大きくて温かな感触!
「大丈夫だ。お前の頑張りは俺がちゃんと見て居る。だから、落ち着け。」
「っ・・・はい。」
「それに、そんな顔をされると、俺がどうしていいか分からなくなくなるだろう?」
そう言って、本当に至近距離、腰を折り目と目を合わせてきた彼に、込み上げてきていた涙もシュンッと一気に引いて行った!
有り得ないぐらい間近に映った、綺麗で透き通った碧色の瞳に鼓動も止まる!
「ッ・・・あ、あの!?」
「とりあえず腹が減った事だし、一緒に飯でも食べに行くとするか。」
「え!?」
「ほら、もう8時半近い。人間腹が空きすぎると、情緒不安定になるからな。」
彼は尚も2~3回ポンポンと私の頭部を叩くと、軽やかに背を向けて会議室の前方へと向かって行った。
いきなりに次ぐいきなりな展開に、もはや私の感情は付いて行かず。
飯って、二人きりでか?
「アスハ?突っ立っていないで資料室の施錠をしておいてくれよ。」
そんな自分へと向かい、確認している資料から目を上げる事無く指示をしてきた彼。
私はこれにハッとなり、『はい』とやや上擦ったような声を上げると身を動かした。
 耳にしたその言葉に、胸の中、妙なざわめきを覚えつつ・・・。

 


やがて私と彼は、会社から程好く離れた場所にある一軒の小奇麗な中華料理屋へと到着した。
此処は密かに部長が気に入っている店らしく、皆が向かっていった飲み屋『AA』とは逆方向、同じ会社の人とも出くわす事が無いだろう、大通りから少し奥まった場所にあった。
『何が食べたい?』という彼からの問いに、ラーメンが良いと口にした結果だ。
「アスハのお気に召す味だと良いんだが。」
そんな事を口にする彼と共に、店内の一角へと腰を下ろす。
すると奥から出てきた店員が、素早くオーダーを取りに来た。

『仕事後に引き留めて手伝わせてしまった訳だし、お礼がてらに飯ぐらい奢らせてくれ。』
当初、そう言ってくれた彼に、私は遠慮の言葉を口にした。
幾らお礼とはいえ、二人きりで食事というのは、今日の私には色々と宜しくない!
第一、飲み会の方はどうなっているのか!?
気になり、その事を問い質せばだった。
『大丈夫だ。あちらの方はサイにもう任せてある。』
残っていた仕事があったから、会社内に居た君の手を借りて処理するとな。
勿論、かかった飲食代は部長持ちで良いとも告げたらしい。
パチパチと目を瞬きながらも、私は彼の言った言葉を何とか理解する。
つまり既に私と部長とは、飲み会に参加しなくてもOKという事なのだ、と。
『あの、でも・・・!』
正直行きたく無いわけじゃなかった。
ザラ部長に誘われたという事に嬉しさはあれど、やはり戸惑いと動揺が胸を強く襲っていたのだ。
何せ先程の妙な発言もあって、今は心が誤解してしまいそうだった!
上司と部下という概念を越えて、独りよがりな想いに走ってしまいそうで!
「アスハは何にする?」
尋ねられハッと顔を上げれば、先程もこの目にしていた碧色の瞳が直ぐ其処にある。

『この後に何か予定でもあるのか?』
その問いかけと共にこの瞳に見つめられれば、反論する余地など無かった自分。
結局『分かりました』と素直に首を縦に振り此処へとやってきたのだが・・・。
メニュを選びつつ、私は上着の胸元をキュッと手で引き合わせた。
向かい合わせで座っている今、意識が妙に落ちつかない。
「じゃあ、私は塩ラーメンで。」
とりあえずこの店お奨めらしい塩ラーメンを頼んだ。
やってきたラーメンには、こんもりとした刻みネギと大きなチャーシューが3枚。
「この店はスープが旨いんだ!」
食べる前にそう言った彼へと頷き、とりあえずスープを飲んでみた。
成る程!あっさりとしているのに、酷があって思わずホウとなる味だった。
最初の遠慮も何処へやら、私はラーメンを素早く口にしていく。

今日は朝からバタバタで、しかも昼間にはあの嫌な一件もあったりで精根尽きていたのだ。
彼の前という事もあって微妙な心持だったが、空腹の前にそんな事は意味を成さない!

