忍者ブログ

LOVE SEED

ガンダムSEEDファンブログ
NEW ENTRY
10 2024/11 1 23 4 5 6 7 8 910 11 12 13 14 15 1617 18 19 20 21 22 2324 25 26 27 28 29 30 12

11/24/13:10  [PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

05/29/09:32  陽だまりの仔 3

その日、朝から主人の様子は可笑しかった。
いや正確に言うならば、数日前からであろうか?
いつにも増してドタバタとしているその様に、俺は訝しい眼差しを向ける。
果たして、何が起こっているのやら・・・?


滅多に見ない真剣な面持ちで、主人は部屋の中を縦横無尽していく。
そして驚くべきスピードでもって、整然としていくリビング内。
「この雑誌はあそこに仕舞って!これは・・・!」
俺は動く主人を高場から眺めつつ、フムと独りごちた。
この状況はもしかしてもしかすると、来客があるのだろう。
しかしまぁ、こうまでして動いている主人というのは非常に珍しい!
余程気合が入っているとみえる。
面白可笑しく見物しながら、俺は前足を舐め、そして顔を拭いた。
いやはや、物で溢れかえっていた辺りがスッキリとしていく様は、実に爽快!
その快適性に、気持ちは上昇しつつだった。
・・・果たして、どんな来客であろうか?
ふと思い、俺はくねらせていた尾をパタリと止める。
そういえば、一度、主人と同じカイシャであるという、金髪に色黒な肌をした男がやって来た事があったな。
思い出した事柄に、一転、ブルルと背中の毛が逆立つ。
そうだあの日、何と相手の男は、あろう事か銀色の毛並みをしたギャンギャンと五月蝿いヤツを連れて来たのだ!
大きさは自分と然程変わらなかったものの、明らかに異種な生き物。
本当に思い出すだけでも身の毛がよだつ!
此処は俺のテリトリー内だというのに、やたら滅多ら『貴様は何なんだ!?図々しい猫め!』と五月蝿く吠えかかってきてだ!
『オイオイ、頼むぜイザーク。仲良くしろよな?』
宥めすかそうとする向こうの飼い主の言葉も虚しく、俺は止む無くベランダに退避した。
あんな事は二度と御免だ!
一転して鈍よりとした胸の中、俺はジトリと主人を見やった。
果たして、今日の来客はどんなヤツなのか?
「うわっ、不味い!もうこんな時間!?」
相も変わらずドタバタしている主人へと向かい、一つ大きな溜息が出た。
頼むぞ、おい?
伝わるわけも無いとは思いつつも、胸の中で呟かずには居られない。
そうしてカチコチと部屋の時計だけが、テンポ良く針を進めて行ったのだ。


