ゲレンデにて・・・アスカガ妄想小話(設定現代)
輝く雪面は何処までも眩く、そして広大で、思わずその天辺から覗き込んだ私は『うわ・・・』と声を発していた。
すると脇でボードをなぶっていた五月蝿い先輩が、チラリとこちらを見る。
「おい、さっさと行くぞ?」
「あぁ・・・っとちょっと待て!」
慌てて体制を整えつつ、私は眼前にあるその急斜面をどう滑り降りようか軽く思考した。
やはり此処は、直滑降でスピードを楽しむに限るだろうか?
「OK!」
「先に行く。」
意気込み上等。
ペアとなった銀髪でやや短気な先輩に準備万端の声を挙げれば、途端に風の如く滑り降りていった彼。
その見事な素早さに、私はちょっとだけ肩をすくめて・・・。
「よっ・・・と!」
一度軽くジャンプをして、ボードの向きを斜面と真っ直ぐにする。
そしてそのまま・・・!
ゴオオオっと頬を髪をなびかせて、私は純白の雪面を疾走していった。
小さく左右にシュプールを描きつつ、既に姿の見えない銀髪頭を目指して。
斜面に出来ている小さなこぶを避けつつ、気分爽快に風を切る。
何処まで行っても真っ白なこの空間は、日常とはかけ離れているから素敵だ!
気分良くややなだらかな場所を一気に突き進み、その先、いきなり傾斜がキツイ所にさしかかる。
ゴーグルの中の瞳を見開きつつも、冷静にスピードをやや抑えつつ斜めに滑り降りていこうとして・・・。
「あっ!!」
「っ・・・な!?」
見つけたときには、もう遅かった。
斜面の中腹辺りに居たその男性へと、私は勢いよくスライディングタックルをかます!
「・・・痛・・・ッ。」
「っ・・・!」
「悪い・・・ぶつかっちゃって。」
「いきなり、何なんだ!?」
片手を立てて、私は即座にそう謝った。
そうしながら、彼の腹部に乗っかかっていた体を急いで起こした。
すると自分が衝突した所為で雪面に背を付けて倒れこんでいるその人は、ジロリと此方を見やる。
「ったく、一体何処を見て滑ってるんだ!?」
「っ・・・その、だから・・・ごめん!」
「謝って済むことじゃないだろう?」
「ちゃんと前を見て滑っては居たんだが・・・。」
「前を見て滑っていたのにぶつかるのか?」
キッと自分を睨むようにそう言った彼に、私は思わずムッとなっていた。
そりゃ確かに私が悪いんだし、心の底から悪かったとは思っているさ!
でも、でもだ!!
まるで言質を取るかのようなその物言いがカチンとくる。
「なんだよ!謝って済まないのなら、一体どうすれば良いって言うんだ!?」
「そういう態度が気に入らないな。」
「っ・・・!」
「まずはゴーグルを外して、素顔を見せてから謝るものだろう?」
ぐだぐだと絡んでくるその男に渋々従う形でもって、私は顔のゴーグルを外した。
ついでに頭に被っていた黒いニット帽も取り去る。
「これで良いのか!?」
ぶっきら棒にそう言って、私は彼をキツク見据えたのだ・・・が?
「っ・・・ぇ・・・?」
「な・・・んだよ?」
「お前・・・女?」
驚きに目を丸くしたまま、唖然と自分を見上げ呟いたソイツ。
一瞬後、言われた言葉がカッとこの胸を焼いていた!
「なっ・・・失礼な奴だな!どこからどう見ても私は女だろう!」
「いや・・・その、だけど・・・あんまりにもぶっきら棒な口調だったし。」
「悪かったな!女っぽい喋りでなくて!」
「あ・・・うん。いや、じゃなくて、その・・・。」
それまでの態度から一変、うろたえだしたソイツに私は訝しい目を向ける。
そして雪面に腰を下ろしたままであったソイツへと片手を差し伸べた。
「・・・ったく!ほら!掴まれよ!」
そこで初めてしっかりと彼の容姿を見つめて、私は思わず息を呑んだ。
・・・綺麗な奴だな・・・!
その肌といい、顔の造作といい、どれも実に美しく整っている。
何よりも目を惹くのは、その翡翠色の双眸だろう。
男にしておくのが勿体無いぐらいに、本当に綺麗!
でも・・・?
「あ・・・!」
「え?」
「それ・・・血!?」
「・・・あぁ。切れたみたいだな。」
微かに耳の下辺り、顎骨の付け根の横に鮮やかな朱色の線が見えていた!
多分、自分がぶつかった瞬間に何かで切れたのだ!!
「ご、ごめん!大丈夫か!?」
「・・・あぁ。これぐらい大した事ないさ。」
「でも!本当にごめん!救護室に行って手当てしてもらわなくちゃ!」
「ただ単に切れただけだし・・・放っておいても大丈夫だろう。」
「駄目だ!だって・・・私の所為だろう!」
『ちゃんと責任取らせろよ!』
思わずそう叫べば、ソイツはポカンとした顔で私を見つめた。
そして、何故かフッと苦笑して。
「分かった。分かったから・・・その、ちょっと落ち着いて?手を・・・放してくれないか?」
「!!」
思わず知らずにじみ寄り、彼の腕を強く掴んでいた私の手。
それを指摘されて始めて気づき、私は驚き慌てて両手を離し身を起こした。
無意識にしていた事とはいえ、初対面の男に乗っかかり腕を取っていた自分!
顔が、頬が、ちょっと熱い。
「じゃあ、とりあえずバンドテープだけでも貼ってもらいに行くとするかな。」
「う、うん!」
ゆっくりと腰を上げて、彼はパンパンとパンツに付いた雪を払い落とした。
立ち上がったその人の髪が、サラリと揺れる。
その濃紺色の髪が白くて綺麗な頬筋に映えていて、ゾクリとした快感がこの胸を奮わせた。
「お・・・お前、名前は?」
「・・・アスラン。アスラン・ザラだ。そっちは?」
「カガリだ!カガリ・ユラ・アスハ・・・!」
互いに名を教えあい、そして再び雪面を滑走する為の体制を整える。
私はゴーグルを嵌めなおしつつ、乱れた心音を感じていて・・・。
「行こうか?」
聞こえた声に、頷く私。
再び風を切り出すこの身。
キラキラと眩い光が、辺りを包んでいるようだった。
ふふふ。ゲレンデにてアスカガ遭遇の巻!
妄想×2・・・幸せv
あ、最初に出てきたイザークは、ただの大学の先輩設定です(笑
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