忍者ブログ

LOVE SEED

ガンダムSEEDファンブログ
NEW ENTRY
10 2024/11 1 23 4 5 6 7 8 910 11 12 13 14 15 1617 18 19 20 21 22 2324 25 26 27 28 29 30 12
<<< PREV     NEXT >>>

11/28/16:58  [PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

06/27/10:02  陽だまりの仔 9

 

一見穏やかさを取り戻したかのような室内、俺はソファーの上から一点を見やる。
そして軽く首を傾げた。
先程までとは違い、ジッと床の上にて何かをかじっている銀色の毛むくじゃら犬。
ガジガジという音が聞こえてくるから、相当に固い物であるようだが?
・・・美味しいのだろうか?
匂い的には嗜好をそそるわけでもない、だがあの五月蝿かった存在が無言でソレに噛り付いている姿から、俺はふとそう思う。
『オヤツだぞ』と言ってソイツが受け取ったのは、四角いクッキーのような物体であったが?
あれから今現在まで、銀色の毛むくじゃら犬はずっとソレをかじっている。
ガジガジガジガジ。
果たしてソレは何なのだろう?
だが思わずジッと見つめて居た自分へと、刹那に襲い掛かってきた鋭い瞳!
そして『何だ!?』と目で物を言ってきたソイツに、カチンとなりつつ俺は眉根を寄せた。
ったく、どうしてこうも好戦的なのだか?
そんな風に思いながらも、俺は『なぁ?』と声をかけてみた。
するとアイツは即座に『何だ!』と鼻息荒く声を返してきた。
これに二度目のカチン。
俺は苛々とした胸を抱えつつ、そっぽを向いた。
この様子を見ていたのか、『アスラン?』と我が家の主人の声がして『これで遊ぶ?』といつものハムスターロボを掲げた。
そして背中にあるネジを巻いた主人は、『行くよ?』と言ってロボを解放する。
正直それで遊ぶ気分では無かったものの、どうせ他にする事も無いのだ。
俺はのっそりと立ち上がると、走り回りだしたハムスターロボを目で追いかけた。
そうしながら、『そういえば、以前これで遊んだ時には、カガリが一緒だったな』とそんな事を思い出していたのだ。
 


『楽しい~!』と言ってキラキラの笑顔を見せていたアイツからは、心底嬉しそうな気配が漂ってきていた。
空気というのは伝染するものらしい。
あの時、俺はそれをつくづく感じたものだった。
その外見もさることながら、きっとアイツはお日様の仔なのだろう。
そんな可笑しな事すら思ってしまえる程に、眩かったあの笑顔。
捕まえる気など半分で、走り回るロボを追いかけつつ、ふとあの時の事を思い起こす。
視界の先に見えるラグマット。
その上で、アイツは何度か転がり壁に激突していたりもしたなと。
消え去らぬ姿を其処に見て、俺は自然と微笑む。
元気にしているだろうか?
今頃は何をしているだろうか?
ふとそんな風に思い遣った、その時だった!
ドッドッドッドという妙な足音が背後から聞こえてきて、これに俺はギョッとなり、慌てて背後を振り返り見た。
するとどうだろう!?
其処には銀色をした毛むくじゃら犬が、猛然と此方に向かい駆け寄ってくる姿が見えるではないか!?
・・・な、な、何だ!?
いきなりの事に驚愕しつつも、だがその目は自分ではない何かを見ているようだった。
そして軌道から軽く身を飛び退いた俺は、ハッハッハッハと赤い舌を覗かせ走り去るソイツを唖然と見つめた。
周りの物を蹴散らしつつ、長い銀色の被毛を靡かせ疾走していく犬。
一体何が起こったのか?
だが過ぎ去る一瞬前、此方を横目で見やりニヤリと笑ったソイツの顔を思い出し、俺は『あぁ!』と悟る。
どうやら走り回るハムスターロボに興味を惹かれたらしい。
そして自分の方が先にそれを捕まえようとしているのだろう。
だが・・・捕まえたければ捕まえれば良いだけの事。
別に俺は張り合う気は無い・・・のだが?
反面、そんなヤツの目の前でロボを先に捕獲してやった時、一体どんな顔をするだろう?と、そんな想像が脳裏を過ぎった。
ああ、そうだ、それは随分と面白いかもしれない!
先程の事もある、何処か自分を見下した所のあるソイツの鼻をへし折ってやろうという気持ちが沸々と沸き起こってくる。
そして俺は刹那にパッと駆け出していた。
ドッドと大仰な足音を立てて走り回るソイツの先、俺はソファーの背もたれの部分へと飛び乗った。
そして右から大きく回りやって来るロボへと、強く意識を向ける。
この部屋の造りは自分の方が良く分かって居るのだ。
ましてロボの動きもだ。
このまま直線的に来るか、それとも手前で突然カーブをするかは知れないが、此処ならば臨機応変!
・・・アイツの目の前で確保してみせよう!
だが一瞬の判断が毛むくじゃら犬と勝機分けになるかもしれない。
足音はさておき、意外にも機敏な動きをしている銀色犬に、密かに競争心が煽られる。
そしてジージー、ジージーと耳に聞こえるロボの音に、俺は深く意識を同調させていく。
あともう少し、そのまま、そう、今だ・・・!
右上からソファーへと向かいかけてきたロボが、パッと何の前触れも無くターンをした。
その一瞬を見て取り、俺は素早くソファーの上から身を躍らせる!
大きく見開かれた犬の目が、一瞬視界の先に見えた。
これにほくそ笑みつつ、俺は宙に躍らせた身体、その先にて小賢しく走り去ろうとしている物体へと前足を定めて・・・!
ピンポーンと、チャイムの音が鳴ったのは正にそんな時。
軽く削がれた意識の先、僅かに手の先から逃れ、ハムスターロボは駆け抜けていこうとする!
俺は『ちっ!』と胸の内で呟き、素早く体勢を立て直そうとした。
逃しはしない・・・!
「アースラン!」
だが陽気に己を呼ぶ声が耳に聞こえ、俺は『え?』となりこの身に急ブレーキをかけた。
今の声は!?
止まりきれず余韻で床に半ば突っ伏した状態になりつつも、やがてパッと顔を上げた。
するとトタトタという足音と共に、やはり!というべき存在が一つ!
「久しぶり!元気だったか?」
ニッコリと微笑みつつ、此方へと歩み寄ってくる金色。
それは間違いない、だがいつの間にであろう、此処へとやって来ていた・・・。
「カ・・・カガリ?」
その姿に、驚きと共にパァと晴れていった胸の内。
そしてスクッと身を立て直した俺の耳に、数秒後、背後から『獲った!』という歓声が聞こえてきた。
だが意識は既にカガリへと向かっていたのだ。


