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08/05/23:44  Summer day 2

世間の知る限り、彼は冷静かつ温和、常に模範とされる存在だ。
だがそんな彼も一人の人間であり、普通の男。
自分はそれを知り得ている・・・つもりだったのだが?


炎天下、何事も無く視察は完了。
この目にした改良型MS機の性能に、自国のエンジニアの優秀さを改めて強く感じた。
確かに予算という面からすると厳しいものの、あれは今後の世の中に広く受け入れられるであろう。
資料として受け取った書類を前に、カガリは深くそう思い、そして・・・。
演習場から官邸へと戻った今、何度と無く考えている事に思考を向けた。
『確かに、この機体は軽量化に伴い動きは機敏だ。しかし一機辺りにかかるコストが、正直高過ぎるかと思われます。』
脳裏に蘇るは、やや好戦的な態度で質疑をしていた補佐官アラタの姿だ。
対する『彼』もまた、思いがけず冷静さを欠く言動を取っていたから・・・。
  『コスト面だけを考えれば、確かにその通りです。しかし、この一機で従来のムラサメ数機を相手に出来る程の性能を備えています。』
  『それで?機能的に優れている、ただそれだけの理由で安易に受け入れられる筈も無いだろう。』
あれは生みの子ーー改良型のムラサメ機を批評された為に起こった動乱だろうか?
でも何となく、それだけではないような?
そんな気がする。
 『しかし現状、本土防衛の為に配備されているMSの多くが対艦対戦用の物です。既に大戦の危機は遠ざかり、今の世の中、一番に危惧すべきは突発的に引き起こされる動乱、テロへの対処の筈。』
『それはまぁ、確かに。』
『その点に於いて、この改良型MSは非常に有利な機能を備えています。更に、従来型の機体は製造する段階でのコストは低いものの、一機が消費するエネルギー料は改良型の1.5倍。これはエネルギー資源の保全という面で重視すべき点かと。』
ーーアラタ殿、如何ですか?
明らかに可笑しかったあの時の二人の姿。
何より自分が一番引っかかっているのは・・・。
 「一体、何だったんだ?」
「え?」
呟いた自分の脇にて、書類の整理をしていた秘書官が首を傾げた。
これに苦笑しつつ、カガリは『いや、何でもない』と首を振る。
内心ではまだグルグルと思い遣りつつもだ。
そして繋がりふと思い出されてきたひとつの事に、もしや!と目を瞬いた。
それは転びそうになり、アラタに支えられて顔を上げたその先で見た翡翠色の双眸だ。
そう、あれは事故であり、アラタのあの行為は単なる義 務と善意に他ならないだろう!
それでも・・・?
妙にあの時の出来事が心に引っかかり、カガリはフムと一人ごちる。
「お疲れ様でした、カガリ様。」
その時、調印洩れも無かったらしい、秘書官が無事に政務の終了を告げた。
これに『あぁ』と頷き、そしてフウと小さく息をつく。
ドサリと椅子の背もたれへと寄りかかると、チラリと机の上にある時計に目を向けた。
世に付き合っているとか、まして恋人同士だとか、今だ公言出来無い関係。
極秘に、世間に知れないよう、互いの公務の合間を縫って、無理の無いように会うのが常だ。
だが・・・窓から外を見やれば、未だ明るい夏の夜。
カガリは其処でしばし思案する。
大体、アイツがあんな態度を露にするという事が、どうにもしっくりこないのだ!
それも公務の最中で?
まさか『彼』・・・アスランがあれだけの事に嫉妬した、とか?
・・・そんな訳は無いだろう!?
そう思いながらも胸の中、何とも言えないこそばゆさのようなモノを覚えて、やがて弾かれるように立ち上がると、カガリは執務室を出ていった。
胸に抱いた想いのままに、向かうは愛しい人の元へ・・・!

