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03/07/15:03  花橘の重ね 番外編 ~ある日の二人~

これは平安時代をもじったアスカガ話『花橘の重ね』の番外編です。
本編は、以前にあったHP喪失と共に不掲載です。
なので 簡単なあらすじを・・・。
・・・右大臣ザラ家の子息アスランが、左大臣アスハ家のカガリ姫の事を宮中の管弦の儀にて見初めた事から始まったラブストーリー。
突如としてアスハ家のカガリ姫の元へと夜這いをかけに行った彼でしたが、残念ながら不発に終わってしまう。
 そこで改めて文を出し、会いに行く旨を伝えれば、行き後れになるのを怖れた父君ウズミの手筈で、今度こそ(父に罠に嵌められた)カガリと会い見える事が出来た!
そのまま、有無を言わせず想いを成就させようと思っていたアスランだったが、彼女の弟キラの出現により、願いは叶わず。
この後、不運にも宮中よりの任務でひと月程、都を離れてしまう。
対するカガリはというと、最初こそ夜這いを仕掛けてきた不埒な男だと蔑んでいたものの、実際にこの目にしたアスラン、その秀麗さと、彼の熱い想いに胸打たれ、気がつけば恋患うようになっていた。
だが残念ながら、待てど暮らせどアスランからの便りは無く、これはもはや呆れられ気移りされたのだろうと落ち込んでしまう。
そして折良く(というか、父君としては一刻も早く良き縁を組ませようと)宮中への出仕の話が舞い込み、カガリはアスランを忘れる為にもとこれを了承。
やがて明後日には出仕という時、独り庭園を歩いていたカガリの前に、任務より戻ったアスランがいきなり現れて・・・!
すったもんだの末に、互いに想いが通じ合い、果れて相思相愛の仲となる。
直ぐにでも、婚礼の儀を・・・と意気高揚したアスランだったが、しかし時遅く、カガリは宮中へと出仕をせねばならない身の上。
そこで(止む無く)3か月の宮中務めを経て、彼女と夫婦になる事にした。
そしてこの話は宮中、カガリが出仕している最中の出来事です。







笑う彼女の姿を見れば、この胸も自然と明るくなる。
逆に沈んだ顔を見れば、切なくもなる。
以心伝心とはよく言ったもので、これ程に心を持っていかれようとは自分でも思いもしていなかった。
彼女は恥じらいこそするものの、妙に自分を誇示して見せたりすることも無い。
その言動は一見斬新に映るが、俺には心地良く暖か味を感じさせる。
一目惚れから始まった間柄、とはいえ既にまるで自分の一部であるかのごとく、いつ何処に居てもその存在が気になった。
そしてその日はたまたま、何の約束も取り付けては居なかった。
ただ物忌みによる欠員者が多く復帰してきた為、連日内裏に忙しく務めていた俺は急遽暇を得る事が出来たのだ。
当然真っ先に向かおうと思ったのは彼女の元であり、その驚く顔を想像しつつ足を向けた。
とはいえ未だ日も高い正午過ぎ、表向きは内裏内の警護を装い、ひっそりと忍ぶようにしてだ。
彼女は今頃、何をしているだろうか?
考える度にほくそ笑み躍る胸で、シホ姫の居る殿の傍まで到達した時だった。
足早に通り過ぎようとしていた俺へと、ふと御簾越しに声がかけられた。
「あら、アスラン様?」
驚き足を止め、袖で顔を隠しつつゆっくり振り返れば、『私です。ミリアリアです。』と聞こえた。
これに俺はホッとしつつ袖を下ろした。
面識こそ無いものの、カガリの同僚であろう女性だったからだ。
「こんな時間に、どうかされたのですか?」
「いえ・・・その、突然に体が空いたもので。」
とはいえ、言葉を返しつつも滅多に話さない相手なだけに、俺は正直戸惑っていた。
だが彼女は気にかけない様子で、ハキハキとした声音で話を続ける。
「あらまあ!それは何とも羨ましい限り。想いの丈が分かるというもの!」
「いや、あの・・・。」
「本当、アイツにも爪の垢を煎じて飲ませてやりたいぐらいだわ。」
呟き聞こえたその一言に、俺は思わず苦笑いを浮かべた。
彼女の言うアイツとは、勿論ディアッカの事であろう。
彼は自分と同じ武官であり、そしてミリアリアの恋人なのだ。
しかしどうにも女の噂が耐えない奴で・・・とはいえ、此処最近は彼女一筋であるような、そんな気がしているのだが?
何かしらの事が二人の間にあったのかもしれない。
そんな風に予測しつつ、自分にそんな事を言われても困ると、俺が口篭っていればだった。
「うふふ、一刻も早くカガリの元へと向かいたいって顔をしてみえますよ?」
「え・・・あ、いや。」
彼女はクスクスと笑い声を挙げた。
「でも、カガリならばついさっき来客があって、残念ながら未だ話し中だと思います。」
「え?来客?」
誰だろう?キラだろうか?
カガリの元を訪れる者といえば、最初に思いついたのが弟であるアイツの顔だった。
『誰が・・・?』と呟いた俺を前に、ミリアリアは『えーっと、確か』と何かを思い出すかの如く思案する。
「シホ様とも仲の良い、うーんと、ほら!あの方の名は・・・!」
「??」
「あぁ・・・駄目ね、彼の御名前が思い出せないわ。」
「彼!?」
考え込むようにしながら発せられた彼女の一言が、自分の耳に強く残った。
どうやらキラではないようだ。
シホ様と仲が良いという男子で、カガリの元を訪れているという、その者は一体誰なのか!?
「あ、ちょっと、アスラン様?」
「すまない。ちょっと急ぎます。」
一言そう断ると、俺は何とも落ち着かない胸を抱え、先へと足を進めたのだ。
 