 

拍手[20回]

PR

06/21/12:33  陽だまりの仔 8


やがてカガリの飼い主が迎えにやって来た。
颯爽と駆け寄っていくその後姿に、微笑みつつも一抹の寂しさを覚えたこの胸。
共に過ごしていた時間が、アイツと一緒に居ると新しい発見の連続で・・・。
「ヤマトさんには何てお礼を言ったらいいのか。」
此方の急なお願いでしたのに、本当にありがとう!
カガリを胸に抱きかかえた彼女は、我が家の主にそう言って頭を下げた。
主人はこれに目を細めると、『これぐらいの事ならば・・・』と言い、彼女の腕の中に居るカガリへと手を伸ばし、その頭をヨシヨシと撫でた。
「アスランも、凄く楽しかったみたいだしね!」
次いでそう言い、『そういえば!』と嵐の日の事を話しだした。
これに『まぁ!』と彼女・・・ラクスは丸い瞳を更に見開いて、『そうでしたか』と華やかに微笑む。
そして俺へと向かい、ゆっくりと身を屈めてきたその人。
「アスラン?」
名を呼び、柔らかく俺を包み込む白い手。
チラリと腕の中に居るカガリに目を向ければ、アイツも朗らかに微笑んでいた。
「嵐の中、怖がるカガリの傍で、ずっと寄り添ってくれていたとか?」
彼女は俺の頭部を心地良く撫でた。
途端に甘い香りが鼻に感じられ、ほわんとした柔らかな感覚が胸に生じる。
「ありがとう。アスランはカガリの騎士みたいですわね!」
キシとは何なのか?
聞いた事のない言葉に目を瞬きつつも、だが恐らく良い意味の言葉なのだろうと、その丸い瞳を見上げ俺は判断をした。
そしてにゃーおと一啼きしてみせればだった。
ふふと彼女は楽しげに笑い、隣に居た主人と目と目を合わせ共に微笑む。
其処には甘くたるい空気が漂い、カガリもまた此方を見やりはにかむように笑っていたのだ。


 

