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06/27/10:02  陽だまりの仔 9

 

一見穏やかさを取り戻したかのような室内、俺はソファーの上から一点を見やる。
そして軽く首を傾げた。
先程までとは違い、ジッと床の上にて何かをかじっている銀色の毛むくじゃら犬。
ガジガジという音が聞こえてくるから、相当に固い物であるようだが?
・・・美味しいのだろうか?
匂い的には嗜好をそそるわけでもない、だがあの五月蝿かった存在が無言でソレに噛り付いている姿から、俺はふとそう思う。
『オヤツだぞ』と言ってソイツが受け取ったのは、四角いクッキーのような物体であったが?
あれから今現在まで、銀色の毛むくじゃら犬はずっとソレをかじっている。
ガジガジガジガジ。
果たしてソレは何なのだろう?
だが思わずジッと見つめて居た自分へと、刹那に襲い掛かってきた鋭い瞳!
そして『何だ!?』と目で物を言ってきたソイツに、カチンとなりつつ俺は眉根を寄せた。
ったく、どうしてこうも好戦的なのだか?
そんな風に思いながらも、俺は『なぁ?』と声をかけてみた。
するとアイツは即座に『何だ!』と鼻息荒く声を返してきた。
これに二度目のカチン。
俺は苛々とした胸を抱えつつ、そっぽを向いた。
この様子を見ていたのか、『アスラン?』と我が家の主人の声がして『これで遊ぶ?』といつものハムスターロボを掲げた。
そして背中にあるネジを巻いた主人は、『行くよ?』と言ってロボを解放する。
正直それで遊ぶ気分では無かったものの、どうせ他にする事も無いのだ。
俺はのっそりと立ち上がると、走り回りだしたハムスターロボを目で追いかけた。
そうしながら、『そういえば、以前これで遊んだ時には、カガリが一緒だったな』とそんな事を思い出していたのだ。
 


『楽しい~!』と言ってキラキラの笑顔を見せていたアイツからは、心底嬉しそうな気配が漂ってきていた。
空気というのは伝染するものらしい。
あの時、俺はそれをつくづく感じたものだった。
その外見もさることながら、きっとアイツはお日様の仔なのだろう。
そんな可笑しな事すら思ってしまえる程に、眩かったあの笑顔。
捕まえる気など半分で、走り回るロボを追いかけつつ、ふとあの時の事を思い起こす。
視界の先に見えるラグマット。
その上で、アイツは何度か転がり壁に激突していたりもしたなと。
消え去らぬ姿を其処に見て、俺は自然と微笑む。
元気にしているだろうか?
今頃は何をしているだろうか?
ふとそんな風に思い遣った、その時だった!
ドッドッドッドという妙な足音が背後から聞こえてきて、これに俺はギョッとなり、慌てて背後を振り返り見た。
するとどうだろう!?
其処には銀色をした毛むくじゃら犬が、猛然と此方に向かい駆け寄ってくる姿が見えるではないか!?
・・・な、な、何だ!?
いきなりの事に驚愕しつつも、だがその目は自分ではない何かを見ているようだった。
そして軌道から軽く身を飛び退いた俺は、ハッハッハッハと赤い舌を覗かせ走り去るソイツを唖然と見つめた。
周りの物を蹴散らしつつ、長い銀色の被毛を靡かせ疾走していく犬。
一体何が起こったのか?
だが過ぎ去る一瞬前、此方を横目で見やりニヤリと笑ったソイツの顔を思い出し、俺は『あぁ!』と悟る。
どうやら走り回るハムスターロボに興味を惹かれたらしい。
そして自分の方が先にそれを捕まえようとしているのだろう。
だが・・・捕まえたければ捕まえれば良いだけの事。
別に俺は張り合う気は無い・・・のだが?
反面、そんなヤツの目の前でロボを先に捕獲してやった時、一体どんな顔をするだろう?と、そんな想像が脳裏を過ぎった。
ああ、そうだ、それは随分と面白いかもしれない!
先程の事もある、何処か自分を見下した所のあるソイツの鼻をへし折ってやろうという気持ちが沸々と沸き起こってくる。
そして俺は刹那にパッと駆け出していた。
ドッドと大仰な足音を立てて走り回るソイツの先、俺はソファーの背もたれの部分へと飛び乗った。
そして右から大きく回りやって来るロボへと、強く意識を向ける。
この部屋の造りは自分の方が良く分かって居るのだ。
ましてロボの動きもだ。
このまま直線的に来るか、それとも手前で突然カーブをするかは知れないが、此処ならば臨機応変!
・・・アイツの目の前で確保してみせよう!
だが一瞬の判断が毛むくじゃら犬と勝機分けになるかもしれない。
足音はさておき、意外にも機敏な動きをしている銀色犬に、密かに競争心が煽られる。
そしてジージー、ジージーと耳に聞こえるロボの音に、俺は深く意識を同調させていく。
あともう少し、そのまま、そう、今だ・・・!
右上からソファーへと向かいかけてきたロボが、パッと何の前触れも無くターンをした。
その一瞬を見て取り、俺は素早くソファーの上から身を躍らせる!
大きく見開かれた犬の目が、一瞬視界の先に見えた。
これにほくそ笑みつつ、俺は宙に躍らせた身体、その先にて小賢しく走り去ろうとしている物体へと前足を定めて・・・!
ピンポーンと、チャイムの音が鳴ったのは正にそんな時。
軽く削がれた意識の先、僅かに手の先から逃れ、ハムスターロボは駆け抜けていこうとする!
俺は『ちっ!』と胸の内で呟き、素早く体勢を立て直そうとした。
逃しはしない・・・!
「アースラン!」
だが陽気に己を呼ぶ声が耳に聞こえ、俺は『え?』となりこの身に急ブレーキをかけた。
今の声は!?
止まりきれず余韻で床に半ば突っ伏した状態になりつつも、やがてパッと顔を上げた。
するとトタトタという足音と共に、やはり!というべき存在が一つ!
「久しぶり!元気だったか?」
ニッコリと微笑みつつ、此方へと歩み寄ってくる金色。
それは間違いない、だがいつの間にであろう、此処へとやって来ていた・・・。
「カ・・・カガリ?」
その姿に、驚きと共にパァと晴れていった胸の内。
そしてスクッと身を立て直した俺の耳に、数秒後、背後から『獲った!』という歓声が聞こえてきた。
だが意識は既にカガリへと向かっていたのだ。


 

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