忙しなく歩きつつ、頭の中で思うこと。
果たして、彼女の元を訪れているという男とは一体誰なのか?
それがどうにも気になって仕方が無かった。
というのも、実は最近、公達の間で噂となっている事があると、そういう方面に詳しい奴・・・ディアッカから耳にしたばかりだったからだ。
中宮妃の元に出仕したという金色の眩い姫。
アスハ家深層の姫君という箔も付いてだろう、そんな彼女を目にしようと、妙な画策をしている輩が居るとかなんとか。
・・・冗談ではない!
この話を聞いて、身も心も(ようやく)通じた自分としては、如何ともし難い想いがこの胸に沸き起こった。
不埒な輩に彼女が近づこうだなどと、想像するだに虫唾が走る!
・・・そのような事が無いようにもだ!
偶然にも都合のついた今、こうして彼女の元へと馳せ参じて来た理由は其処にも有る。
それなのに!?
(自分を差し置いて)既に誰かが(それも男が!)来訪しているらしいという状況を耳にして、気持ちは自然焦りを帯びる。
そして人目を憚る余裕すら無く、俺は乱れた気持ちのまま彼女の元へと向かっていった。

やがて辿り着いた女房部屋付近。
廂(ひさし)の間よりソッと室内の様子を覗い見れば、仕切りとして置かれた几帳の群れの中は静けさが漂い、パッと見には人の気配は感じられなかった。
どうやら多くの女房は勤めの最中らしい、下手に騒がれないのは幸いだ。
しかし当の彼女は何処に居るのだろう?
先程のミリアリアに手引きを願えば良かったと、この時になってようやく思い、しばし視線を彷徨わせていればだった!
ふと中から微かな笑い声が聞こえ、これに俺はハッとなる。
今の声は!
思わず弾んだ胸の鼓動。
そして意を決して、足音を忍ばせながらゆっくりと室内へと入り込んでいった。
どうやら奥まった所に居るらしい、やがて衣擦れの音が微かに聞こえ、ささやかながら会話する声も耳に入ってきた。
だが同時に、聞こえてきた低い笑い声に心は逼迫。
俺はギュッと両手を握り締め、一つ大きく息をついた。
落ち着け、落ち着くんだ。
『これで良いのか?』『そうそう、そのまま』『こんな感じか?』『そうだ、やれば出来るじゃないか』などと。
それは男女二つの声音であり、一方は間違いない、自分が会いたくて堪らずに居る彼女のモノ。
だがもう一方は・・・!?
「そうだ、そのまま。うん、そうして。」
「う~ん、難しいな。こうか?」
「そう、それで良い。」
本来、こんな風に人の会話を盗み聞きするのははしたない事であろう。
だがこの時の自分には自制というものが吹き飛び、頭の中は真っ白!
「わ、凄い!」
「あぁ、良く出来たな!」
「もう、いつまでも子供扱いするなよ!私だって、これでも充分・・・!」
「はは。もう大人の女だって?」
目隠し用にと置かれた幾重にも連なる几帳の先、其処から聞こえてくる会話に、この胸はどんどんと余裕を失くしていく。
・・・果たして、今、この奥で何が行われているのだろう!?
口の中がカラカラに乾いていた。
抽象的ながら、男が何をか彼女に教えているような、そんな状況!
・・・果たして、今、カガリはソイツと何をしているのか!
聞いた事があるような無いような、そんな男の声だった。
とにかくソイツと彼女とは実に親しげに話している。
そう、まるでキラにでも話しかけて居るかのようにだ!
そしてそんな男女の声を耳に、今までこの目にしてきた愛しい彼女の姿、表情が、何故か走馬灯のように脳裏に浮かんでくる!
初めて言葉を交わした時の事。
あの柔肌にこの手で触れた日の事。
怒った顔、泣いた顔、笑った顔、恥らう顔。
そして痺れと同時に胸の奥がグッと一際引き締められた後、カッと強い怒りが込み上げてきた!
俺は手前にあった几帳を片手で強く掴むと、奥へと薙ぎ倒した。
派手な音と共に、縺れるようにその奥の几帳もまた倒れ、そして巻き起こった風と共に開けた視界!
「カガリ!?」
怒りを露に、俺は叫んでいた。


