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10/12/05:05  憧憬

アスカガウェディング後のイザークボヤキ編です(苦笑)
 
 
 
 
先程手元へと持ってこられた報告書とやらを、何気に手に取り見開く。
・・・調査報告書という銘打たれた最初の文字を見て、彼はフウッと溜息を一つついた。
手にした品はそのままに、チラリとデスクの上、そこにあるPC画面端に目が向いて。
14:43・・・もうそろそろ、終わる頃だろうか?
ふとそんな事を思うこの胸。
そうしてくでんと執務用チェアーに身を任せ、彼はまた一つ溜息をつく。
  
・・・何だというのか・・・?
  
己の胸に問いかける。
だから一体、何なんだ!?
今更、俺は何を思っているのだ?・・・と。
 
「失礼いたします!」
 
その時不意に入室を告げる声がして、彼はキッとした鋭い眼差しを入り口に向けた。
『入れ!』と短い了承の言葉を告げてやれば、シュンという音がして開いた扉。
 
「先程仰っておられた件について、それに関する資料等お持ち致しました!」
「・・・あぁ。では、其処に!」
「はい。」
 
そうしてまた、デスクの一箇所に乗せられた新たな品。
ソレにやや眉を潜めて、彼はこちらに敬意を払いつつ颯爽と退室していく部下の姿を目で見送った。
シュンと入り口が閉まる音を聞いた直後、フウッとまた一つ零れ落ちた吐息。
チェアーに優雅に足を組み座った状態で、彼はクルンと身を返した。
自室の大窓、其処から見えるプラントの空へと目を向けて・・・。
 
・・・遠い、な。
 
目にした青空の果て。
暗い宙空間を通り、そうしてようやく辿り着ける青い星。
己の住む世界と彼等が住まう世界とは、やはりとてつもなく遠いのだ。
無性に感じる距離感。
そうか・・・そうだな・・・。
フッと思わず生じた苦笑は、己がライバルと認めた男の所為だった。
奴が『彼女』をその手に出来たのは、自ら隔たりを越えていったからなのだ・・・と。
  
「到底、俺には出来ん事だがな・・・。」
 
ポツリと呟いた言葉、それと同時に酷く青い感情が胸に生じる。
自分と奴との差。
そうだ、元々分かっていた事ではないか?
  
・・・アイツならば、きっと『彼女』を幸せにするだろう。
 
自然と込み上げてくる確信。
だが、ソレがまたこの胸を重く青くしていく・・・。
 
「何なんだか・・・。」
 
忌々しいこの胸の感情。
バンッとと無造作にデスクへと報告書を戻して、彼はギュッと両目を瞑った。
すると暗い意識内、ぼんやりと浮かんでくる金色。
 
『お前がGAT-X102デュエル・ガンダムのパイロットか!?』
 
忘れもしない、出会った当初の声が蘇る。
そうして、己をジッと食い入るように見つめてきた琥珀色・・・。
 
『ありがとうな!お前のおかげで助かった!』
 
あの時、自分に向かい突然に礼を言ってきた彼女。
ナチュラルで、しかもオーブMSパイロット姿で、しかも無茶苦茶に無防備で・・・!
対して俺は機嫌が悪く、何処か陰鬱であった。
だから目の前にいきなり現れた彼女を強く睨み、そしてうっとおしく思いさえしたのだけれど。
でも・・・そう、本当は眩しすぎたのだ。
 
・・・ナチュラルは敵だ!
 
自身が抱いていた信念、感情、それ等を一気に覆すかのような存在。
己と何も変わらぬ外見、感情、そして何よりか細くて柔らかそうなその女性の姿に、この胸が強く締め付けられて!
 
『本当に、ありがとう!』
 
ニッと目の前で微笑んだ彼女に、もう俺は懺悔の気持ちを抱きはじめていた。
果たして、自分は礼を言われるに値するのだろうか?・・・と。
コイツの同胞を、俺は一体どれだけ倒してきたのか!?
止メロ・・・止メテクレ・・・!!
  
