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05/29/09:38  陽だまりの仔 6

主人が食事をつけ直している間、俺はその場に佇み、またあの時の事を思い出していた。
実に和やか、此処が誰のテリトリーであるかなど、全く考える素振りすら見せなかった。
でも何処か憎めない、そんな奴の事を。
『やっぱりウチと似ているけれど、全然違って見えるな!』
そう言って、キョロリと辺りを眺めた丸い瞳。
其処には嬉々とした雰囲気が見て取れていた。
更に『なんか凄く新鮮だ!』などと言って、ニッと微笑み此方を見やってきたから。
・・・何が新鮮なんだか!?
これに俺はぞんざいな言葉を返した気がする。
しっかりとは思い出せない。
とにかく苛ついていたのは確かだった。
そのマイペースさに気を大きく取られ、調子を大きく狂わされていたから。
・・・此処は一つ、しっかりと優劣を示しておくべきだよな!?
だが、此処でふと俺はそう思った。
体格からして此方の方が有利。
ならば尚更、この突拍子も無い存在に知らしめてやるべきだろう!
向こうの方が新参者なのだし、あまり調子に乗られても困る!
しかし気がつけば目の前、再びトコトコと奥へと向かっていくソイツの姿に、俺はまた唖然となり、それから大きく慌てた。
おいッ!?
だから、お前なぁ!
此処は他所(俺)のテリトリーなんだぞ!
勝手に動き回ろうとするな!
そう言おうとして、急ぎその後を追えばだった。
『こっちが浴室とトイレで、この辺はウチと同じなんだな!』
『だから、好い加減に・・・!』
『ん・・・って、うわっ!何だあれ!?』
軽く自分を無視した状態で、いきなり歩みを止めて固まったアイツ。
その視線の先には収納棚があり、その半閉まりになっていた戸の間からぶら下がり見えていた黒い紐のような物(コードの束)が見て取れた。
『凄い・・・蛇みたいなのが一杯居る!』
『いや、あれは蛇じゃない。あれは・・・。』
『わっ!何だこのキラキラした綺麗な丸いヤツ!』
更にその棚の下、其処に山積みされていたディスク(主人が膨大に所持している物の一部)を覗き見たアイツは、嬉々として身を乗り出した。
全くもって聞く耳もたず。
そして『凄い、此処は奇妙な物が一杯だな!』とか何とか言いながら、更に棚の中へと顔を覗き入れようとしたから!
『危ないから、止めろって!』
俺は慌ててソイツを制止した。
主人の物置は何が入っているか分からない危険地帯だ。
それを知り得て居る自分は、強く声をかけたのだ。
だが興味津々、キラキラと輝くあの双眸はただただ光るディスクの虜になっていて・・・!
『おい!?だから、聞いてるか?』
此方の声など諸共せず、更にズイと身を入れようとしたソイツ。
次いでハッとして見上げれば、何とソイツの頭部へと目掛けて落ちて来そうな工具が目に入ってきて!
不味いと、ただその言葉だけが浮かんだ。
そして背後から脇へと倒れこむ形で突進した俺は、予想以上に軽かったその身諸共、大きく横に転がっていって・・・!
『ッ・・・!』
『痛・・・。』
呟き緩やかに顔を上げたソイツの上で、パッと背後を振り返り見てみた。
すると其処には尖った工具が一つ、傍に落ちた衝撃を知らしめる痕と共に、転がり見えたから!
『馬鹿ッ!』
思わず頭に血が昇り、ソイツの上に乗っかかった状態のまま叫んでいた。
『危ないって言っただろッ!』
『っ・・・ぇ。』
俺が気付いたから良かったものの、あのままだったらどうなっていた事か!?
今頃はアレが突き刺さっていたかもしれないんだぞ!?
『俺の声が聞こえなかったのか!?』
そう言ってやれば、眼下にて、ようやく何が起こったのか理解出来たらしい。
『わ、私、その、あの・・・。』と動揺を隠し切れない様子で、瞳を揺らし、やがて俯いたソイツ。
そしてか細い声で『ご、ごめんな?』と素直に可愛らしくも謝ってきた。
その仕草や雰囲気に、俺は『あれ?』と思い、そして思わず目を瞬いた。
『ごめん!私、その、初めての場所で舞い上がってて・・・だから、その!』
申し訳なさ気に揺れるその丸い瞳。
それ等が、自分の思い違いであると知らしめて居るようだった!
『お前・・・もしかして!?』
生意気だと思い、業を煮やしていた自分。
でもその実・・・メスだったのか。
知らず呟けば、直後、辺りに沈黙が落ちた。
だがやがてグッと細まっていった陽の色をした瞳!
そして・・・!
「アスラン、お待たせ!」
ごめんねと呟きながら、食事を持ってやって来た主人を見やりながら、俺は思う。
くるくると、面白いぐらいに様を変えていたあの瞳。
そう、最初こそ、その挙動に自然と同性だと思いこんでいた自分。
けれどその実、小柄でほわんと柔い存在だった。
・・・確か、カガリとか言ったよな?
またいつか、アイツと会う時があるだろうか?
今度逢えたその時には、とりあえず一言詫びて・・・それから?
沈黙の後に受けた鋭いパンチ。
それを甘んじて受けた右頬を手で擦りつつ、俺は自然と苦笑していたのだ。