弾む鼓動をひた隠しつつ、ノックしたドアの向こう側。
だが期待した声は返って来ず、これにカガリは『あれ?』と首を傾げた。
確かに此処に居る筈だと、そのように聞き及んで来たのだが?
もう一度ノックをしてみたものの、結果は同じ。
耳を傍立ててみたものの、中からは物音一つしない。
どうしたものか?と僅かに迷い、だが一瞬後、カガリは『入るぞ!』と声を発してドアのオープンパネルを押していた。
シュンという音と共に開かれた空間内、まず目に入ったのがデスクの上の灯り。
というか、それ以外に辺りを照らす光は無く、落ちた闇の中、其処だけがはっきりとこの目に映った。
そしてその下に、艶やかな藍色の頭部が見えて・・・。
「アスラン?」
カガリは声をかけ、緩やかに彼へと近づいていった。
一瞬胸に『どうかしたのか?』という不安が過ぎったものの、直ぐにそれは掻き消える。
何故なら眼前、見つめたその顔つきは穏やかで、安定した呼気が感じられたからだ。
ホッとしたのと同時に、カガリは両目を細めた。
どうにも深い眠りについているらしい、今だ何の反応も見せないその姿!
此処の所ずっと改良型MSの件にかかりきりで、不眠不休であったからだろう。
カガリは彼の眠る顔を前に思わず微笑む。
そしてソッと歩み寄り、息を潜め見つめた。
久方ぶりに間近で見る姿に、普段は隠している感情が大きく膨らんでゆく。
男の癖に綺麗な肌、長い睫、そして形の良いその唇。
軍服のジャケットを脱いでいる為、インナーから覗く逞しい二の腕や、一見細身に見えるものの、広くがっしりとしている背筋や腰元等。
そんな彼を形造るモノ全てが、どうしようもなくこの胸を高揚させていく!
ソッと優しくその髪に手を伸ばした。
艶こそあれ、手触りはややコシのあるソレ。
するとこれには『ん・・・』と軽い反応があり、彼の顔がやや動いた。
些細なその反応にカガリは微笑み、そして今度はゆっくりと己の顔を彼へと近づけていった。
生来、甘い雰囲気を醸し出せるような性質ではない自分。
故に彼がいつも自分を求めてくれる事に、有り難い気持ちすら抱いている。
そう、この胸の中にはどうやら天邪鬼が棲んで居るらしくてだ・・・!
近づけたその頬は昼間の演習で焼けたのだろう、やや赤味がかかっている気がした。
その火照った肌に指先を滑らし、カガリは両目を細めた。
そして疲れて眠る彼の額にソッと口付ける。
胸の中で『お疲れ様だったな!』と唱えつつ、久方ぶりに触れたその肌に、深い喜びを噛み締めながら。
だが余程疲れているのだろう、それでもアスランは起きる気配を見せなかった。
これはエリート軍人たる彼には珍しい事だ。
「余程疲れてたんだな。」
思わずそう呟き、フッと苦笑をした。
そう、彼はオーブ軍の中で憧れの的たる存在。
隙あらばと、彼女の座を狙う女子は五万と居ると聞く。
想いのまま此処へやって来てしまったものの、これは正解であった。
彼のこんな姿を見れるのは自分だけ。
他のどんな女子にも見せたくは無い!
いや、見せて堪るかと、そんな独占欲が胸に思わず沸き起こる。
「って、これじゃあまるで、昼間のお前みたいだな?」
ふと思い至るのと同時に、カガリの中で浮かんでいた疑問が一つシュワと解けていくようだった。
どうやら、愛は盲目らしい。
そしてフフと苦笑する。
「ったく・・・。」
ジッと彼の寝顔を見つめ、カガリは知らず生まれた感情にはにかむ。
そう、些細な事にも愛情が加わると、それが時に人を黒くするようだ。
だから恐らく、昼間のアスランもきっと・・・。


やがて身じろぎ、緩やかに開いていった碧色の双眸。
その目に踊る喜びと、まるで昼間に感じた煌びやかな太陽のような熱さをカガリは覚えた。
そして覚醒後、僅かな遣り取りの後に性急に自分を求めてきた彼に、彼女は言い表しようの無い強い想いを身体に刻んだのだった

   この小説は2012年 8月19日。 
   インテックス大阪コミケにて販売されたアスカガアンソロ『サマー☆タイム』に寄稿
   その小説のカガリバージョンでした!

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