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01/02/05:41  曇りのち晴れ

いつもと同じ日常、追われるように続く、こなすべき分刻みのスケジュール。
手元の資料に目を向けながら、カガリはふと米神に手を当てた。
変わらない日々というのは、存外に貴重なモノだ。
でも・・・とそんな事を考え、眉根を寄せる。
時は12月の末、色々と忙しない事この上のない時期である。
「以上のような事を含めて、議会にての採決を願いたいと。」
話している者の姿をチラリと見やり、私は『分かった』と端的に答えた。
そして見事なまでに纏められた報告書に嘆息しつつ、目の前に立つ軍部上官へと向かい労いの言葉をかける。
「この報告書を元に、次回の議会にて採決を図ろうと思う。」
ご苦労だったな。
そう告げれば、それまで事務的であった形の良い男の眼差しがフッと緩んだ。
いえ、と否定した後、僅かな沈黙、そしてその瞳が自分を真っ直ぐに見つめてくる。
心に染み入る、綺麗な透き通ったその目。
本当に、何処まで整った様をしているのだかと、思わず苦笑しそうになった。
コーディネーターだからとは言わないが、あまりに美しいその造形。
想いが繋がった今となっては、多少捻くれた感情が生じたりもするというものか?
常に自分だけを見て居るわけにはいかない、彼にも彼なりの生活があるのだから・・・。
耳に入ってくる噂話は、時にこの胸を焦がす事もある。
オーブ軍広報内では、そんな彼のスター性を重視して、新規兵士募集の広告に起用したいという旨も聞き及んでいる。
まぁ、当の本人がそういう事に後ろ向きであるのが唯一の救いであろうか。
そんな事を思いつつ、自分に向かい、一礼をして踵を返したその者の背をジッと見つめた。
軍歴十数年の鍛え上げられた体躯、だが均整の取れたその背筋は決して無骨には見えず、軍服越しに整然としたシルエットを描きだしている。
更にその下、肌理細やかな素肌を知っている自分としては・・・思わずフウと一つ吐息が零れ出た。
これでは意識をするなと言う方が無理であろう。
何しろあの目、あの身体、そしてあの頭脳と仕草とあの声だ!
女を惹きつけて止まないに決まっている。
いや、放っておかれるわけが無い。
「わざわざご苦労だったな。」
これは先程も告げた言葉であった気がする。
でも自分は彼へとそう述べて、足を留めてゆっくりと此方を振り返り見るその者をジッと見つめた。
そして――アスラン、と胸の内で名を呼んだ。
すると何故だろう、既にドアの面前ぐらいまで進んでいた彼が、そのままジッと此方を見つめ返してきて。
「代表?」
そう問いかけられた気がする。
何だ?
私は目を瞬き、再び胸の内で彼の名を呼んだ。
だが可笑しい事に、それまで自分に届いていた音という音が消え去り、視野に黒いヴェールのようなものがかかりだす。
直後にツキンとした痛みが頭の中に走り、まるでシンバルの如き音が脳内を覆った。
「代表!?」
誰かが大きくそう呼ぶ声だけが耳に聞こえたものの、私は両手で額を押さえ俯いた。
そして辺りは闇に包まれる。
この後にどうなったのかは分からない、正に前後不覚の出来事であったのだ。
  

   