この間、カガリが訪れていた時から、季節は確実に移り変わっていく。
昼寝に適していた窓辺はもはや灼熱の地獄と化し、最近はもっぱらリビング内、そよそよと風が吹き行くフローリングの上が心地良い。
そして昼下がりの長閑な時間の中、俺は食後のまったり感も相まってのんびりと寝転がっていたりしたのだが・・・?
ソイツ等は突然にやって来た!
玄関チャイムが鳴り、出迎えに行った主人。
この時の俺はすっかり警戒心も薄れ、半ば夢の世界へと旅立っていこうとしていた時だった。
「ディアッカ?」
何をか驚いたような主人の声が聞こえはしたものの、俺は寝そべったまま、頭と身体が分離したような状態。
「どうしたの、こんないきなり?」
「ああ、これ!お前会社に忘れていっただろ?」
「え?って、何?わざわざ持ってきてくれたわけ?」
「いや、まあな・・・ああ!それと、これもだ!」
『わざわざ手土産まで?』とかなんとか主人が言い、その後にやや妙な沈黙があった。
そして数秒後。
「実はさ、ちょっと相談したい件があってだな・・・。」
「・・・じゃあ、折角だし上がっていく?」
『ん?』と意識のアンテナが働いたのは、『悪いな!』という声と共に、ゆっくりと此方に向かい歩み寄って来た足音によってだった。
何だ?と思い瞼を開けていけば、そこに居たのはだ!
「イザーク。頼むから静かにしていてくれよ?」
・・・何でこいつが此処に居るんだ!?
それはいつかの銀色毛むくじゃら犬の飼い主であり、しかもその腕の中にはである!
行儀良く抱かれてはいるものの、既に俺の方を鋭く察知しているようなその犬に、俺は唖然となりつつも鋭い視線を向けた。
寝ぼけ眼であり、今だ気だるい感最高潮ではあったもののだ。
ソッと腰を起こし、身構える。
逃げるほどの相手ではない!
だが、そう・・・一応だ!
「で、何?一体どうしたの?」
尋ねた主人の手前、毛むくじゃら犬の主は言い難そうに顔を顰めた。
だがやがて意を決したように口を開くと、『あのさ、お前さ・・・』と上目遣いに主人を見やる。
「ウチの会社の広報部に居るミリアリアと、同じ大学出だったよな?」
「へ?あぁ、うん。」
男の言葉を聞きやや目を見開いた主人。
そしてまた妙な間が空いた後にだった。
「そう、実は・・・彼女を含めた数人で、この間一緒に飲みに行ったわけなんだが、そこで俺の仲間が彼女の事を酷く気に入ったらしくてな!」
「うん。」
「それでソイツがさ、彼女について色々知りたいって言いだしてだ!」
お前ならば、ミリアリアについて何か色々と知っている事とかあるんじゃないかなと思ってな!
そのように述べた相手に、我が家の主は小首を傾げた。
そして『ふーん』と呟く。
「まぁ、彼女とは大学の時に同じゼミに所属していた事もあったし、それなりに知っては居るけれどさ。」
「お。おう。」
何故か軽く身を糾した目の前の男を見やり、主人は両目を細めた。
けれどすぐにあっけらからんとした顔に戻すと、やや思い出すように斜め左上を見やる。
「そうだね、凄く気の利く娘だと思うよ。決して気が強すぎるってわけじゃないし、サバサバしていて話し易いし。」
「うんうん。」
「見た目も可愛いしね。でも・・・。」
「でも?」
此処でフッと表情を歪めた相手に、我が家の主人は思い遣るような目を向けた。
同情とも苦笑とも取れる顔つきでだ。
「確か付き合ってる彼氏がいた筈だよ?」
この一言に、男の顔から表情が失せる。
「そう・・・か。」
付き合ってるヤツが居るのか。
誰にとも無く呟いたその顔は、まるで膨らんでいた風船が萎んでいくかのよう。
「ディアッカ?」
名を呼んだ主人に、男はハッとなる。
「ん?」
「大丈夫?」
「あぁ・・・って、何がだよ!」
ハッとなり顔を取り繕った募る男を前に、微笑んだ主人。
だが直ぐにその顔を引き締めるとだった。
「あのさ。」
「何だよ?」
「そう、確定情報じゃないんだ。でもね・・・実は今、ちょうど彼氏と別れそうだとかなんとか、そんな話を小耳に挟んでもいるのだけれど?」
突如そう告げた主人に、男は見事に固まった。
そして一瞬後、『それは本当か!?』と身を乗り出してきたソイツ。
これに『はぁ』と大仰に溜息をつくと、『さぁね、嘘つきには教えてやらない』と主人はソッポを向いたのだった。