ピンポーンと軽快に鳴ったインターフォンに、ピクリと俺は顔を動かす。
何とか掃除を終えてひと寛ぎしていた主人もまた、ハッとその身を起こしていた。
どうやら客が来たらしい。
「はいはい!」
今までに無い素早い動きでもって、主人は玄関へと向かっていった。
その姿に俺は大きく顔を顰め、一つ大きく息を吐く。
浮かれているのか、それとも緊張しているのか?
主人の様に、何とはなしに胸がざわめく。
「お邪魔致します。」
やがて凜としながらも柔らかな声音が聞こえ、ドアが閉まる音がした。
そして感じ伝わってきた不慣れな気配と匂い、歩み来る足音に、俺は意識を研ぎ澄ませる。
果たして、どんな奴がやって来たのか?
ジッと息を殺す自分の元、主人に続き目に入ってきたのは、まずふわりとそよぐ物だった。
ほわんとしたその者は、明らかに主人とは異種なる存在であろう。
そしてその合間から、丸くて鮮やかな瞳が煌き見えた。
「今日はお招き頂き、ありがとうございます。」
軽く微笑むその様は、実に柔らかかった。
やけにふわふわとしている存在だと思う。
「お言葉に甘えて、この仔共々やって来てしまいましたが、宜しかったでしょうか?」
実に和やかでおっとりとした感じで、その人は主人に向かい尋ねる。
まるで暖かな日に揺れるカーテンのレースみたいに、サラサラと零れ落ちる長い頭髪。
その外見に、思わず俺の警戒心も揺らいで行くようだったが・・・!?
・・・この仔とは、一体!?
麗らかな空気を纏うその人の手元を見れば、其処に見つけた一つの箱。
それに俺は一転、グッと大きく顔を顰める!
「それは!勿論!」
だが焦り見やった視界の先、其処には明らかに不審な主人が突っ立っていた。
ヤケにに崩れた顔つきで、『どうぞ?』とお気に入りのソファーを勧めるソイツ。
・・・何だって言うのか!?
俺は明らかに頼りにならないその様に、がっくりと首を項垂れる。
果たして客の持っている箱の中には、何が入っているのか!?
そしてただただその箱へと、俺は強い警戒心を抱きつつ、高場から二人の様子を見つめた。
「でも、本当に世間とは狭いものですわね。高校卒業以来、こんな風に再会しようだなんて!」
「うん、本当だね!」
「ヒビキさんは、ヘリオポリス大に行かれたのでしたね?」
「そう。ラクスは・・・プラント大だったよね!」
どうやら懐かしい仲らしい、軽く話題を弾ませていく二人。
ソツギョウしてから早6年、時が経つのは早いものですわね・・・とかなんとか、しみじみと口にしながらだ。
此処で俺がそういえばと思ったのは、ラクスと聞こえた名前にだった。
少し前にだったが、その名を聞いた気がする、と。
何はともあれ、主人はこの客に興味があるらしい。
先程から突っ立ったまま、彼女へと一途に目を向けているその姿。
「ごめんなさいね。私、あの頃はあまりヒビキさんの事は存じ上げなくて・・・。」
「いや。良いんだよ!僕は理系だったし、同じ高校ではあったけれど、君は特別な音楽科だったでしょ?」
「はい。」
「だから、僕の事を知らなくても全然普通の事だよ。」
でも・・・と客は目を細め、主人を見つめた。
「ヒビキさんは私の事を知ってみえたのでしょ?」
「う、あぁ・・・!」
此処で何故か主人は口篭り、そして目を逸らせた。
何か気不味い事でもあったのだろう、僅かに後頭部をかき上げながらだった。
「それは、まぁ・・・ね。」
「・・・?」
「君はさ、ラクスは・・・凄く人気があったから。」
「え?」
遠い目をしつつ、何かを思い遣るように顔を落とした主人は、一転、直ぐに顔を上げる。
そして彼女を再び見つめるとだった。
「そうだ!インスタントだけれど、珈琲と紅茶、どちらが良いかな?」
唐突にそう告げて、キッチンへと向かい歩き出す。
何と言おうか、今日の主人はやはり妙であろう。
俺は背を向けたソイツを見つめ、そしてソファーに座る彼女を見やる。
漂うは何とも言えない空気、これに髭がヒクヒクするようだったのだ。

 

拍手[2回]