それからの日々はただただ過ぎていった。
変わらぬ日常。
空だけは様を変えて、明るく暗くと移り行く。
主人も相変わらずで、けれど以前とは何処か違っているような気もした。
『何が?』とは言えない。
そう、何となくだ。
今日は朝から鈍よりとした黒い空。
不穏な外の気配に、俺は窓辺からゆっくりとリビング内へと移動していった。
そしてソファーの上に飛び乗ると、其処に置いてある自分専用のクッションへと身を丸め凭れかかる。
何とも言えない気分だった。
優れぬ天候に、何をか感じるようで・・・。
不意にピンポーンと玄関チャイムが鳴ったのはそんな時。
その軽快な音に、澱んでいた意識がハッとなる。
しばらくの後、奥からのそりと身を出した主人が、リビングの壁に取り付けてある物へと向かい『はい』と気だるげに返事をした。
今日はキュウジツ、シゴトに行かなくてもいい日らしい。
ただ最近は家に帰ってきても寝室の机の上にて、四角く光る箱を見つめ、何やら忙しなく指を動かしているのが常。
今朝もおきてからずっとその状態で、自分にご飯をくれた以外、その場所にずっと向かっていたから。
主人は緩慢に『どちら様ですか?』と尋ねた。
すると鈴の鳴るような声で『すみません。お隣のクラインです』と聞こえてくる。
直後に『えっ!?』と大きく驚き、主人は『ラクス!?』と叫ぶと、わたわたと(起きぬけの格好のまま)玄関へと向かっていった。
俺も思わず耳が傍立ち、顔をピッと上げる。
だって、今、確かにこの耳に聞こえた名はだ!
そしてトンと床に降り立つと、そのまま主人の後を素早く追った。
「突然ごめんなさい!実は・・・。」
いつぞやのふわふわホワンとした客が、主人の向こう側で微かに見えた。
何処か申し訳無さそうな顔つきをしているようだった。
そして主人に向かい話をしている。
「え、ああ!良いよ!全然うちは大丈夫だから!」
「ありがとう!ヒビキさんの他に頼れる所が思い浮かばなくて・・・。」
どうやら何をか頼んでいるらしい。
主人に向かい、軽くお辞儀をしたその人。
「多分2~3日で帰れるとは思うのですが、その間だけ・・・!」
「うん、分かった!じゃあ、大切に面倒みておくね!」
そして主人が手にしたのは、いつぞやの四角い箱だった!
これに俺は大きく大きく両目を見開く!
「大丈夫だよ!アスランも喜ぶと思うしね!」
ボサボサ頭ながら、そう告げた主人の声。
恐らく、その顔には満面の笑みが浮かんでいるのだろう。
そんな事を思いながら、俺は主人が手に持つ四角い箱をジッと見つめる。
「ではカガリの事、宜しくお願いします!」
何か急な用があるらしい、ふわふわとしたその人は軽く頭を下げて去って行った。
やがて彼女の気配はすっかり消えた頃、ようやく室内へと向き直った主人。
そしてホウッと一つ息を吐き、リビングの方へと歩みを進みかけてだった。
入り口に居た俺に気付き、『おっと!』と目を見開く。
「アスラン?」
名を呼び、主人は微笑み緩やかに腰を落としてきた。
そして手にしている箱を床に置く。
「どうしたの?」
自分はただただジッと箱を見つめていた。
するとこれに、主人は『あぁ』と微笑んで。
「お客さんだよ。しばらくの間だけれど、宜しくね!」
これに俺は『勿論!』と答えた。
そして尚もジッと箱の方を見つめ続ける。
前回からどれぐらいぶりなのだろう?
分からない。
けれど嬉々として、尾がパタパタとうねりくねっていた。
やがて『おいでカガリ?』と言いながら、箱を開けた主人。
其処から現れ出てきたソイツは、あの眩い瞳で辺りを見やり、俺を見つめた!
「ヨッ!」
そして聞こえた第一声。
これに俺は笑い、『おう!』と小さく応えたのだ。
 

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