数分後、妙な膠着状態だったリビング内の空気も解れ、ようやく会話を再会した主人達。
けれど其処には、微妙な優劣関係のような雰囲気が見て取れるようだった。
素直に心情を打ち明けた男を前に、軽く上から目線を向ける我が主人。
見た目からすれば、明らかに男の方が長身で強そうな体格をしているというのにだ。
「でも、ディアッカ?」
「ん?」
「いつも君が相手にしている娘達とは、随分とタイプが違うようだけれど・・・?」
そんな事を述べた主人に、沈黙する相手の男。
そしてしばらくの後『それはな』と言い、更に『分かってるさ』と小さく口にする。
「ミリアリアは遊びの相手に向かない娘だって事、分かって居るよね?」
告げられた男は、軽く両目を瞑った。
「確かに・・な・。」
その声には、何処かしんみりとした雰囲気が漂っていた。
どっちかっていうと、楽しい事に重きを置いてきたし、来るもの拒まず、去るもの追わず。
その日その日のアバンチュールに酔いしれていた時もあったしな、と。
「でも、な。最近、そういう付き合いに虚しさを覚えたりするようにもなってきてさ。」
まぁ、好い加減、ちょっと先の事を考えるようになってきたのかね。
そう言って、男は小さく笑みを浮かべた。
これに小さく肩を竦めた主人。
俺も歳をとったって事かな?
茶化し苦笑した男に、主人はフッと鼻から息を洩らし、『そっか』と答えた。
 

――と、そんなこんな主人達の様を下に見つつ、ハアと一つ大きな溜息をつく。
長閑な午後。
『ちょっと』の訪問の筈が、あれから早1時間も経過している事に、アイツ等は気付いているのかいないのか?
俺は寝心地の悪い高場から、不満に満ちた眼差しを階下へと向ける。
・・・ったく!
込み上げてくる苛々に、俺は視線を移していった。
そう、もう一つの不満の要因へとむけて!
其処にはきゃうんきゃうんと、飽きる事無く吼え続けている毛むくじゃら犬が一匹!
本当に何なんだ!?
俺が何をしたというのか?
「おい!其処の貴様!降りて来い!おい!聞こえているんだろう!おい!」
誰が貴様だ?
苛立ちそのままに銀色のソイツに鋭い視線を向けてやれば、途端に啼き声はヒートアップ!
・・・何をそんなに喚く必要があるのか!?
一々相手にするのが面倒で、ソイツの目につかない高場にて距離を取っていたのだけれど・・・。
もう我慢の限界である!
1メートル程の距離を空けて床に着地した俺は、ご要望に応えてやったぞとばかりの目を向ける。
すると銀色毛むくじゃら犬は、グッとその目を鋭く尖らせつつも、何処か満足そうに口端を上げた。
「ふん!ようやく降りてきたか!」
「一体、何なんだ?」
人のテリトリー内に乱入(しかも快眠を邪魔!)してきた挙句に、近所迷惑も甚だしく啼き喚くとは!
帰れ!
今直ぐに、此処から出て行け!
俺は喉元まで競りあがってきたその言葉を、辛うじて押し留めた。
確かに体格は向こうの方がやや大きいかもしれないが、動きの点で言えば自分の方が有利であろう!
自分には優れた脚力と鋭い爪がある!
向こうの突進と鋭い牙さえ避ければ、勝機は充分!
・・・争おうというのでならば、受けて立つ!
「ギャンギャンと五月蝿く吼え続けているのには、それなりの理由があるのか?」
余分な労力は要したくないが、それとなく挑発をしてやった。
すると瞳を更に鋭く尖らせ、鼻先に皺を寄せたソイツ!
「気になっていたならばさっさと降りて来れば良いものを。臆病な奴が大きな口を叩くな!」
何を!?
随分勝手な捉え方をしてくれる!
そう思い、俺は背中をやや隆起させた。
本当に何処までいけ好かない奴なのだか!?
そして低く威嚇の声を発した。
これに、向こうもグルルと白い牙を見せる。
正に一瞬即発!
何かの切欠でもって、お互いに飛び掛らんとしていた、その時だった。
「って、オイオイ?だからイザーク。お前は落ち着けって!」
そう言って、パッと銀色毛むくじゃら犬の胴体を掴み、抱え上げたのは向こうの飼い主だった。
どうやら事態を察して、慌てて駆け寄ってきたらしい。
「相手は猫だぜ?そりゃ確かに黒くて、ちょっと強そうには見えるけれど、お前が相手にするような奴じゃないだろ?」
ナニ!?
何だと!?
愛犬を諌める為に口にした言葉だったのかもしれないが、この時の俺には酷く気に触った!
全く、犬も犬ながら、飼い主も飼い主だ!
俺は戻しかけた背中を、再び元の山型へと戻す。
だが直後、ソイツの腕の中にて叫んだ銀色毛むくじゃら犬の言葉に、『ん?』となり『なんだ・・・』とやや気持ちが緩んでいった。
何故ならばだ!
「何が落ちつけだ!?そもそも、貴様が俺を勝手に此処に連れてきたんだろう!?人が気持ちよく昼寝をしようとしていたというのに!それを・・・可笑しくも色恋に意識を染めやがって!!」
「・・・。」
「こっちはいい迷惑だ!大体、人の飯すら時間を忘れる程に現を抜かしおって!」
飼い主の腕の中でギャンギャンと吼え捲るソイツに、この胸が奇妙にストンと落ちる。
あぁ、そうか。
コイツも色々と大変なんだな。
自然とそんな言葉が胸に浮かんだ。
途端に失せた戦闘心と、喚く目の前の存在に、妙な同情心が沸いたのだった。