PR

05/29/09:31  陽だまりの仔 2

アイツは一体・・・?
そんな疑問が頭に浮かび続ける中、普段通りの日々が過ぎていった。
ここの所天気は快晴。
何処か眠気を誘われる、そんな陽気である。


ピンポーンと不意に鳴った玄関チャイム。
これに我が家の主人はのそりと気だるげに反応を示した。
最近また夢中となっているゲームとやらに、ここの所かかりきり。
眩く光る四角い板に向かって、やたらと真剣な眼差しを向けている日々なのだが?
その最中での来客。
『ったく、こんな時に!?』と小さく呟き、主人は不機嫌極まりない顔つきでインターフォンの方へと向かっていった。
そして『はい』と素っ気無く応答する声が聞こえた。
俺は窓辺から飛び降りると、ほんわかしていた身体をゆっくりと伸ばし、主人の座っていたソファーへと飛び乗る。
其処には先程まで主人が触っていた四角い妙な物体が置いてあり、玄関へと向かっていくらしい足音を耳にしつつ、俺はそれをジッと見つめた。
先程まで五月蝿く耳を突いていた音は不思議と止み、見やった先、発光する四角い箱の中も静かなものだ。
フムと独りごちて、俺は再び目の前に転がる四角い妙な物体へと向き直る。
これに何か仕掛けがありそうだが・・・?
チラリと玄関の方を伺う。
そして普段から見かけている主人の行動に習い、試しに前足をその物体の一つの膨らみへと乗っけてみた。
だが残念な事に何も起こらない。
ならばと、隣の突起へと今度は手を伸ばしてみた。
だがこれもハズレらしい。
フムムと首を捻り、俺はエイとばかりにそれに飛びついてみた!
すると一瞬後、今度こそ見事に鳴り出した音と、箱の中の動く光。
これに『おお!』と胸が飛び跳ねた。
さてはて、一体何がどうなっているのかは分からない。
だが妙に高揚していく胸の内、俺はむやみやたらと突起を押しまくった。
だが何故だろう、しばらくすると聞こえていた高音が止み、四角い箱の中は一旦穏やかな様相を呈して・・・。
どれぐらいが経ったのだろう、パタパタと聞こえ近づいてきた足音に、俺はピクリと顔を上げた。
どうやら来客との遣り取りを終えたらしい。
やがて部屋の中へと戻って来た主人は、ゆっくりと此方を見やる。
その目に思わずギクリとなり、俺は身を固めた!
何となくだけれど、不味い気がしたからだ。
けれど・・・?
「はぁ・・・。」
奇妙に溜息をつくと、主人はその場に立ち尽くした。
一体、どうしたのか?
余程に不味い事をしてしまったのだろうかと、俺は思わず身を後ろへと引く。
「どうしよう。」
だが尚も飼い主はそのまま、自分を見るでもなく、寧ろ呆けた感じでいる。
これにホッとなりつつ、俺は顔を顰め『どうしたんだ!?』と啼いてみせた。
しかし主人は相も変わらず。
「こんな事って、本当にあったりするんだね・・・。」
そう呟き立ち尽くす。
これに俺は大きく顔を捻ったのだ。

 


どうやら誰かが隣に引っ越して来たらしい。
後で分かった事だが、先程の来客がソイツであり、その人間がどうやら主人の意識を混乱させたようだ。
あれからしばらく経ったが、何処か呆けた状態のまま、飼い主はむやみやたらと俺に話しかけてくる。
全く、何がどうなっているんだか?
「ラクス・クラインっていうんだ。」
貰ったらしいピンク色をした箱、それをにへらと見つめながら、主人は気持ち悪い声でそう呟く。
「アスランもさ、きっと気に入るよ?だって妖精みたいに可愛い女性なんだから。」
ヨウセイってなんだ?
俺はキモ主人を見上げながら思う。
というか、明らかに鼻の下が伸びているだろう。
見て感じるその様に、胸の中を呆れが突く。
「あぁ、もう・・・夢みたいだよね。まさか彼女とお隣になれるなんてさ!」
尚も未だ続く可笑しい呟きに、俺は愛想を尽かせて背を向けた。
これ以上聞いていられるか。
そうして先程の陽だまりへと、もう一度向かおうとしてだった。
「そういえば、彼女も猫を飼ってるって言ってたんだ。」
背に聞こえた主人の声。
それに微かに俺は振り向いた。
ネコとは自分達を呼ぶ別名だ。
つまり、新入りが此処にやってきたという事だろう。
呆けたままの主人からの情報に、俺はフッと思慮する。
頭の中に浮かんでいたのは、いつかの金色をした奴の事だった。
そしてこの数分後、ようやく正気に戻ったのだろう、主人の『うわっ!なんでゲームオーバー!?』という叫びが室内に木霊したのだ。