『これからまた大変だろうが・・・!』
  
だがその一瞬後!
その時は、何が起こったのか分からなかった。
ポンッと自分の肩を叩いた手と、そして・・・。
  
『お互いに、頑張っていこう!』
  
まるで、俺の中の暗い闇を取り払うかのよう。
視近距離で見つめた琥珀色の瞳の中、其処に眩い暁の光が見えた気がした。
金色に輝く、あの地球で見た陽光の如き光が・・・。
   
  
 
「!?」 
    
ピピピッという機械音が、過去へと遡っていた意識をとぎらせた。
ハッとして目を向ければ、デスクの上で鳴っている携帯機器。
俺はソレを目を細めて見つめ、そうしてゆっくりと歩み寄る。
そして手で開き、受信ボタンを押して・・・。
 
「何だ・・・?」
『・・・って、イザーク?いや、今終わった所なんだけれど・・・。』
  
藪から棒にそう問い尋ねてやれば、向こう側で大きく困惑した男の顔。
だがめかしこんだその衣服と、そして職務を離れた解放的なソイツの口調に俺の中の不快感指数は上がる一方。
  
「それで・・・何なんだ?」
『いや、だから・・・別に『何』って訳でも無いんだけどさ。』
「用が無いのならば、切るぞ?こちらは勤務中なんでな!」
『あぁ、分かってる!分かってるから・・・そんなにカリカリするなよ、イザーク?』
「誰もカリカリなどしてはいない!」
  
キツク言い返してフンッと一つ鼻を鳴らせば、通信画面の向こう側、ディアッカは何も言わず。
そうして、しばらく間を置いてだった。
 
『いや、一応報告までに・・・と思ってさ!』
  
何の報告だ!?
報告と言う言葉に、自然と己の耳は聞く体勢になってしまう。
これは職業病というヤツだろうか?
俺は忌々しく思いつつも、続く言葉に耳を傾けて・・・。
  
『式は滞りなく無事に終了。アスランの奴も、実に幸せそうだった。』
「っ・・・アイツが幸せであろうが無かろうが、俺にはどちらでも良い事だ!」
『ふっ・・・まぁ、それは俺も同感だけど。』
  
鋭く言い放った俺に、画面の向こう側の紫色の瞳が苦笑する。 
そうして、唐突に・・・だった。
 
『彼女も・・・綺麗だったぜ?』
  
ディアッカが付け足したその言葉に、思わずピクリとこめかみが動いた。
けれど、俺はグッと腹に力を入れる!
  
「関係ないな!・・・そんな事よりも、お前は適当に羽根を伸ばしてサッサとこちらに帰って来い!」
  
チラリとデスクの上、其処に置かれた目を通すべき書類等を見やる俺。
やらねばならぬ事は、まだまだ沢山あるのだから・・・!
  
『・・・あぁ、了解!じゃあな!』
  
明らかに苦笑いを浮かべつつ、ディアッカの奴はとっとと回線を切る。
まあ、それが正解というヤツだろう。
正直今の俺は、ちょっと気が乱れているのだから・・・。
 
「何が、綺麗だったぜ・・・だ!」 
 
要らぬ報告をしてきた友に、俺は悪態をつく。
そうしてグデンとまたチェアーに身を預け、そのまま目を閉じた。
まだ今しばらくは、この胸の葛藤は続くのかもしれないな・・・。
そんな自分に呆れつつも、致し方無いと納得しようとする胸。
己の青くも淡い初恋。
それはまだ、消し去るには至らぬようだから・・・。
 
 
  
 
ということで、アスカガウェディング後のイザークボヤキ編でしたw
多分彼ならばこんな感じなのでは??と想像しつつ書きましたが、どう?(誰に聞いているw
いや、自分もイザカガ好きです^^
が・・・寧ろイザカガに嫉妬するアスランという図がもっと好きw
今回のお話はアスランに嫉妬するイザークと言う事で、結構想像するのが難しかったです。
だって、イザークの嫉妬って凄い気がしてなりませんもの。
私の中で嫉妬の強さは、アスラン<イザークなんですが・・・。

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