最後に・・・拍手コメントへの返信☆☆

なつめ様へ!
暖かい御言葉をありがとうございます^^
続きもどうかお楽しみいただけるよう、頑張って書いていきますので!


  

 

拍手[16回]

06/06/08:52  陽だまりの仔 7


この間は、殴ったりしてゴメンな?
俺を見上げつつ、そう言ったアイツに首を横に振る。
いや、あれは自分も悪かったと思うから。
そう告げたものの、『でも・・・痛かっただろ?』とアイツは謝ってきた。
これに微笑み、『気にするな』と答えればだった。
「お前って、いい奴だな!」
聞こえてきた一言。
殴られた事を根に持っていないのを指してだろう。
嬉しそうにそう言ったアイツに、心が軽くなる。
『そうか?』と答えつつ、これから何をしようかと考えた。
一緒に昼寝?
もしくはいつものアレ・・・ハムスターロボを追いかけて遊ぶ?
俺はそんな算段をして・・・。

  
――今現在。
カガリはハムスターロボが気に入ったらしい。
あのキラキラとした目を更に輝かせて、飽きる事無く走り回るソイツを追っかけまわしている。
待て!とか、このぉ!とか、その口から叫び声が上がっているのは御愛嬌。
「くそっ!すばしっこい奴だな!」
中々捕まらないソイツに業を煮やしつつも、実に楽しげである。
けれどクルリと大きく輪を描いて回ったロボに、同じく両足を踏ん張り、軽快にターンをしようとしてだった。
マットに前足が乗っかってしまった事により、アイツは大きくバランスを崩す!
そのまま・・・マットと共にドンっと激しく壁に激突!
「カ、カガリ!?」
思わず立ち上がった主人同様、俺もまた大きく目を見開いていた。
かなりの音が聞こえたからだ!
でもパッと体勢を戻し、再びハムスターロボを追いかけだしたカガリに、ホッと胸を撫で下ろす。
何て言うのか?
「タフだなぁ。」
両目を細めて呟いた主人に、俺もまたコクコクと首を縦に振っていた。
それまでずっと走りづめ、まるで疲れを知らぬかのよう。
好きな事、楽しいことにはまっしぐら。
「何だかキラキラしてるよね。」
仰るとおり。
窓から覗く天候とは対照的に、その姿は煌いて見える。
すばしっこく動き回る身体は、被毛の色からして光の塊のよう。
「アスランもそう思う?」
そして隣に居た自分へと向かい、いきなりそう尋ねてきた主人。
「そういえば・・・いつもだったら高場からすまして様子を見ているのに。今日は珍しいね!」
更に含み笑いを浮かべつつ、そんな事を述べた主人に俺はグッと気を引き締めた。
そして突っ込まれた事柄に心の内で反論する。
此処でこうしてアイツの行動を見つめているのは、万が一、何かがあったら不味いだろうと思っての事だ!と。
それなのに?
「アスラン?もしかしてカガリの事・・・?」
何とも妙な捉え方をしてきた主人に、気持ちがむしゃくしゃするようだった。
全く・・・!
大きく呆れはしたものの、自分を見下ろす主人の目が何故か気になる。
なのでフウと一つ息をつき、俺はパッとカガリの行方に顔を戻した。
そういうお前こそ、本当は何かやらねばならない事(シゴトというヤツ)があるのだろうに、わざわざリビングにてカガリの動向を見守っているのは、単に飼い主であるあの女性(ラクス)に得点稼ぎをしたいからではないのか!?
そんな風に思いつつだ。
だがこの刹那!
視界の端、其処で先程同様、急にUターンしたロボを追おうとして、マットに足を取られるカガリの姿がふと映った!
しかも今度はかなりダイナミックな格好でだ!
・・・危ないッ!
これにハッとなり、俺は身体を突き動かす!
「わっ・・・ッ!?」
直後、ドンと壁に鈍くぶち当たったこの身。
痛い・・・だが間一髪!
「ア、アスラン!」
壁とは反対側にて、驚きに大きく見開かれた陽の色をした瞳が、至近距離にて自分を見つめていた。
どうやら間に合ったようだ。
先程と同じように、マット諸共壁へと激突するところだったカガリ。
「夢中になるのも良いけれど、もう少し気をつけろよ?」
ゆっくりと身を起こしつつ、受け止めた金色の存在を見やれば、『う、うん』と素直に頷きながら、驚き顔であの瞳が自分を見つめてきた。
キラキラと鮮やかな、まるで太陽の如きソレ。
・・・やっぱり、何とも言えず綺麗だ・・・!
思わずジッと見つめ、だが自分を不思議そうに見やるソレにハッとなると、俺は慌てて意識を泳がせた。
そんな中、ジージーと音を立てて小賢しく走りこんできたハムスターロボ!
ソレにカガリが『あ!』と声を上げ、臨戦態勢を取ろうとした!
だが・・・。
「なっ・・・!」
攻撃圏内へと入り込んだ瞬間を狙い、かました猫パンチ。
これに陽の色をした瞳が更に大きく見開かれ、輝き俺を見つめた。
満更でもない気分。
「お前、凄いな!」
カガリからの賞賛に、正直な所、すこぶる気持ちは高揚していたのだ。