・・・陽だまりの仔に逢えるのは、もう数日後・・・。

 

 

拍手[2回]

05/29/09:29  陽だまりの仔 1

眩い陽の塊みたいなヤツを見つけたその日・・・。
空は何処までも澄み渡り、そして心は妙な高揚感に襲われていたのだ。


俺の名前はアスラン。
飼い主はくるんとした目の、甘い顔をしたちょっと危なっかしい男だ。
行動は、いつもその時任せ。
朝起きる時間だってバラバラで、何を考えて居るんだか全く分からない。
時折『うわっ!ヤバイ!』とか言って跳ね起きて、ボサボサの頭でドタドタと慌しく動き出し、尚且つ独りで叫びだす。
何で目覚ましが止まっているんだよとか、どうしてこういう時に限って寝坊するんだとか。
本当に訳が分からない。
というか、それは自分の行いが悪いからだろ?
傍で呆れた眼差しを向けてやるものの、当の本人は気付く素振りも無くて。
まあ、もうかれこれ5年の付き合いになるし、コレぐらいの事は慣れっこ。
どれだけ慌てていようが、俺のご飯や世話だけはしっかりしてくれる、その点だけでも高く評価してやるべきだろう。
そうして今日も、飼い主は嵐の如く家を出て行った。
『ごめん!時間が無いからもう行くけれど・・・はい、御飯だよ!』
ちゃんとしっかり食べてね?
そう言い残していった男へと、俺は胸の中でこう思っていた。
はいはい、分かっているから、早く行けよ?と。
そして俺は置かれたご飯食べながら、ルーズな飼い主を思い遣る。
今頃は何をしているだろうかと。


そんなこんなで、独り静かな朝食後、俺はいつも飼い主が使っているデスクの上へと飛び乗り、其処に置いてある様々な道具を眺め見ていた。
詳しくは分からないが、飼い主はこれ等の物を使って、奇妙な物を生み出すのだ。
カタカタしゅるしゅると、実に軽快に動く生き物を。
残念ながら匂いは無くて、どうやら食べれるものでは無いようなのだけれど。
『ほら出来たよ!アスラン、行くよ!』
そうして飼い主は、出来上がったソイツを床の上に置く。
するとカタカタ、時にしゅるしゅるという音を立てながら、ソイツは床の上を素早く動き回るのだ。
それを捕まえたって何の得にもならないとは承知の上。
けれどどうしても、そう、なんとも言えずソイツの動きが意識に障るから・・・!
目の前を横切ろうとした一瞬の間に、俺はソイツへと飛び掛かかる。
そして見事に拿捕!
次いで渾身の右パンチを喰らわせてやるのだ!
『うわっ!アスラン凄いね・・・まさに瞬殺!』
おかげでジージーと奇妙な音だけを立てながら、ソイツは再起不能。
可笑しな格好で床に寝そべる羽目に陥る。
正に、怖れるに足らぬ相手!
とはいえ、何故かその後も飼い主の手によって生き返り、何度かリベンジを謀ってきたりもするから!
一体全体、飼い主は此処で何をどうして居るのか?
俺としてはソレが凄く気にかかっているのだ。
しかしまぁ、何とも言えず煩雑な机の上。
あっちこっちに散らばっている道具の数々に、思わず溜息が出る。
よく見て歩かないと、酷く尖った物体さえも転がっている。
ちょっとだけ片付いている(というか、空いていた)スペースにて腰を下ろすと、目を細めて辺りを見やった。
正に困った飼い主だ。
そんな風に思いつつ、ゆっくりと顔を動かして・・・。
ふと窓辺へと意識が向いて、俺は其処から外を見つめた。
今日は快晴。
実に見事な青空がチラリと垣間見える。
もう少しこの場所を偵察したらば、いつもの日の射し込む一角にてのんびりと昼寝でもするとしようか?
思わずそんな算段をしつつだった。
ん?と何となく気を引かれ、俺はその窓辺へと近づいていった。
外に小さなテラスが覗ける其処は、壁伝いに隣から繋がっている。
そして今其処にはだった!
・・・誰だ!?
ふわふわほわんとした金色をした毛並みが、チラリとこの目に映って見えた!
思わずグッと身を乗り出し、ソイツを凝視する。
何者だろう?
心地良さ気に身を丸め、俺のテリトリーに入り込んで居る奴は!?
・・・コイツは一体?
見たこともないヤツだった。
今まで生きてきた中で、そう、時折ケンシンとかいう名目で向かうドウブツビョウインとかいう場所でも見たことが無い。
何とも言えず柔らかそうな毛並!
まるで降り注ぐ日の光から生まれたみたいだと思えた。
近寄ったらば芳ばしい匂いがするのではないだろうか?
ふとそんな風にさえ思い、俺はただただソイツをジッと見つめて・・・!
直後、何かを感じたのだろう。
ソイツの耳がピクリと動き、そしてその顔を上げた。
そして辺りの気配を伺うようにゆっくりと見やり・・・俺を見つける!
刹那にドクンと鼓動が鳴っていた。
ああ、何て・・・?
言葉にならないぐらい、真っ直ぐに射し込んで来たソイツの瞳。
あろうことか、その目さえも陽の色で!
正に空から舞い降りてきたかの如く、眩くこの目に映って見えた!
けれどこの逢瀬は一瞬にして終わりを告げる。
ボウっと見つめて居た俺の視線の先、ソイツはくるんと顔を戻し、スッと身を起こした。
そしてゆっくりとテラス伝いに歩み去っていく。
そして見事な印象だけを俺の中に残して、姿を消したのだった。