 ありがたい事に、彼も相当にお腹が減っていたのだろう、しばし麺を啜る音だけがこの場に続いた。

やがて丼の3分の1程を食べた辺りでだった。
ようやく私達は会話をしだす。
最初は仕事関係の事から、次第に日常的な事柄について。

「アスハは休みの日とか、普段は何をして過ごしてるんだ?」
幾分かお腹が満たされた所為だろうか。
この店にやってきた時よりも気持ちは落ち着きを見せていた。
「 別に、普通に過ごしていますよ。時々買い物に行ったり。」
「そうか。」
「部長こそ、どうされてるんです?」
尋ねられたついでとばかりに、私も彼のプライベートを軽く探ってみた。
するとどうやら、彼は電子工学に興味があり、其方方面の工作に勤しんだりしているらしい。
最近はペットロボなる物を作っているとか。
色香漂うイケメンで年上で上司だけれど、何処か少年みたいな所が残っているようだった。
職場とはまた違う、何処か揚々とした彼の姿に私は思わず微笑む。
だって時間さえあれば製作に勤しんでいるとか、まるでかぶと虫取りに夢中な男の子みたいだと思えたから。

「でも、デートとかは?部長、あんまり趣味ばかりに勤しんでると、彼女に怒られたりしませんか?」
此処で私は、謎の部分の多い彼へと思い切って踏み込んだ質問をしてみた。
すると予想外にあっさりと『居ないよ』という答えが返って来た!
「え!?居ないんですか!?」
「あぁ。」
「何で!?」
思わず素の突っ込みを入れてしまったが、彼は少し目を見開いただけ、笑みを浮かべつつ此方をジッと見つめてきた。
「居ないと可笑しいか?」
「え?あ、いえ。でも、ザラ部長ならば選り取り見取りじゃないかな~と。」
これに肩を竦め、彼は『そんなわけは無いよ』と言った。
「単に仕事が忙しいからかな。」
「あぁ、成る程。」
そして私は胸に手を当てた。
早い鼓動を刻むその場所に、目を瞑り考える。
確かに部長職は大変だろうし、今は仕事が充実していると見える。
だからだ。
そして再びチャーシューを口に含んだところでだった。
「そういうアスハはどうなんだ?」
よもやな質問返しに、私は顔を顰めていた。
相手に聞いておきながらも、出来れば聞かれたくない事柄だったからだ。
私は素早く程好い大きさで肉を引きちぎり、咀嚼した。
そして脇にあったお冷でスッキリさせた後に口を開く。
「部長に同じくですよ。」
「という事は・・・?」
「以前同じ様な事をユウナさんにも聞かれましたけれど・・・社会人になってからは居ません。」
何を言わせるのだかと捻くれた気持ちを胸に、答えを返した。
まあ残念ながら、社会人になってからは出会いも全く無く、仕事オンリーな生活を送っている。
『それが何か?』と問い返してやろうとした私は、だが何故か顔を顰め、此方を強く見つめてきた彼に意を呑まれる。
「ユウナが?」
「え?あ、はい。」
「それは、いつ頃?」
何でそんな事を?とは思いつつも、私は彼の問いかけに素直に答えた。
そう、あれは確か6月の頭頃、まだ昼食を一緒に食べたりもしていた、そんな中で唐突に聞かれたのだと。
「彼氏は居るのかって、いきなり聞かれて、居ないって答えたんですけれど。」
「うん。」
「そしたらいきなり、もう直ぐ夏だし、海とかには行かないのか?って聞かれて。」
マリンスポーツは好きですけれど、社会人になってからは行ってませんと答えれば、『ならどうせだし、良ければ僕の家族と一緒に行かないか?』と強く誘われたのだ。
「どうやら彼の御実家がかなりの資産家みたいで、毎年夏は南国のオーブ諸島までクルーザーに乗って遊びに行くとかなんとか。」
まだ夏の予定を何にも立てていないのだったら、是非においでよ!と。
朗らかな顔つきでそう誘ってくれた、あの時の事を振り返り口にしていく。
「でも余りに突然のお誘いだったし、それに正直、旅行にまわせる資金も余り無かったので。」
「だから、断った?」
「はい。」
部長の言葉に頷き、私はラーメンの鉢へと目を落とした。
あの時、ユウナ・ロマは『お金は全部こっちが持つよ!』とまで言ってくれたのだが、そこまでされる理由が見つからず、私は丁寧にお断りしたのだ。
でも今思えば、あの時を境にユウナ・ロマの態度は硬化していった気がする。
やはり自分の断り方が不味かったのだろうか?
ユウナ・ロマの気に障るような事を、何か言ってしまったのかもしれない。
そんな風に今更ながらに過去をふり返っていればだった。
「アイツめ・・・!」
何故か低い声でそう問う声が聞こえ、私は驚き顔を上げた。
すると彼の瞳、その中に赤黒い物が見えた気がして!
私はそんな部長の様子を唖然として見つめる。
どういうことだろう!?
目の前の彼の様子が解せなかった。
 

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