「大変に失礼を致しました。」
頭を下げ、目の前に座る人へと許しを乞う。
彼は朗らかな含み笑いを浮かべつつ、『いやいや』と首を横に振った。
更に『そんなに気にする事は無いよ』とアッサリとした口調で述べた。
「寧ろこんな風に気色ばんで、思わず飛び込んで来てしまう程、その胸にある想いは強いという事だろうから。」
何処か彼女・・・カガリと似通った頭髪(金色をした癖毛)をした彼は、キラを連想させる眼差しを俺に向けた。
彼はフラガ家のムウなる者で、自分と同じ内裏警護を任された身であり、位こそ高くはないが、アスハ家(彼女の養父であったホムラ殿)の親縁であり、彼女にとっては幼い頃、宇治にて慣れ親しんだ存在らしい。
自分よりも一回り近く年上であろう彼は、たまたま此方にお勤めの恋女房に会いにやってきたのだが、残念ながら不在、代わりに慣れ親しんだカガリを見つけて話をしていただけとの事。
「でも本当にびっくりしたぞ?」
苦笑を浮かべ自分を見つめた琥珀色の瞳。
愛しい彼女のその眼差しに、カァと胸が妬かんだ。
早とちりであったのは良かったものの、後になってみれば格好がつかない。
小さなこえで『すまない』と詫びると、彼女もまた戸惑いながら『別に、謝る程の事でも無いけど』と口にした。
そうしてこの何とも言えない再会に照れが先走り、共に視線を軽く合わせ、そして逸らす。
すると間に居たムウ氏が口を開いた。
「いやはや、新鮮なことで。」
「え?」
「何と言うか、二人を見ていると、胸がこそばゆくなると言うか。」
ニヤリと笑った彼は、実に愉しげ。
これにカガリが『その妙な顔つきはやめてくれ!』と照れて反論した。
しかしムウ氏は何処吹く風で、尚も口を開く。
「しかし、世に深艶の君と呼ばれている彼を、ここまで虜にしようとは!」
世の中、何が起こるか分からないものだ。
そして独り何度もしみじみとした感じで頷く。
「俺に言わせれば、今も昔も何も変わらず、色気のいの字もない様に見えるんだが・・・。」
そうして彼女をじっくりと上から下まで不思議そうに眺め見たムウ氏に、当人は心底いきり立つ。
もう、ムウとは口を利いてやらない!
久々に会えたかと思えばこれだ!
ぶつくさ訴え、カガリは大きく剥れてしまった。
どうやら本当に、彼とカガリとは旧知の仲、それも兄と妹のようなもののようらしい。
俺は初めて目にした彼女の姿に苦笑しつつ、だがやはり少し面白くない思いも胸に抱いていた。
やはり自分以外の男と親しげにしている姿を見るのは、何となくモヤっとする。
「もう黙れよ?じゃないと、ムウの彼女にある事無い事吹き込むぞ!?」
「おやおや?脅迫する気かな?」
アスラン殿、将来は気をつけたほうが宜しいですぞ!
そんな風に自分へと耳打ちしてきた彼に、カガリはクワと両目を見開き『ムウ!』と叫んだ。
そして思わず腰を浮かして彼へと迫ろうとした彼女を制する様に、俺はソッと片手を掲げた。
正直、これ以上は限界だった。
そのまま、俺は僅かに自分の方へと彼女の身を引き寄せると口を開く。
「ムウ殿、大丈夫です。」
「ん?」
「仰るとおり。彼女は真っ直ぐで、自分をあまり飾ろうとしません。」
驚いたような琥珀色の瞳が、直ぐ其処で自分を見上げて居た。
その眼差しを頬に感じつつ、俺はにっこりと優雅に微笑んでみせる。
「ですが、そんな彼女だからこそ、俺は惹かれたのです。」
「っ・・・あ、あすらん?」
「そういう事も含めて、全部が良いのです。」
口にした直後、見開かれていた彼女の瞳が更に大きくなり、やがてその顔がパッともみじ色に染まっていった。
親縁である彼も、自分のこの言葉に『ほう』と口にすると、手にしていた笏(しゃく)で口元を覆ってしまった。
やがて『では、私はそろそろお暇すしようかな』と述べると、唐突にその腰を浮かし退出していく。
この機微ある動向に俺はホッとしつつ、しかし尚更、胸に焦りを覚えもしたのだ。