薄っすらと浮かび上がっていった意識の先、ぼんやりと見えたのは、まず馴染み深い天井だった。
あれ?と思い一旦目を瞬き、もう一度しっかりとソレを目に映しだす。
軽い違和感が胸に生じ、そして此処はアスハ邸か?と辺りに目を向けた。
間違いない。
だがどうして自分は自室で寝ているのだろう?
近くの窓へと目を向ければ、其処は既に薄闇の中。
どうやら時間の感覚も狂っているらしい。
薄っすらと思い起こした記憶の中、其処は明るい昼間であった気がするのに?
そう思いゆっくり身体をうごかそうとすれば、どうにも鈍く重い頭の中。
これに顔を顰め、私はソッと片手を額に宛がった。
どうしたのだろう?
そして鈍い頭の中、必死で記憶を手繰り寄せようとする。
「気が付いたか?」
だが此処で突如として脇から聞こえた声音に、私は驚き顔を向けた。
見ればベッドサイド、その壁際にある椅子に腰掛けている人が一人!
気付かなかったが、彼は其処でジッと自分の様子を見ていたらしい。
手にしていた本のような物をサイドテーブルへと置くと、立ち上がり此方へと歩み寄ってくる。
そして流れる動きでもって、額に乗せられた彼の手。
「まだ熱があるな。」
ポーっと高揚していくような頭の中、私は目の前のアスランをただただ見つめた。
そう言われてみれば、このモヤリとした嫌な感覚は熱の所為だろうか?
考えた瞬間にツキンと頭が痛み、両目を瞑った。
久々に風邪をひいたのか?
「今は・・・?」
何時なのか?
覚醒したばかりで舌が乾いている、掠れる声でそう問えば、彼は午後6時だと答えた。
確か行政府の執務室に居た時は午後1時ぐらいであったから、相当な時間が経っている。
「あの後・・・?」
私はどうなったんだ?
そう尋ねれば、彼はフッと顔を緩めた。
そして額に乗せられていた手が、優しく頭部を撫で、そして頬へと移動していく。
「大丈夫だ。後の事はちゃんとフォローされているから。」
とにかく今は、しっかりと身体を休める事が先決だ。
柔らかい声音でそう言われれば、思わず両目が細まった。
見つめるその瞳にだろうか?
触れられた頬が、何とはなしに熱くも感じられて。
「うん。」
目の前の彼へと向かい、とりあえず頷きそう述べた。
恐らく多くの者の手を煩わせてしまった事だろう。
それを遺憾ともし難く思いつつ、やはり何より眼前に居る彼の姿に胸が弾む。
「そういうお前こそ、大丈夫なのか?」
そして気になった事柄を口にしていた。
今が午後6時ならば、彼はまだ軍部に居る時間である。
彼の配下の者達の事を考えれば、其方の方が心配になった。
自分はとりあえず此処で休んでいるから、こなすべき仕事をこなしてこいよ!と。
 頭がほんのりボウッとするようで、けれどもこれぐらいならば・・・と、気取られぬよう強気に微笑んでみせる。
これに彼は一瞬奇妙に沈黙した。
そしてあの翡翠色の双眸を細くして、寝転ぶ私をジッと見つめてくる。
「アスラン?」
不思議に思い、彼の名を呼べばだった。
「俺の事よりも、自分の事を心配しろよ?」
「って・・・え!?」
「軽く肺炎になりかけていたそうだ。」
唐突に告げられた病状に、目を瞬く。
肺炎!?
そして驚き胸元に手を当てた。
よもやそんな病にかかっていようとは!?
ああ、でも、成る程、だからか常よりも体が重くしんどいのは。
「だから、くれぐれも無理は禁物だ。」
「そっか・・・。」
神妙なその声に頷き、私は一旦両目を伏せた。
やがてソッと目を見開き、彼を伺うように見つめればだった。
「全く・・・!」
「え?」
そう言うと、何処か怒ったような笑みを浮かべつつ、ジッと私を見つめてきた彼。
その目に、トクンと胸が跳ねる。
「アスラン?」
私は名を呼び小首を傾げた。
すると彼の目は細くなり、と同時に、ソッと額に落とされたキス。
そして甘く優しくしっかりと抱きしめられて・・・!
これに熱の所為でなのか、それともアスランの所為でなのか、判別出来ない程に頭の中が真っ白になっていく。
「俺は此処に居るぞ!」
更にボソリとそう告げて、私をより強く抱きしめてきた彼。
その姿にしっとりとこの胸は満たされ、密かに蓄積していた粗野な気持ちも霧散していくようだったのだ。

 
やがて彼が教えてくれたのは、嘘か誠か、正に赤面するしかない、倒れる直前からその後の私の行為。
自分では胸の内だけで呼んでいたつもりなのに、実際に私は彼の名前をうわ言で何度も口に出して呼んでいたらしい。
「う、嘘だろ?というか、記憶に無い!」
どこか愉快気に話す彼に、それが真実なのか否か、その場に居た補佐官等に確認を取るわけにもいかず、真実は今だ謎のまま。
ただこの事件の後しばらく、彼が思いの他上機嫌であった事、それから補佐官達の目が、何となくだがそれまでと違って見えた事、これは紛れも無い事実であったのだ。

 

                       ~曇りのち晴れ  完~

                    
  

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