拍手[2回]

05/16/00:04  desire

求めよ、さらば与えられん。
これは異国の聖書の中に書かれてある、有名な一節だ。
確か「天の父は、あなた方に必要なものはとっくにご存知だ。それらは願わずとも与えられる」という意味の言葉だった筈。
しかと見届けてくれている神の御許、私達はただその存在を信じ、欲を求めるな・・・という事らしいが?
昼下がりの自室内、私は長閑な風に吹かれながら窓辺に佇む彼を見つめながらふと思う。
今日は気持ちの良い快晴。
外からは輝くばかりの陽光が射しこみ、本を片手に知らぬ間にうたた寝をし始めている彼の頬を照らしている。
私は立ち上がり、その直射から彼を救うべく窓辺へと移動していった。
そしてカーテンを引き、振り返り・・・。
・・・気持ち良さそうに寝てるな。
彼の和やかな顔つきに、ホッと胸が和んだ。
普段は軍属、それ故に厳しい顔つきをしている事が多々有りだから。
こうして身も心も解いた状態の彼を前に、私は目を細める。
・・・ちゃんと、休める時には休んでいるんだろうな?
久々に二人で合わせられた休暇、だが普段は互いにやるべき事、成すべき事に追われる日々だ。
普通の彼氏彼女であるならば、忙しい相手の事を心配して、普通に気遣ってやったりも出来るのだろうけれど・・・。
そうも出来ない自分は、思わずホウと深く息をつく。
・・・疲れていたのか?
胸の中で尋ね、彼の顔をジッと見つめる。
昔から白く滑らかなその肌、だが以前とは違い少し無骨さが感じられる其処に降りかかるは、濃紺色をした艶髪。
実に見目良く整った様からは想像できないぐらいに、しっかりと逞しい身体つきをしている彼。
「アスラン・・・。」
名を呼び、ソッと片手を伸ばした。
そして彼の唇へと人さし指をソッと宛がい、甘く見つめた。
出会ってから早十数年。
幾多の困難を共に乗り越えやってきた、この胸に棲まうたった独りの人。
「大好き・・・だからな?」
気恥ずかしさが胸に込み上げたものの、意識の無い彼に安堵しつつ、そのまま、私は額へとキスを落としていった。
触れた温もりに愛おしさが込み上げる中、瞑られた瞳を見やり、今度は軽く唇へとソレを落とす。
鼻腔に感じた彼の匂いにしっとりと名残惜しさを覚えつつ、私はゆっくりと身を離していく。
だが・・・!?
「それだけ?」
ギョッとして目を向ければ、其処には透き通った翡翠色の双眸が開き、自分を見つめていた!
『な!』と驚き、後ろへと仰け反ったものの、いつの間にであろう、腰元を抱えるように支える彼の手にままならず。
逆にグイと引寄せられたこの身は、彼の顔元にグンと迫る!
「おっ、起きてたのか!?」
思わず声を荒げそう問いかければ、『いいや』という答えが返ってきた。
彼の目元に浮かぶは、愉悦に満ちた笑み。
「今起きたんだ。」
キスで・・・と含みのある笑みを湛えそう述べた彼に、私はキュウと唇を噛んだ。
