LOVE SEED
| |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||
11/24/12:54 [PR] |
09/19/03:48 幸せの余波 アスカガの結婚式後のディアミリ短編SSです。
ユラユラと揺れる毛先。 柔らかいその甘茶色から覗くのは、この眼に眩しい白き項。 髪の長さもその全身の姿形も、あの頃とあまり変わらない。 だがそれでいて、何処か何かが違うような気がしてならなかった。 ・・・何でだ・・・? 其処でようやく俺が『あぁ、そうか・・・!』と気づいた。 それは、その普段とは違う艶やかな装いの所為なのだ・・・と。 通り風に透けて揺れる淡い橙色の薄布。 花びらの形をした袖からは、陽を受けて輝く白い細腕。 ウェストラインに揺れるのは、つやつやと光沢のあるリボンで・・・。 それ等に自然と細くなる俺の眼。 「なぁ・・・?」 「・・・なによ?」 衝動的にかけた声に、何処かムスッとした顔つきで無粋な言葉が返ってきた。 折角の華やかで可憐な装いであるというのに、この出会った当初を思い出す言動はどうだろう? 勿体無い・・・! 胸の中でそう思いつつ、俺は一先ず軽く苦笑をした。 変わったようでいて、変わらない・・・これは人の本質というヤツだろうか? 「もうちょっと、ゆっくり歩けよ?」 「・・・あたしはこれが普通なの。そっちこそ、もうちょっとスタスタと歩けないの?」 「・・・。」 こちらの提案なんて、根っから聞いちゃいない。 いや、聞く気なんてないのだろう。 俺はアッサリとそう判断して、ならば・・・とグッと歩く歩幅を大きくした。 そうして・・・! 「これで宜しいでしょうか?ハウ嬢?」 「っ・・・!?」 「よろしければ、その重い引き出物袋をお持ちしましょうか?」 「・・・。」 彼女の真横に並ぶと、半ば冗談、残りの半分は嫌味でもって、恭しく騎士の真似事をしつつ片手を差し出してやった。 そんな俺に、彼女は驚きちょっとだけ身を引く。 そしてその丸い空色の瞳でジッとこちらを見つめてくる。 「何か・・・企んでいるとか?」 「・・・あのなぁ?」 「そんな態度を取られると、逆に訝しみたくもなるわよ?」 「お前・・・それじゃ俺がまるで紳士から程遠い人間みたくないか?」 「・・・いいわよ。これぐらい、自分で持っていけるから!」 こちらの問いかけを見事にスルーして、彼女はアッサリとそう言い再びスタスタと自分より先を歩き出す。 その取り付く島の無い態度には、流石の俺も盛大な溜息が零れ出た。 悲しいかな、思いっきり防衛線引かれてるよな・・・。 その事を痛いほどに実感して、やれやれと後頭部をかきむしる。 俺って、そんなにも酷い男だったか? こんな風に、徹底的に嫌われるような事をした覚えはないのだけれど・・・? ・・・まぁ、そりゃ・・・ノッた勢いに任せてちょっと強引に彼女を抱いた事はあった・・・かも? そうして短い期間ではあったが、確かに『彼氏と彼女』であった時の事をふと思い出す。 幸せとかそういうのを噛み締める程の付き合いではなかったものの、彼女と共に居ると非常に心が和んだ。 それまでが結構スリルを楽しむ恋愛など好んでいた自分なだけに、そういう存在が逆にイレギュラーで・・・。 新鮮というのか? いや、寧ろ自分の中で真に求めていたモノを見つけたような気がしていたのだ。 だからといって、それまでの自分がいきなり変わるわけでもなく・・・。 俺が思ったままの事を口にして、それが原因で『無神経な男ね!』だとか『冷酷な人ね!』とかしょっちゅう口喧嘩をしたものだった。 とはいえ、彼女に無理強いしたなんて事は決して無かった。 いやいや、そんな事を出来る筈も無くて・・・! なのに、ふとある時生じた互いの間のギズギズ感。 そして・・・。 『ねぇ・・・私たち、別れない?』 そう告げたのは彼女からだ。 本当に突然で、そして何とも言えずアッサリとした口調だった。 それに対して俺は、変なプライドも相まってか『そうしたいならば・・・別にいいぜ?』と答えて・・・。 でも、心の底ではずっと・・・ずっと気になっていたのだ。 ・・・これでもう、本当に・・・彼女とは終わりなのだろうか? そんな、妙な思い。 自分で別れる事を了承しておきながら? 俺は、実はずっと・・・『再び』がある事を望み期待しても居て・・・! ・・・別れた時もそう・・・今もそう・・・俺の勝手な考えなんだけど・・・な。 根拠の無い淡い期待。 そして見つめた先、目の前を独りで行く彼女の背にこの胸は少し青味を帯びる。 『この機に乗じて、もう一度・・・彼女にアプローチでもしてみたらどうだ?』 珍しくそんな事を進言してきたのは、今回俺がわざわざ休暇を取って地球の一小国であるオーブまでやってきた理由の主だった。 普段はコレと言って気の利いた話をする奴じゃないのだが、どうやら祝宴の酒に酔った所為もあって、いつにも増して口数が増えていた。 