二人きりとなった今、彼女は再び恥ずかしげに顔を俯かせた。
だが見つめる自分の視線にゆっくりと視線を上げると、照れながらも嬉しそうに微笑んでくれる。
その顔に心臓が大きく躍るのを覚えながら、俺はコホンと一つ咳払いをした。
「あの方とは、本当に仲が良いんだね。」
「え?」
きょとんとしたその顔つきに両目が細まる。
これぞ正に、惚れた者の弱味というやつだろう。
「ムウ氏とだよ?」
「あ、ああ!うん。 宇治に居た頃なんかは、一緒に馬で遠乗りなんかしたりもしていたし。陽気で明るくて、まぁ、口は悪いけれど・・・でも、兄様みたいな存在かな。」
俺が胸に抱いている思いなどいざ知らず、彼女は明るい顔つきでそんな風に述べた。
これに『ふーん』と頷き目を瞑る。
どうしてこんなにも彼女は純真なのだろう?
幼い頃から一緒に遊んでいた仲とはいえ、もう既に裳儀も終え、今は艶有る華の身でありながらだ!
自分も含めた男という生き物を、少々 甘く見すぎている!
「とはいえ、流石に二人きりで膝をつきわせてあやとりとは、如何にも不用心じゃないのか?」
「不用心?」
そう、何かあった時に、果たしてどうするつもりで居たのだか!?
強く見つめた琥珀色の瞳の中。
其処にはまるきり理解できないというような、そんな雰囲気が見て取れて、俺はグッと両目を細める。
先程、自分がけたたましく飛び込んだ先で見た光景。
其処では何とカガリはムウ氏と中睦まじく紐で手遊び(あやとり)をしあっていたという。
もっと最悪な状況を想像していただけに、一瞬呆気に取られたものの、和気藹々、膝と膝とを着き合わせ座る二人の様に、再び意識は発火!
『これは一体?』と問い詰めようとした矢先、彼女が『アスラン!?』と目を瞬かせながら歩み寄って来たのた!
その驚きながらも喜びが垣間見えた琥珀色の瞳と、更に胸元、不自然に掲げられた彼女の両手の指の間、其処に赤い紐が幾重にも絡まっているのを見て取れば、怒りも停滞。
更に脇から聞こえた男の声。
『アスラン殿、どうか誤解なされませんように。』
彼・・・ムウ氏は自分の存在を知っていた(カガリから恋人だと話を聞いていた)らしい。
丁寧にお辞儀をしつつ名乗り、素早くこの状況に至る経緯を説明してくれた。
『些か。いえ、貴方から見れば十分に不謹慎な状況ではありましょう。ですが、彼女からもう一度だけ、昔のようにあやとりを教えて欲しいと頼まれ、手解きをしていたまで。』
貴方が思い煩うような疚しい事は、一切御座いません。
澱みのない口調でそう述べたムウ氏に、顔を顰めながらも俺は『成る程』と頷き、再び彼女へと目を向けた。
すると彼女もまた『うんうん』と頷き、そして自分の両手を掲げ『ほら!』と見せてくれた。
