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05/29/09:32  陽だまりの仔 3

その日、朝から主人の様子は可笑しかった。
いや正確に言うならば、数日前からであろうか?
いつにも増してドタバタとしているその様に、俺は訝しい眼差しを向ける。
果たして、何が起こっているのやら・・・?


滅多に見ない真剣な面持ちで、主人は部屋の中を縦横無尽していく。
そして驚くべきスピードでもって、整然としていくリビング内。
「この雑誌はあそこに仕舞って!これは・・・!」
俺は動く主人を高場から眺めつつ、フムと独りごちた。
この状況はもしかしてもしかすると、来客があるのだろう。
しかしまぁ、こうまでして動いている主人というのは非常に珍しい!
余程気合が入っているとみえる。
面白可笑しく見物しながら、俺は前足を舐め、そして顔を拭いた。
いやはや、物で溢れかえっていた辺りがスッキリとしていく様は、実に爽快!
その快適性に、気持ちは上昇しつつだった。
・・・果たして、どんな来客であろうか?
ふと思い、俺はくねらせていた尾をパタリと止める。
そういえば、一度、主人と同じカイシャであるという、金髪に色黒な肌をした男がやって来た事があったな。
思い出した事柄に、一転、ブルルと背中の毛が逆立つ。
そうだあの日、何と相手の男は、あろう事か銀色の毛並みをしたギャンギャンと五月蝿いヤツを連れて来たのだ!
大きさは自分と然程変わらなかったものの、明らかに異種な生き物。
本当に思い出すだけでも身の毛がよだつ!
此処は俺のテリトリー内だというのに、やたら滅多ら『貴様は何なんだ!?図々しい猫め!』と五月蝿く吠えかかってきてだ!
『オイオイ、頼むぜイザーク。仲良くしろよな?』
宥めすかそうとする向こうの飼い主の言葉も虚しく、俺は止む無くベランダに退避した。
あんな事は二度と御免だ!
一転して鈍よりとした胸の中、俺はジトリと主人を見やった。
果たして、今日の来客はどんなヤツなのか?
「うわっ、不味い!もうこんな時間!?」
相も変わらずドタバタしている主人へと向かい、一つ大きな溜息が出た。
頼むぞ、おい?
伝わるわけも無いとは思いつつも、胸の中で呟かずには居られない。
そうしてカチコチと部屋の時計だけが、テンポ良く針を進めて行ったのだ。


ピンポーンと軽快に鳴ったインターフォンに、ピクリと俺は顔を動かす。
何とか掃除を終えてひと寛ぎしていた主人もまた、ハッとその身を起こしていた。
どうやら客が来たらしい。
「はいはい!」
今までに無い素早い動きでもって、主人は玄関へと向かっていった。
その姿に俺は大きく顔を顰め、一つ大きく息を吐く。
浮かれているのか、それとも緊張しているのか?
主人の様に、何とはなしに胸がざわめく。
「お邪魔致します。」
やがて凜としながらも柔らかな声音が聞こえ、ドアが閉まる音がした。
そして感じ伝わってきた不慣れな気配と匂い、歩み来る足音に、俺は意識を研ぎ澄ませる。
果たして、どんな奴がやって来たのか?
ジッと息を殺す自分の元、主人に続き目に入ってきたのは、まずふわりとそよぐ物だった。
ほわんとしたその者は、明らかに主人とは異種なる存在であろう。
そしてその合間から、丸くて鮮やかな瞳が煌き見えた。
「今日はお招き頂き、ありがとうございます。」
軽く微笑むその様は、実に柔らかかった。
やけにふわふわとしている存在だと思う。
「お言葉に甘えて、この仔共々やって来てしまいましたが、宜しかったでしょうか?」
実に和やかでおっとりとした感じで、その人は主人に向かい尋ねる。
まるで暖かな日に揺れるカーテンのレースみたいに、サラサラと零れ落ちる長い頭髪。
その外見に、思わず俺の警戒心も揺らいで行くようだったが・・・!?
・・・この仔とは、一体!?
麗らかな空気を纏うその人の手元を見れば、其処に見つけた一つの箱。
それに俺は一転、グッと大きく顔を顰める!
「それは!勿論!」
だが焦り見やった視界の先、其処には明らかに不審な主人が突っ立っていた。
ヤケにに崩れた顔つきで、『どうぞ?』とお気に入りのソファーを勧めるソイツ。
・・・何だって言うのか!?
俺は明らかに頼りにならないその様に、がっくりと首を項垂れる。
果たして客の持っている箱の中には、何が入っているのか!?
そしてただただその箱へと、俺は強い警戒心を抱きつつ、高場から二人の様子を見つめた。
「でも、本当に世間とは狭いものですわね。高校卒業以来、こんな風に再会しようだなんて!」
「うん、本当だね!」
「ヒビキさんは、ヘリオポリス大に行かれたのでしたね?」
「そう。ラクスは・・・プラント大だったよね!」
どうやら懐かしい仲らしい、軽く話題を弾ませていく二人。
ソツギョウしてから早6年、時が経つのは早いものですわね・・・とかなんとか、しみじみと口にしながらだ。
此処で俺がそういえばと思ったのは、ラクスと聞こえた名前にだった。
少し前にだったが、その名を聞いた気がする、と。
何はともあれ、主人はこの客に興味があるらしい。
先程から突っ立ったまま、彼女へと一途に目を向けているその姿。
「ごめんなさいね。私、あの頃はあまりヒビキさんの事は存じ上げなくて・・・。」
「いや。良いんだよ!僕は理系だったし、同じ高校ではあったけれど、君は特別な音楽科だったでしょ?」
「はい。」
「だから、僕の事を知らなくても全然普通の事だよ。」
でも・・・と客は目を細め、主人を見つめた。
「ヒビキさんは私の事を知ってみえたのでしょ?」
「う、あぁ・・・!」
此処で何故か主人は口篭り、そして目を逸らせた。
何か気不味い事でもあったのだろう、僅かに後頭部をかき上げながらだった。
「それは、まぁ・・・ね。」
「・・・?」
「君はさ、ラクスは・・・凄く人気があったから。」
「え?」
遠い目をしつつ、何かを思い遣るように顔を落とした主人は、一転、直ぐに顔を上げる。
そして彼女を再び見つめるとだった。
「そうだ!インスタントだけれど、珈琲と紅茶、どちらが良いかな?」
唐突にそう告げて、キッチンへと向かい歩き出す。
何と言おうか、今日の主人はやはり妙であろう。
俺は背を向けたソイツを見つめ、そしてソファーに座る彼女を見やる。
漂うは何とも言えない空気、これに髭がヒクヒクするようだったのだ。

 

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