しばらくして聞こえ出した雨音に、激しい風音も混じり入る。
そしてグオウと大声が轟き、空が怒り狂いだす。
「カガリ?」
グッと大きく縮こまったその姿に、俺は気遣い声をかけた。
ずっとハムスターロボを追い掛け回していただけに、疲れて心地良く昼寝をしだした矢先の事。
いきなりの咆哮に、ビクンと金色の身が飛び跳ねたのだ。
「大丈夫か?」
 
昼間なのに真っ暗となった窓の外、其処にギラリとした光が走った。
そして再び、グオオーと地面を響かせ空が唸る。
これに一瞬フワと金色の被毛が逆立ち、カクカクと髭が小刻みに揺れていた。
確かに酷くなりそうだと思ってはいたが、ここまで激しい嵐になろうとは。
正に夜の闇のよう、そしてバチバチと打ちつけ聞こえる風雨。
心配気に辺りを見やる陽色の瞳は、まるで黒雲に覆われた太陽の如く、光を失い彷徨っている。
その様が先程までと余りにも違っていて、俺は思わず目を細め苦笑した。
あの跳ねっ返りな存在が、よもやこんな姿になろうとは?
・・・怖いのか?
そう尋ねてみようとして、けれどその言葉は喉の奥へと飲み込んだ。
きっと強がりなコイツの事だ、『馬鹿を言え!』とか何とか無理に言い返してくるだろう。
だから・・・?
「傍に居るから、大丈夫だ。」
「っ・・・アスラン?」
「俺はずっと此処に居るから。」
安心して休めばいい。
そう言ってやれば、しばし放心したように此方を見つめたあの瞳。
けれどやがてフッと、アイツは柔らかに微笑んで。
「うん。」
一つ頷き、身を伏せる。
素直なその姿に、俺も微笑み身を伏せた。
お気に入りのソファークッションの上、いつもは無い温か味を傍に感じながら目を瞑る。
少しは落ち着いたのだろうか?
察してみた隣の気配、先程まで感じられていた震えが伝わり来ない。
外はまだ荒れているようだが、身体はしっかりと疲れているのだ。
・・・一緒に眠ろう。
そして俺は緩やかに意識を手放していった。
ふわりふわりと漂いだした夢空間の中、激しい雷雨の音など遠くに吹き飛んでいたのだ。


 


 

拍手[25回]

06/02/09:00  遥かなる君へ6

本文を読むにはこちらからパスワードを入力してください。

拍手[1回]