其処には何かを形取ったような、複雑な紐の絡みが見て取れた。
後ろめたさや悪びれる様子も無い彼等に、一先ず俺は胸を宥め、そして不躾にもこの場に乱入した事を詫びたのだ、が?
「もしかして、怒っていたりする?」
「え?」
「ムウと二人きりで居た事・・・。」
そして今現在、下から覗きこむようにして見つめてきた彼女に、俺は思わず表情を緩めた。
いやもう、あれは怒るというよりか、寧ろ驚いて当然の状況だろう!
年頃な有家子女であれば、男子の面前(一応身内とはいえ、普通は体裁やら恥らい等があって)顔を隠すものだというのに!
「あの・・・ごめん。その、ムウとはずっとああいう感じで接してきたから、つい。」
それでも自分の事を想ってか、彼女は素直に自分の軽率さを謝ってきた。
普段は快活なその瞳が、申し訳無さ気に萎れていくのを見れば、この胸がドクンと鳴る。
ああ、もう自分は完全に彼女にやられてしまっているらしい。
気がつけば眩い彼女の頭部へと片手を伸ばし、俺は柔らかなその髪を掌で梳いていた。
其処から伝わり来る愛しい人の体温、そして目にしている艶やかな瞳にホウと一つ吐息をつきながら。
「本当、どうしたものかな。」
思わずそう呟き、苦笑した。
こんなにも心を持っていかれてしまっては、離れ難くて困る。
「アスラン?」
「本当に、どうしたものか。」
そうして彼女の後頭部を軽く引寄せ、その額に額をくっつけた。
間近に感じる彼女の吐息を耳に、瞳を熱く見つめながら俺は強くこう述べた。
「分かった。もう分かったから。ムウ氏の事はもう良いよ。でも・・・お願いがある。」
「お願い?」
「そう。頼むから、俺以外の男には、もう少しだけ用心して欲しい。」
これは願望というよりか切望というべきだ。
だってちょっとした隙が、狙い定めた輩にとっては好機となってしまうかもしれないから。
先程のムウ氏がそうだとは言わないが、彼のように機微良い者ならば、本命でなくとも、ちょっとした遊びとして女性を引っかけ、その数を褒賞の如く数えていたりする奴も居るのだから。
彼女がそんな愚劣な男の罠に引っかかったりしないように!
「約束して欲しい。他の男には、もっと警戒すると。」
勝手なお願いを唱えた俺を、彼女はただジッと見つめて居た。
まるで自分の胸の内を推し量るかのように、しばしそのまま沈黙。
 「分かった。」
だがやがて頷き、彼女は小さく微笑んだ。
その言葉を聞いて、俺の胸は大きく安堵。
そして得も言われぬ甘美な赤い唇へと、最初は優しく、やがてしっとりと濃厚に口付けたのだった。
 
 
   
     
 
     

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