ば、馬鹿!と捻くれた言葉を胸に浮かべつつも、自分を見つめる愛しい人の視線にそれを飲み込んで。
「お、起こして悪かったな・・・。」
モゴモゴと視線を逸らしそう言ってやれば、彼はしばし沈黙、それからフッと苦笑したようだった。
そして『カガリ?』と愛しい声で呼ぶ。
この声にソロリと顔を戻せばだった。
伸びてきた熱く大きな手が、ソッと私の頬を捕らえた。
そして再びグイと引寄せられ、鼻と鼻とが引っ付くぐらいの距離にて、自分をジッと見つめてきた彼の瞳。
顔がカァと火照っていった。
な、何だよ!?
そんな風にやさぐれる意識の中、強く切に射しこんで来る翡翠色の視線。
これに嗚呼と脳が痺れ、体が制御能力を失っていくようだった。
繋がりあうその部分から、感覚中枢が麻痺を起こす。
やがて嬉しさに、素直に戻り行くこの胸!
そう、今は・・・こうして彼と共に居られる、この時だけは、この心を曲げずに居たい!
そんな風に思うから!
「ア・・・スラ・・・。」
ソッと彼の名を呼ぶ。
まるでそれは何かの呪文のように、甘く切ない声で。
・・・もっと・・・。
沸き起こるは、心の奥からの想い。
いや、女としての欲望だろうか。
・・・もっと、貴方が欲しい・・・!
「カガリ・・・。」
応える様に己の名を呼んだ愛しい人に、私は再び緩やかに顔を近づけていった。
心に強い欲望を抱きつつ。

・・・求めよ、さらば与えられん。

そして愛しい人の腕の中、彼の口元を貪りつつ、彼女はこう思っていた。
私は無欲でなど居られない、と。
為政者とて、神の教え通りには生きてはいけるわけがない。
だって求める事にこそ真の喜びがあり、そして人としての本能があるのだろうから。
神よ・・・いや、ハウメアよ!
こんな私にも、どうか御加護を!
そして昼下がりの一室にて、彼女はやがて彼と一つに重なっていた。
白い肢体を陽の下に曝して・・・。


                          


                         desire   ~完~

最後までお読み頂きありがとう御座います!
 
ツイッターにて、時間制限付きで二次創作!という企画があったので便乗してやってみようと思い、書いたSSです。
しかし15分制限にしたので、残念ながらタイムオーバー。
描きかけ(未完)で終わるのもどうかと思えて、此方の方に仕上げてUPしてみました。
久々に甘々なアスカガ^^
間もなくキラカガバースデーという事もあるので、その前祝いという感じで書きました!
フライングではありますが、当日に記事が書けるかどうか分からないので最後に一言。
『カガリ&キラ、お誕生日おめでとうー!』


  







拍手[11回]

11/18/15:50  PC内から発見した・・・

ふと発見したSSです。



ダウンロード(txt)

拍手[2回]