05/29/09:38  陽だまりの仔 6

主人が食事をつけ直している間、俺はその場に佇み、またあの時の事を思い出していた。
実に和やか、此処が誰のテリトリーであるかなど、全く考える素振りすら見せなかった。
でも何処か憎めない、そんな奴の事を。
『やっぱりウチと似ているけれど、全然違って見えるな!』
そう言って、キョロリと辺りを眺めた丸い瞳。
其処には嬉々とした雰囲気が見て取れていた。
更に『なんか凄く新鮮だ!』などと言って、ニッと微笑み此方を見やってきたから。
・・・何が新鮮なんだか!?
これに俺はぞんざいな言葉を返した気がする。
しっかりとは思い出せない。
とにかく苛ついていたのは確かだった。
そのマイペースさに気を大きく取られ、調子を大きく狂わされていたから。
・・・此処は一つ、しっかりと優劣を示しておくべきだよな!?
だが、此処でふと俺はそう思った。
体格からして此方の方が有利。
ならば尚更、この突拍子も無い存在に知らしめてやるべきだろう!
向こうの方が新参者なのだし、あまり調子に乗られても困る!
しかし気がつけば目の前、再びトコトコと奥へと向かっていくソイツの姿に、俺はまた唖然となり、それから大きく慌てた。
おいッ!?
だから、お前なぁ!
此処は他所(俺)のテリトリーなんだぞ!
勝手に動き回ろうとするな!
そう言おうとして、急ぎその後を追えばだった。
『こっちが浴室とトイレで、この辺はウチと同じなんだな!』
『だから、好い加減に・・・!』
『ん・・・って、うわっ!何だあれ!?』
軽く自分を無視した状態で、いきなり歩みを止めて固まったアイツ。
その視線の先には収納棚があり、その半閉まりになっていた戸の間からぶら下がり見えていた黒い紐のような物(コードの束)が見て取れた。
『凄い・・・蛇みたいなのが一杯居る!』
『いや、あれは蛇じゃない。あれは・・・。』
『わっ!何だこのキラキラした綺麗な丸いヤツ!』
更にその棚の下、其処に山積みされていたディスク(主人が膨大に所持している物の一部)を覗き見たアイツは、嬉々として身を乗り出した。
全くもって聞く耳もたず。
そして『凄い、此処は奇妙な物が一杯だな!』とか何とか言いながら、更に棚の中へと顔を覗き入れようとしたから!
『危ないから、止めろって!』
俺は慌ててソイツを制止した。
主人の物置は何が入っているか分からない危険地帯だ。
それを知り得て居る自分は、強く声をかけたのだ。
だが興味津々、キラキラと輝くあの双眸はただただ光るディスクの虜になっていて・・・!
『おい!?だから、聞いてるか?』
此方の声など諸共せず、更にズイと身を入れようとしたソイツ。
次いでハッとして見上げれば、何とソイツの頭部へと目掛けて落ちて来そうな工具が目に入ってきて!
不味いと、ただその言葉だけが浮かんだ。
そして背後から脇へと倒れこむ形で突進した俺は、予想以上に軽かったその身諸共、大きく横に転がっていって・・・!
『ッ・・・!』
『痛・・・。』
呟き緩やかに顔を上げたソイツの上で、パッと背後を振り返り見てみた。
すると其処には尖った工具が一つ、傍に落ちた衝撃を知らしめる痕と共に、転がり見えたから!
『馬鹿ッ!』
思わず頭に血が昇り、ソイツの上に乗っかかった状態のまま叫んでいた。
『危ないって言っただろッ!』
『っ・・・ぇ。』
俺が気付いたから良かったものの、あのままだったらどうなっていた事か!?
今頃はアレが突き刺さっていたかもしれないんだぞ!?
『俺の声が聞こえなかったのか!?』
そう言ってやれば、眼下にて、ようやく何が起こったのか理解出来たらしい。
『わ、私、その、あの・・・。』と動揺を隠し切れない様子で、瞳を揺らし、やがて俯いたソイツ。
そしてか細い声で『ご、ごめんな?』と素直に可愛らしくも謝ってきた。
その仕草や雰囲気に、俺は『あれ?』と思い、そして思わず目を瞬いた。
『ごめん!私、その、初めての場所で舞い上がってて・・・だから、その!』
申し訳なさ気に揺れるその丸い瞳。
それ等が、自分の思い違いであると知らしめて居るようだった!
『お前・・・もしかして!?』
生意気だと思い、業を煮やしていた自分。
でもその実・・・メスだったのか。
知らず呟けば、直後、辺りに沈黙が落ちた。
だがやがてグッと細まっていった陽の色をした瞳!
そして・・・!
「アスラン、お待たせ!」
ごめんねと呟きながら、食事を持ってやって来た主人を見やりながら、俺は思う。
くるくると、面白いぐらいに様を変えていたあの瞳。
そう、最初こそ、その挙動に自然と同性だと思いこんでいた自分。
けれどその実、小柄でほわんと柔い存在だった。
・・・確か、カガリとか言ったよな?
またいつか、アイツと会う時があるだろうか?
今度逢えたその時には、とりあえず一言詫びて・・・それから?
沈黙の後に受けた鋭いパンチ。
それを甘んじて受けた右頬を手で擦りつつ、俺は自然と苦笑していたのだ。