元同じZAFT軍人で、今はオーブの高官、そしてついに・・・多くの障害を乗り越えて高根の花たる女性を娶った優男。 『いつもより穏やかに話が出来るかもしれないぞ?』 いかにも幸せそうな翡翠色の瞳が、披露宴会場の一角へと向けられた。 その先には、乾杯の折に口にしたシャンパンだけで微かに頬を朱色に染めている甘茶色の髪をした彼女の姿。 確かに酒の入った後ならば、俺も気が楽だ。 とはいえ・・・果たしてどんな反応をされる事やら? そんな事を考えて、思わず口篭っていればだった。 『ハハ・・・ディアッカが、こんなに躊躇するなんて。珍しいな・・・というか、それだけ真剣って事か?』 くそっ・・・アスランめ! 意中の女性と晴れて結ばれた勢いでもあってだろう、自分に向かいそんな事を言ってのけやがった。 今までならば自分が彼をからかうのが主流であったというのに・・・! そんな悔しい気持ちをバネに、俺はようやく気持ちを決める。 『あのさ・・・良かったら、この後どっかでお茶でも飲まない・・・か?』 新婦側の来賓席へとお酌に回ったついでに・・・と、自分は彼女に誘いの言葉をかけたのが約1時間程前。 彼女はそんな俺に、一瞬大きく迷った挙句『お茶飲むだけなら・・・』と渋く了承の言葉を返してくれて・・・。 「・・・ねぇ?」 「ん?」 気が付けば、数メートル前で足を止めた彼女がこちらを振り返りジッと俺を見つめていた。 その真っ直ぐな青い瞳に、思わず俺はパチパチと両目を瞬かせる。 「何、ぼーっとしるのよ?」 「あ・・・いや、悪い。ちょっと・・・考え事をさ・・・。」 振り返った思い出に、やや青くなりかけていた胸を隠してそう答えればだった。 俺の微妙な顔つきに、彼女はちょっとだけ首を傾けて。 「いやね・・・こんな所で考え事?」 「・・・ちょっとな。」 「何よ、それ。」 「なんていうのか・・・うん。色々と・・・な。」 「・・・。」 口篭った自分の方へと、彼女は何故かトコトコと歩み寄ってきた。 そうしてピタッと俺の面前で立ち止まる。 「やけに・・・しんみりしてるのね?」 「っ・・・て、俺がか?」 「そう。もしかして、意外と感情もろい方だったとか?」 「・・・何言ってんだか。別に、人の結婚式なんざ見ても、俺は何とも思わないぜ?」 ニヤニヤとにやけているアスランの顔が脳裏に浮かんできて、俺は思わず強気にそう言い返していた。 すると何故か、彼女の瞳がちょっとだけ陰りを見せる。 その目に、『ん?』と素早く反応を示すこの胸。 「そうよね・・・。アンタは、昔っからそういう奴だったわよね。」 さっきまでとは違うトーンでもって聞こえた言葉。 その訳の分からない態度に、俺はグッと顔をしかめる。 何だ? 彼女は・・・何を怒っているんだ!? 「ミリィ・・・?」 「馴れ馴れしく呼ばないでよ。」 「あ・・・いや。じゃあ・・・ハウさん?」 「・・・ミリアリア。名前で呼んで。」 背けられた彼女の顔を追い、俺は身体を屈ませた。 一体全体、何がどうしたっていうんだか? 「どうした?そっちこそ・・・ミリアリアこそ変だぞ?」 「・・・何でも無いわよ。」 「何でも無い・・・って、そういう顔してか?」 「五月蝿いわね!何でも無いっていったら、何でも無いのよ!・・・ただ。」 「・・・?」 そこでいきなりグッと押し黙った彼女。 俺はジッとその横顔を見つめる。 「人と一緒に居る時に、他所事考えてるのって・・・どうなのよ?」 小さく呟かれた言葉。 その何処か困惑顔の彼女を見て、俺の中の何かが弾けていた。 意地っ張りで強がりで我が強くて、それに負けず嫌いで・・・だけどその実、淋しがり屋で・・・! 中々、素直に気持ちを出さない奴だったよ・・・な? 「その・・・。」 「え?」 「つい・・・お前の姿に悶えてた。」 「・・・って・・・はぁ?」 「その格好、良く似合ってる。」 「な、何よ・・・いきなり!」 『馬鹿じゃない?』と、俺の言葉に冷たい言葉で返した彼女。 でも・・・だけれど! 「お茶・・・するんでしょ?早く行きましょう?」 自分に向かい、微かに微笑む彼女。 その顔には、喜びが見て取れた気がしたから・・・! 「おう!」 俺は自分の胸に片手を当てて、強く宣誓する。 彼女のハートを、再びこの手に・・・と! キララクに次いで書いてみました・・・が如何でしょうか? ミリアリアは、別れたディアッカに何処かツンケンしてます。 でも脳内では、幸せなアスカガウェディングを見た感動が強く印象に残っていて・・・。 ディアッカからの誘いに、本当は胸の中ドキドキしてるんですよ。 そんな彼女に気持ち迷い、独り自分の世界に浸るディアッカw このCPは、彼女に翻弄されているようでいて、その実グイグイ引っ張っていく彼という感じで面白いですvv さて、次はシンルナかな(え? でもって、その次にアスカガを(これがメインでしょう^^ ふふふ、結婚式直後シリーズ? 出来あがったらUPしようと思います。 PR
|
|
|