それからの日々はただただ過ぎていった。
変わらぬ日常。
空だけは様を変えて、明るく暗くと移り行く。
主人も相変わらずで、けれど以前とは何処か違っているような気もした。
『何が?』とは言えない。
そう、何となくだ。
今日は朝から鈍よりとした黒い空。
不穏な外の気配に、俺は窓辺からゆっくりとリビング内へと移動していった。
そしてソファーの上に飛び乗ると、其処に置いてある自分専用のクッションへと身を丸め凭れかかる。
何とも言えない気分だった。
優れぬ天候に、何をか感じるようで・・・。
不意にピンポーンと玄関チャイムが鳴ったのはそんな時。
その軽快な音に、澱んでいた意識がハッとなる。
しばらくの後、奥からのそりと身を出した主人が、リビングの壁に取り付けてある物へと向かい『はい』と気だるげに返事をした。
今日はキュウジツ、シゴトに行かなくてもいい日らしい。
ただ最近は家に帰ってきても寝室の机の上にて、四角く光る箱を見つめ、何やら忙しなく指を動かしているのが常。
今朝もおきてからずっとその状態で、自分にご飯をくれた以外、その場所にずっと向かっていたから。
主人は緩慢に『どちら様ですか?』と尋ねた。
すると鈴の鳴るような声で『すみません。お隣のクラインです』と聞こえてくる。
直後に『えっ!?』と大きく驚き、主人は『ラクス!?』と叫ぶと、わたわたと(起きぬけの格好のまま)玄関へと向かっていった。
俺も思わず耳が傍立ち、顔をピッと上げる。
だって、今、確かにこの耳に聞こえた名はだ!
そしてトンと床に降り立つと、そのまま主人の後を素早く追った。
「突然ごめんなさい!実は・・・。」
いつぞやのふわふわホワンとした客が、主人の向こう側で微かに見えた。
何処か申し訳無さそうな顔つきをしているようだった。
そして主人に向かい話をしている。
「え、ああ!良いよ!全然うちは大丈夫だから!」
「ありがとう!ヒビキさんの他に頼れる所が思い浮かばなくて・・・。」
どうやら何をか頼んでいるらしい。
主人に向かい、軽くお辞儀をしたその人。
「多分2~3日で帰れるとは思うのですが、その間だけ・・・!」
「うん、分かった!じゃあ、大切に面倒みておくね!」
そして主人が手にしたのは、いつぞやの四角い箱だった!
これに俺は大きく大きく両目を見開く!
「大丈夫だよ!アスランも喜ぶと思うしね!」
ボサボサ頭ながら、そう告げた主人の声。
恐らく、その顔には満面の笑みが浮かんでいるのだろう。
そんな事を思いながら、俺は主人が手に持つ四角い箱をジッと見つめる。
「ではカガリの事、宜しくお願いします!」
何か急な用があるらしい、ふわふわとしたその人は軽く頭を下げて去って行った。
やがて彼女の気配はすっかり消えた頃、ようやく室内へと向き直った主人。
そしてホウッと一つ息を吐き、リビングの方へと歩みを進みかけてだった。
入り口に居た俺に気付き、『おっと!』と目を見開く。
「アスラン?」
名を呼び、主人は微笑み緩やかに腰を落としてきた。
そして手にしている箱を床に置く。
「どうしたの?」
自分はただただジッと箱を見つめていた。
するとこれに、主人は『あぁ』と微笑んで。
「お客さんだよ。しばらくの間だけれど、宜しくね!」
これに俺は『勿論!』と答えた。
そして尚もジッと箱の方を見つめ続ける。
前回からどれぐらいぶりなのだろう?
分からない。
けれど嬉々として、尾がパタパタとうねりくねっていた。
やがて『おいでカガリ?』と言いながら、箱を開けた主人。
其処から現れ出てきたソイツは、あの眩い瞳で辺りを見やり、俺を見つめた!
「ヨッ!」
そして聞こえた第一声。
これに俺は笑い、『おう!』と小さく応えたのだ。
 

拍手[14回]

<<< PREV     NEXT >>>